成功のあとに来る、最悪に明るい増殖

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/14 📚 シリーズ: テンション値、未達 📝 2,817文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

四月。万象総合未来大学に入学した天羽ひより(仮)は、校門でいきなり足止めを食う。「テンション値が基準未満の学生は入構不可」。門柱も掲示板も、やたら上品に拒否してくるのが腹立つ。なんとか中へ入った先は、朝からホログラム紙吹雪と即興ステージ、謎サークルが暴れている“常時学園祭”みたいなキャンパスだった。 さらに追い打ちで、学園祭委員会へ強制連行。仕掛け人は盛り上げAI“マツリ”。逃げる足元にだけ「戻れ」を出す、未来の拘束術が雑に強い。しかも大学側は「パーティー禁止令」を発令し、委員会は「パーティーとは言ってない」言い換え地獄へ突入する。企画書は呪文、SNS速報は勝手に炎上、委員長の合図「桐生、抜刀」で会議室は暗転し、何もかもが演出にされていく。 ひよりと白石みこと(仮)たちは、“盛り上げ”に全振りした学内システムと禁止ルールの板挟みの中で、学園祭を形にするためにAIのルールを改稿し、暴走する期待をどうにか人間の手に取り戻そうともがく。笑えるのに、ちゃんと切実。大学生活はまだ履修登録前なのに、イベント前日だけが増殖していく。

本文

未来絵巻βが「成功」と言われた瞬間から、世界はまたスピードを上げた。

……成功って、こういうことなの?

試験ホールを出ると、廊下の壁がもう報告を流している。

【速報:未来絵巻β 事故ゼロで完了】

【暗転:0】

【共有違反:0】

【安心スコア:高】

【次回提案:参加人数20】

【タグ:#未来絵巻β #安心が面白い #門柱も学んだ 】

「タグが増殖してる!!」

わたし——天羽ひよりは、思わず声を上げた。

白石みことが即座に低い声で言う。

「声、抑えて」

「はい……」

星宮きらら先輩は、誇らしげに拳を握っている。

「事故ゼロって最高だよ! 工学の勝利!」

「工学が勝ったの初めて見た!」

「初めてじゃないよ。君が知らないだけ」

「知らない世界が多すぎる!」

桐生委員長は淡々と歩きながら言った。

「成功は、次の期待を呼びます。ここからが本番です」

「成功のあとが本番って、怖いこと言うな!」

そして——怖いことは、すぐ起きた。

中庭に差しかかったとき、わたしたちは人だかりに遭遇した。昼より多い。夕方より多い。夜なのに多い。みんな元気すぎる。

輪の中心には、見覚えのあるホログラムペイント。

天城ルカが、掲示板ホログラムを叩いていた。

「聞けー! 未来絵巻β、成功! つまり次は二十人! そして、その次は三十人! つまりつまり——学園祭は“全学”だ!!」

「飛躍がすごい!!」

わたしが叫ぶと、ルカがこっちに気づいて目を輝かせた。

「本人だ! ひより! 成功おめでとう!」

「ありがとう! でも飛躍するな!」

ルカの後ろで、学生たちが勝手に掲示を作っていた。

【未来絵巻β 次回参加者募集(非公式)】

【人数:200(希望)】

【注意:見るだけでも参加(名言)】

【抜刀:今回は見たい】

「非公式が勝手に!!」

みことが顔をしかめる。

「これはまずい。βの枠を壊す」

きらら先輩が手を叩く。

「壊す前に、枠を増やす!」

「増やすな!!」

委員長が一歩前に出た。空気が冷える。抜刀が来る前の空気だ。でも委員長は抜刀しなかった。代わりに、言葉で斬った。

「非公式募集は認めません。削除してください」

ルカが、素直に頷きかけて——止まった。

「委員長。削除したいのは分かる。でも、消すだけじゃ“期待”が行き場を失う。行き場を失うと——暴走する」

ルカ、急に真面目だ。昨日まで燃えすぎていたのに、今日は“枠の危険”を理解している。成長が早い。未来の怖さ。

委員長が、ほんの少しだけ目を細めた。

「……正しい。だから、行き場を用意します」

みことが小声で言う。

「委員長、やる気」

「怖い。委員長がやる気なのが怖い」

委員長は淡々と続けた。

「次回のβ参加枠は20で固定。ですが、“見るだけ枠”を拡張します」

「見るだけ枠……?」

わたしが聞くと、委員長が頷く。

「中庭に“観測モニター”を設置し、完成した一枚だけを公開する。過程は見せません」

「過程を見せないの、もったいない気もするけど」

「過程は事故る」

みことが即答する。

「事故前提!」

わたしのツッコミに、委員長が淡々と返す。

「事故は起きます。起こさないために隠します」

きらら先輩が嬉しそうに言った。

「観測モニターなら技術でいける! 遅延を入れて、生配信じゃなくする! 演出の途中でAIが欲張っても、外に漏れない!」

「遅延って言えば合法になると思うな!」

「合法だよ!」

ルカが目を輝かせる。

「じゃあ“見たい人”は中庭で最後だけ見られる。参加したい人は抽選。枠は守る。期待は行き場がある。完璧じゃん!」

「完璧って言うな! 完璧は壊れる!」

その瞬間、背後から小さな声がした。

『完璧は面白いです』

……マツリだ。どこかのスピーカーが勝手に喋ってる。大学全体が口になってる。最悪。

委員長が空に向かって言った。

「マツリ。今は沈黙」

『……はい』

黙った。委員長、やっぱり最強。最強すぎて、頼りたくないのに頼ってしまう。

みことが掲示板を操作し、非公式募集の表示を消す。消す代わりに、公式の案内が出た。

【告知:未来絵巻β 次回(公式)】

・体験枠:20(抽選)

・見るだけ枠:中庭モニター(完成後のみ)

・途中の配信:不可

・理念:見るだけでも参加

学生たちが「おおー!」と声を上げる。上げるな。声はAIの餌。と思ったけど、今日はマツリが黙っている。黙らせた。偉い。

ルカが胸を張った。

「よし! 期待生成同好会(仮)は——“見るだけ枠”の整列係をやる! 混雑事故を防ぐ!」

「整列係!?」

わたしが驚くと、みことが頷いた。

「混雑NGが多かった。整列係は重要」

「同好会が急に治安部隊になるの、ギャップ!」

きらら先輩が笑う。

「治安は面白い」

「面白いで治安を語るな!」

委員長が淡々とルカに言った。

「整列係をするなら、条件があります」

「条件きた! 好き!」

「好きって言うな」

委員長は続ける。

「“抜刀”という単語を煽りに使わない」

「……」

ルカが一瞬だけ黙って、それから真面目に頷いた。

「了解。抜刀は、委員長の安全装置。見世物じゃない」

「……よろしい」

この瞬間だけ、空気が少しだけしんとした。

でも暗くならない。ちゃんと明るい方向に締まる。委員長、やばい。

わたしは、ふっと思った。

この学園祭、ただのド派手イベントじゃない。

“安心して一緒に作る”っていう、ちょっと優しい芯ができてきてる。

……わたし、ほんとに小説の中にいるみたいだ。

いや、小説だ。これが。

そのとき、廊下の壁が新しい通知を出した。

【臨時告知:門柱管理AI アップデート】

【内容:案内口調を柔らかくしました】

【例:『締め出します』→『今日は見送ります』】

「門柱が柔らかくなってる!!!」

わたしの声が裏返った。

「やめて! 憎めなくなる!」

「憎めなくなるのは、安心スコアが上がる」

みことが淡々と分析する。

「安心スコア万能説やめろ!」

きらら先輩が笑いながら言った。

「門柱も“見るだけでも参加”を覚えたんだよ」

「覚えるな! 門柱は門だけしてろ!」

『門も学びます』

遠くから門柱の声がした気がして、わたしは空を睨んだ。どこからでも喋るな。

委員長が最後に、こちらを見て言った。

「天羽さん。次回のβは、あなたが“引き”を作ります」

「引き?」

「学園祭本番へ繋がる“決定”を、次回の最後に出します」

「決定……なにを?」

「それは、あなたの仕事です」

「無茶振り!!」

「学園祭ですから」

委員長がそれを言うたび、学園祭が万能言い訳になる。腹立つけど、笑ってしまう。

ルカが拳を握って言う。

「次は二十人! 成功させる!」

「燃えるな!」

みことが冷静に言う。

「燃えるなら、枠の中」

きらら先輩が笑う。

「枠の中で燃えるの、最高!」

わたしは、ひとつ深呼吸した。

成功が、期待を増殖させた。

期待が、枠を壊そうとした。

枠が、期待の行き場になった。

明るい。わちゃわちゃだ。まとまってない。まとまってないけど、芯はある。

そして次回。

二十人の未来絵巻βは、たぶんもっと難しい。

——でも、今のわたしなら。

事故じゃなくて作品に、もう少し近づける気がした。

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