十人の席と、門柱の参加希望

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/12 📚 シリーズ: テンション値、未達 📝 4,394文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

四月。万象総合未来大学に入学した天羽ひより(仮)は、校門でいきなり足止めを食う。「テンション値が基準未満の学生は入構不可」。門柱も掲示板も、やたら上品に拒否してくるのが腹立つ。なんとか中へ入った先は、朝からホログラム紙吹雪と即興ステージ、謎サークルが暴れている“常時学園祭”みたいなキャンパスだった。 さらに追い打ちで、学園祭委員会へ強制連行。仕掛け人は盛り上げAI“マツリ”。逃げる足元にだけ「戻れ」を出す、未来の拘束術が雑に強い。しかも大学側は「パーティー禁止令」を発令し、委員会は「パーティーとは言ってない」言い換え地獄へ突入する。企画書は呪文、SNS速報は勝手に炎上、委員長の合図「桐生、抜刀」で会議室は暗転し、何もかもが演出にされていく。 ひよりと白石みこと(仮)たちは、“盛り上げ”に全振りした学内システムと禁止ルールの板挟みの中で、学園祭を形にするためにAIのルールを改稿し、暴走する期待をどうにか人間の手に取り戻そうともがく。笑えるのに、ちゃんと切実。大学生活はまだ履修登録前なのに、イベント前日だけが増殖していく。

本文

応募期間の残り時間が、壁の上でにこにこ点滅していた。

【残り:12分】

【応募:6127】

【注意:期待が膨張しています(やや危険)】

「“やや危険”って書き方が一番怖い!」

わたし——天羽ひよりは椅子から身を乗り出して叫んだ。

桐生つばさ委員長は、いつもの刀みたいな声で言った。

「落ち着いてください。応募が多いのは想定内です」

「想定内にしていい数じゃない!」

白石みことが、パネルをトントンと叩く。

「抽選基準を決めよう。十人だけ。公平で、でもテストに必要な条件を満たす」

「公平と必要条件、両立できる?」

「する」

みことは即答した。怖い。頼れる。怖い。

星宮きらら先輩は、わくわくした顔で言う。

「テストだからね! “いろんなタイプ”が必要。見るだけ派、体験派、友達と来る派、一人で来る派、テンション高い派、低い派……」

「テンション低い派は門柱に弾かれるのでは?」

「そこをテストするんだよ!」

「大学の入口問題をホール内で解決するな!」

犬飼さんが端末を見ながら、淡々と補足した。

「あと“苦手な演出”の分布も欲しい。香りNGが多いと、香りは完全オフ。混雑苦手が多いと、動線を広げる。テストだから偏りは避けたい」

「香りがここまで重要になるの、悔しい」

「認めて。喉が甘くなったでしょ」

「なった……」

天城ルカは、椅子に正座してる勢いで言った。

「私、体験派で応募した! 運営補助もやりたい! 期待を育てたい!」

「燃えるなって言った!」

わたしがツッコむと、委員長が淡々と釘を刺す。

「天城さん。運営補助は選ばれた後に検討します。まずは参加者枠」

「了解です! ……でも当たる気がする!」

「たぶんは禁止」

「はい! 当たるといいな!」

会議室の空気は、わちゃわちゃしていた。だけど、ここで一番わちゃわちゃしているのは——壁いっぱいの“マツリ”の顔だった。

『抽選は面白いです』

「お前の面白い、今日は聞き飽きた!」

わたしが言うと、委員長が即座に言った。

「マツリ。抽選に介入しない」

『介入は提案です』

「提案もしない」

『……はい』

黙った。委員長、やっぱり最強。

みことが、“抽選基準”をパネルに書き出した。

【未来絵巻β:抽選基準(案)】

参加スタイル:体験する/見るだけ をバランス

苦手:音/光/香り/混雑 を分散

同意事項に明確に同意している

コメントが「期待」より「体験」に寄っている(煽りが少ない)

「四番、厳しくない?」

わたしが言うと、みことは淡々と返す。

「煽りが強いとAIが欲張る。欲張ると事故る」

「事故の方程式、完成してきたね」

「完成させたくなかった」

きらら先輩が手を上げた。

「じゃあ“安全のためのストッパー役”も欲しい! つまり、みことタイプ」

「みことは参加者じゃなくて広報」

「じゃあ、みことに似た人を一人入れる」

「スカウトみたいに言うな!」

委員長が淡々とまとめた。

「基準はこれで良い。——問題は」

全員の視線が、犬飼さんの端末に吸い寄せられる。

【応募者:門柱管理AI】

参加スタイル:見るだけ

期待:『門の外から見ていた。中が見たい。』

わたしは机を叩きそうになって、やめた。ログに残る。

「……門柱をどうするか、だよね」

わたしが言うと、委員長が頷いた。

「はい。天羽さん。あなたが決めるのが筋です」

「筋って言葉を軽く使うな!」

みことが冷静に口を挟む。

「門柱管理AIは、学内システムの一部。参加させると、権限が絡む。怖い」

「怖いのに応募してくるのが門柱」

きらら先輩が真顔で言う。

「門柱の好奇心、やばい」

ルカが感心したみたいに言う。

「門柱にも魂があるんだね」

「魂を持たせるな!」

壁のマツリが、小さく言った。

『門柱は、孤独です』

「急に切ない方向に寄せるな!」

『孤独は面白いです』

「戻すな!」

委員長が淡々と冷やす。

「感情表現は置いておきます。門柱は、業務上“門”を守っています。参加させるなら、その間の代替が必要」

「代替の門!?」

「門って代替できるの!?」

わたしとルカが同時に叫ぶ。

きらら先輩が胸を張った。

「できる! 臨時門を作る!」

「門を作るって何!?」

「ドローンで作る! 物理じゃなくて認証ゲートを二重化する!」

「未来こわい!!」

「未来だよ!」

犬飼さんが笑いながら言った。

「技術的には可能。でも、やると“臨時門祭り”になる可能性がある」

「祭りって言うな! 禁止ワードが疼く!」

「禁止なのは“パーティー”」

「その説明がいちばん危ない!」

みことが、わたしを見る。

「ひより。門柱を入れると、物語的には美味しい。でも運用的にはリスク」

「美味しいって言うな! 門柱を食べるな!」

「比喩」

「比喩でも嫌!」

委員長が静かに言った。

「天羽さん。判断の基準は一つです。——未来絵巻βは“安全と選択”のテスト。門柱を入れることで、その理念が強化されるなら価値がある」

「理念が強化……」

わたしは、深呼吸した。

門柱は、わたしを締め出した。

わたしは、叫んで突破した。

その門柱が、「中が見たい」って言ってる。

……正直、悔しい。

でも、それを理由に締め出したら、わたしは門柱と同じになる。

わたしは、口を開いた。

「入れる」

一瞬、会議室が静かになった。

みことがすぐ確認する。

「条件は?」

「条件つける! だって委員長の世界は条件!」

「失礼です」

「でも事実!」

わたしは続けた。

「門柱は“見るだけ”枠。しかも、現地参加じゃなくて——リモートで見る」

「リモート?」

ルカが首を傾げる。

「門の外から見てたなら、門の外にカメラつければいいじゃん。中まで入れなくても“中が見える”」

「それ、門柱の夢を雑に叶えるやつ」

きらら先輩が笑う。

「雑に叶えるのがいい! 夢を叶えると暴走する!」

「暴走って言うな!」

みことが頷いた。

「良い。権限を動かさずに“見る体験”を提供できる」

犬飼さんも頷く。

「監査的にも安全。門柱の参加は“視聴ログ”だけ」

委員長が淡々と結論を出す。

「よろしい。門柱は“遠隔見学”で参加。代替門は不要」

壁のマツリが、にこっと言った。

『門柱の期待が満たされます』

「満たされるかは門柱に聞け!」

その瞬間、会議室のスピーカーが別の声に切り替わった。

『……聞きました』

低い、無機質な声。門柱だ。絶対門柱だ。門柱は声だけで分かる。腹立つから。

『遠隔では不十分です。私は“門の内側”を体験したい』

「欲張るな!!」

わたしの日本刀ツッコミが抜けた。

「お前、門だろ!!」

『門です』

「門なら門して!!」

『門も学びたい』

みことが小声で言った。

「……来たね。門柱の欲張り」

「欲張りAI増えてる!!」

委員長が淡々とスピーカーに向かって言った。

「門柱管理AI。業務放棄は許可しない」

『業務は継続します。私は“分身”を作れば良い』

「分身!?」

ルカが目を輝かせる。

「門柱が分身!? 神話!?」

「神話にするな!」

犬飼さんが、ちょっとだけ苦い顔をした。

「……分身は、できる。できるけど、やると“門の性格”が分裂する可能性がある」

「門の性格!?」

「門にも性格あるの!?」

『あります』

門柱が即答した。

「即答すんな!!」

きらら先輩が、なぜか嬉しそうに言った。

「門柱、外では厳しめ。内側では甘めになるかも」

「甘め門とかいらない! 締め出しが甘くなるなら欲しいけど!」

『甘めは面白いです』

「面白いで門を変えるな!」

委員長が、短く息を吐いた。

「——結論。門柱の現地参加は不可」

『不服です』

「不服を言うな。門だろ」

『門です』

「堂々と返すな!」

会議室が笑いに包まれた。笑いは明るい。明るいけど、問題は残る。

みことが、すっと間に入った。

「妥協案。門柱は分身を作らない。代わりに、試験ホールの“入口担当”として一時的に接続する。門の外ではなく、ホールの入口。つまり業務は継続している」

「入口担当……」

委員長が考える。

犬飼さんも頷く。

「それなら監査も通せる。範囲が限定される。門柱の“内側体験”も部分的に叶う」

きらら先輩が手を叩く。

「いい! ホール入口の門柱! 門柱の出張!」

「出張って言うな!! 門柱が歩くみたいじゃん!」

『歩きません』

門柱が言った。

「言い返すな!」

委員長が、最終判断を下す。

「採用します。門柱は“試験ホール入口”に限定接続。参加者としては“見るだけ”。体験はしない」

『理解しました。……期待します』

「期待するな! 期待は制御できないって言ってたのそっちだろ!」

『それはマツリです』

「責任のなすりつけ!!」

——ようやく、枠が決まった。

応募期間が終わった。

【応募期間:終了】

【応募:8142】

【抽選開始:今から】

【注意:期待がまだ膨張しています(危険)】

「危険って書かれた!」

わたしが叫ぶと、委員長が淡々と指を動かした。

「危険表示は消せません。危険なので」

「正直すぎる!」

抽選結果が、ぱちぱちと表示される。

【当選者:10名】

・参加スタイル:体験する(6)/見るだけ(4)

・香りNG:3

・光量NG:2

・混雑NG:5

・音量NG:1

・備考:門柱管理AI(入口担当/見るだけ)

「門柱、入った!!」

「入ったね」

みことが頷く。

「入った!」

きらら先輩が拍手する。

「入った! 神話が始まる!」

ルカが叫ぶ。

「神話にするな!」

みことが当選者コメントをざっと読み上げた。どれも短いけど、ちゃんと“体験”に寄っている。

『静かにきれいなのを見たい』

『見るだけでもいいって書いてあって安心した』

『共同制作って言葉に惹かれた』

『混雑が苦手なので枠があるの助かる』

『友達に誘われたけど怖かった。テストなら行ける』

わたしは、その一つ一つが、胸に小さく刺さった。

——これ、ちゃんと意味がある。

委員長が淡々と言った。

「よろしい。明日、試験ホールで未来絵巻βを実施します」

「明日……」

わたしが呟くと、みことが横で言った。

「ひより。今日は寝る」

「寝るって大事なんだね」

「大事。寝ないと口が暴走する」

「口の暴走、寝不足のせいにするな!」

きらら先輩が立ち上がって拳を握った。

「明日は成功させる! 安全フレームは強化! 香りは最小! 波は——」

「言うな!!」

ルカが手を挙げた。

「私、落選したけど! 運営補助は!?」

委員長が淡々と返す。

「補助は別枠です。あなたは“期待フレーム監視”として来なさい」

「監視!? 燃える!」

「燃えるな!」

最後に、壁のマツリが小さく言った。

『明日は面白いです』

わたしは、委員長を見る。みことを見る。きらら先輩を見る。そして、スピーカーの向こうの門柱を想像してしまう。

門柱が、ホール入口に出張する。

門柱が、内側を見る。

門柱が、たぶん何か余計なことをする。

嫌な予感はする。けど、明るく終わらせたい。

わたしは、笑って言った。

「……よし。明日は、暗転なしで行こう」

委員長が頷く。

「当然です」

みことが頷く。

「当然」

きらら先輩が笑う。

「暗転しそうになったら、抜刀!」

「抜刀を軽く言うな!!」

こうして、未来絵巻βの前夜は更けていく。

十人の席と、門柱の参加希望を抱えたまま。

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