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配信中⁉(二)〜窓口、開通

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/7 📚 シリーズ: 貴方へ ~もう一つのラブレター~ 📝 4,865文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

一話完結・オムニバス(長めの物語)自由に色々書いています

本文

配信中⁉(一) | 小説投稿サイト「あいぺん」

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配信中⁉(二) 〜窓口、開通

朝起きたら、カメラが二台、宙に浮いていた。

天井から三十センチほど下、でもなく、床から百センチほど上、でもなく、どちらかといえば純の目線に合わせたような高さで、ただ浮いていた。ホコリ一つ動かないくらい静かに。

純はしばらくそれを見てから、顔を洗いに行った。

戻ってきてもまだ浮いていた。

一台が純の顔にレンズを向けた。ピントを合わせる音がして、シャッターが切れた。

「寝起きを撮るな」

カメラは気にしなかった。異世界でも気にしなかった。十五年経っても気にしなかった。こっちに戻ってきても気にしなかった。一貫していた。

妻がリビングに顔を出した。浮いているカメラを一秒見た。「あ、浮いてる」と言って台所に戻った。トーストが焼けたチンという音がした。

食卓についた。窓から朝の光が入っていた。カメラが一台、音もなくすべるようにテーブルに近づいてきて、トーストを接写し始めた。レンズがトーストの表面五センチまで迫った。

「トースト撮ってどうすんだ」

カメラは気にしなかった。

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食後、純はソファに座ってスマホを見た。

YouTubeの通知が来ていた。コメント欄に、見たことのない文字が一行だけ書かれていた。記号でも絵文字でもない、光の屈折のような形をした文字列だった。

翻訳にかけた。

*準備ができました。*

純はしばらくその五文字を見た。

「何の準備だ」と返した。

三秒で返ってきた。

*全部です。*

「全部って何だ」

*地球の全部です。*

純の隣に妻が座ってきた。コーヒーを両手で持って、画面を覗き込んだ。湯気が純の顔にかかった。

「全部って何?」

「わからん」

「聞いてみれば」

「聞いた」

「なんて」

「地球の全部だって」

妻がコーヒーを一口飲んだ。窓の外を一秒見て、また画面に目を戻した。「スケール大きいね」

「大きいな」

また通知が来た。画面を見ると一行だけ増えていた。

*窓口をお願いしたいです。報酬はお支払いします。*

純は「報酬」という単語を三回読んだ。声に出さずに三回読んだ。

「受ける」

「早いね」

「無職なんで」

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その夜、地球が変わり始めた。

最初に気づいたのはニュースだった。

世界中で同時に停電が三秒起きた。純の家のテレビも消えた。冷蔵庫も止まった。妻が「あ」と言った瞬間に全部戻った。

それだけだった。

だが翌日から、電力会社の計器がおかしくなった。消費電力がゼロを示していた。全国で、世界中で、同じことが起きていた。

機器の誤作動だと思われた。

一週間経っても直らなかった。電気代の請求がゼロになった。世界中でゼロになった。

電力がただになっていた。

テレビでは専門家が五人呼ばれて全員同時に喋っていた。「原因不明」「機器の誤作動」「太陽風の影響」「神の御業」「宇宙人の仕業」と、五人が五つの答えを同時に主張していた。司会者が困った顔をしていた。

純のスマホにコメントが来た。

*エネルギーの件、終わりました。*

純は画面とテレビを交互に見た。

「早くないか」と返した。

*そうですか。少し手間取りました。*

テレビでは専門家が六人になっていた。増えていた。

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三日後の朝、病院のコンピューターが世界中で同時に再起動した。

再起動後、全患者のカルテに文字が書き加えられていた。治療法が書いてあった。それまで治療法のなかった病気も、原因不明とされていた病気も、全部。どこの病院でも、どの国でも、誰も打ち込んでいない文字が、夜のうちに追記されていた。

医師たちが混乱した。

試した。

効いた。

ニュースが爆発した。テレビの専門家が十人になった。スタジオに入りきらなかった。廊下から顔だけ出している専門家が二人いた。司会者が泣いていた。理由は不明だった。

純のスマホにコメントが来た。

*医療の件、終わりました。少し古いデータがあって手間取りました。*

純は画面を見て、テレビを見た。廊下の専門家が押されて画面から消えた。

「また手間取ったって言ってる」

「手間取って三日なんだ」と妻はテレビを見ながら言った。

「らしいな」

二人でしばらくテレビを見た。司会者がまだ泣いていた。

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一週間後、戦争をしていた地域で両軍の兵器が同時に動かなくなった。

引き金を引いても何も起きなかった。爆弾のスイッチを押しても何も起きなかった。戦闘機のエンジンがかからなかった。潜水艦が浮上したまま沈まなくなった。

双方が停戦した。理由は「戦えなくなったから」。

ニュースが爆発した。また爆発した。まだ爆発し続けていた。

純のスマホにコメントが来た。

*あれは少し迷いました。*

純は「迷ったのか」と返した。

*地球のやり方に干渉していいか迷いました。ただ、長く見ていて限界でした。*

純はしばらくその文章を見た。

妻が横から読んだ。コーヒーカップを両手で持ったまま、少し黙った。

「ずっと見てたんだもんね」と妻が窓の外を見ながら言った。

「そうだな」

「そりゃ限界にもなるか」

テレビではアナウンサーが原稿を読みながら泣いていた。ニュース番組なのに泣いていた。ディレクターが止めなかった。

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純のチャンネルの登録者数が三日で十億を超えた。

宇宙からコメントが来た。

*佐藤 純さん、正式に窓口担当者としてご契約をお願いしたいです。報酬は別途お支払いします。地球側の窓口として、政府機関とも連携していただけますか。*

純は画面を見た。妻を呼んだ。

妻が画面を読んだ。

「政府って、どこの」

「日本だろ、たぶん」

「連絡したことあるの」

「ない」

「じゃあしてみれば」

純は内閣府のホームページを検索した。問い合わせ番号に電話した。

「はい、内閣府でございます」

「宇宙文明から窓口担当に指定されたんですが」

四秒、沈黙。

「……少々お待ちください」

クラシックが流れた。八分後に声が低い別の人間が出た。

「先ほどのお話ですが、もう少し詳しく」

「宇宙文明が地球に色々届けるそうです。私がその窓口になりました。政府と連携してほしいと言われています」

六秒、沈黙。

「……確認して折り返します」電話が切れた。

「政府、困ってるね」

「困ってるな」

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三日後、スーツが二人玄関に来た。純は扉を開けた。

「先日ご連絡いただいた件で、一度お話をお聞かせ願えますか」

「取材はお断りしています」

扉を閉めた。

翌日また来た。今度は三人だった。

純はインターホン越しに「お断りします」と言った。

それから数日後、また電話が来た。声が最初より低くなっていた。

「佐藤様、一度だけお時間をいただけますでしょうか。窓口の件、正式にお願いしたく」

「受けます。多少報酬をください」「無職なんで」

「は、はい。ご希望の金額を」

純は金額を言った。

電話の向こうで十秒、何も音がしなかった。息をしているのかもわからなかった。

「……わかりました」

電話が切れた。

妻が「いくらにしたの」

純が言った。

妻が指で桁を数えた。「合ってる」

「家賃、払える」

「何十年分も」

「とりあえず今月分払う」

「もうちょっと大きく考えて」

純は少し考えた。天井を見た。また考えた。

「来月分も払う」

「少し大きくなった」

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スーツが五人来た。全員が同時に名刺を出した。純は五枚受け取った。全部役職が違った。全部長かった。

カメラが二台、五人の頭上に音もなく浮いた。

五人が同時に背筋を伸ばした。

妻がお茶とクッキーを持ってきた。一人が「いただきます」と言って食べた。サクッと音がした。「おいしいです」

純のスマホが震えた。

画面を見ると一行来ていた。

*クッキー、また食べましたね。*

「また、って言ってる」

「さっき、私、食べたの見てたんだね」と妻が笑った。

スーツの一人が「今も見てるんですか」と言った。声が少し上ずっていた。

「見てます」と純は答えた。

五人が背筋をさらに伸ばした。これ以上伸びない限界まで伸びた。一人が名刺を落とした。拾おうとして前に傾けなかった。背筋が伸びすぎていた。名刺が床に落ちたまま会議が続いた。

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ある夜、純は窓の外を見た。

街が変わっていた。

音が減っていた。空気の質が違った。排気の匂いがしなかった。夜なのに空が少し明るかった。星が見えた。以前は見えなかった星が、いくつか見えた。

一ヶ月前と同じ窓から同じ方向を見ているはずだった。

スマホを取り出した。

*見てますか。*と打った。

画面の向こうで、宇宙のどこかで、誰かがそれを読んだ。

*見ています。今日の夕飯、何でしたか。*

「カレー」と返した。

*また?*

「好きなんだよ」

しばらくして返信が来た。

*私たちの星には食べ物がないので毎回気になります。いつか食べてみたいです。*

純はその文章を読んで、少し考えた。特に深く考えたわけではなかった。ただ、なんとなく打った。

*来ればいいじゃないですか。カレー作ります。*

送ってから、長い間があった。

宇宙規模の間があった。

*……本当ですか。*

純は妻を呼んだ。「向こうにカレー作るって言った」

妻がリビングに来た。「何人来るの」

「計算するって言ってる」

しばらくして返信が来た。

*計算しました。*

純は画面を見た。妻が横から覗き込んだ。

二人で画面を見た。

「……単位が違う」と純は言った。

「何の単位」

「わからん」

「多いの」

「わからん」

妻がしばらく画面を見た。「多そうだね」と言った。

また返信が来た。

*食べられないので安心してください。カレーの映像だけ見たいです。*

純は「食べられないらしい」と妻に言った。

「じゃあ何しに来るの」

「映像を見に」

「それだけ?」

「そういうことらしい」

妻は少し考えてから「じゃあ鍋は普通のでいいか」台所に戻っていった。

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当日、純はカレーを作った。

玉ねぎを切ると目に染みた。十五年異世界にいても、玉ねぎは目に染みた。純は目を細めながら切り続けた。

妻がフライパンで玉ねぎを炒めた。甘い匂いがキッチンに広がった。

カメラが二台、鍋の真上に浮いて、ぴたりと停止した。湯気がレンズにかかった。カメラは動かなかった。湯気ごと撮っていた。

「近い」

カメラは気にしなかった。

豚小間を入れた。ルーを溶かした。グツグツと煮えてきた。カレーの匂いがリビングまで広がった。

純のスマホが震え始めた。

通知が来ていた。一件ではなかった。次々と来ていた。コメント欄が埋まっていた。全部、見たことのない文字だった。翻訳にかけると全部違う言語だった。でも全部、意味は同じだった。

*おいしそうです。*

*本当においしそうです。*

*こんなものが存在するとは。*

*何千年も地球を見てきたが、これは特別です。*

*隣の者もおいしそうと言っています。*

*全員がおいしそうと言っています。*

純は画面を妻に見せた。

「大騒ぎしてる」

妻がカレーをかき混ぜながら画面を一瞥した。

「何千年ぶりに大騒ぎなのかな」

「だろうな」

「カレーで良かった」

「そうだな」

カレーが煮えた。

妻が二人分よそった。湯気が立っていた。カメラが一台、コレール皿の真上に来て、湯気と一緒にカレーを接写した。

二人で食卓についた。食べた。

おいしかった。

スマホが震え続けていた。テーブルの上で振動しながら、画面に通知が増え続けていた。純は気にしなかった。カレーがおいしかった。

「おかわりする?」

するかどうか考えていたら、スマホに通知が来た。

*もう一杯食べてください。*

純はおかわりをした。

妻が「向こうに言われたからでしょ」と言った。

「おいしいから食べる」

「でも言われてからだったじゃない」

純は何も言わなかった。

カレーがおいしかった。

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チャンネル登録者数は、十億を超えてまだ増え続けていた。

地球は何段階も上に変わっていた。空気が変わった。街が変わった。夜空の星が増えた。

向こうはまだカレーの映像を見ていた。

コメントが来た。

*来週も作りますか。*

純は妻を見た。妻がカレーを一口食べた。

「来週も作る?」と純が聞いた。

「カレー、好きだからね」

純はコメントに返した。

*作ります。*

一秒で返ってきた。

*待っています。*

カメラが二台、並んで浮いていた。録画ランプが赤く光っていた。

今日も、どこかへ届いていた。

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JJ

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