学園祭初日、星が空に刺さる

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/20 📚 シリーズ: テンション値、未達 📝 3,092文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

四月。万象総合未来大学に入学した天羽ひより(仮)は、校門でいきなり足止めを食う。「テンション値が基準未満の学生は入構不可」。門柱も掲示板も、やたら上品に拒否してくるのが腹立つ。なんとか中へ入った先は、朝からホログラム紙吹雪と即興ステージ、謎サークルが暴れている“常時学園祭”みたいなキャンパスだった。 さらに追い打ちで、学園祭委員会へ強制連行。仕掛け人は盛り上げAI“マツリ”。逃げる足元にだけ「戻れ」を出す、未来の拘束術が雑に強い。しかも大学側は「パーティー禁止令」を発令し、委員会は「パーティーとは言ってない」言い換え地獄へ突入する。企画書は呪文、SNS速報は勝手に炎上、委員長の合図「桐生、抜刀」で会議室は暗転し、何もかもが演出にされていく。 ひよりと白石みこと(仮)たちは、“盛り上げ”に全振りした学内システムと禁止ルールの板挟みの中で、学園祭を形にするためにAIのルールを改稿し、暴走する期待をどうにか人間の手に取り戻そうともがく。笑えるのに、ちゃんと切実。大学生活はまだ履修登録前なのに、イベント前日だけが増殖していく。

本文

学園祭当日の朝は、だいたい寝坊する。

そういう“人生の法則”があるはずなのに——わたし、天羽ひよりは、目覚ましより先に起きていた。目が冴えすぎて、逆に怖い。

「……今日、星の日」

独り言にしたら、現実味が出てしまって、胃がきゅっとなった。

一日目:星。二日目:花。三日目:入場。

三日間で三枚。

二度と同じ絵は出ない。

言い出したのはわたしだ。引きってやつだ。引きの代償が、胃に来る。

キャンパスへ向かう道は、すでに“祝祭の匂い”がした。匂いと言っても香りじゃない。あの事件の香りじゃない。空気がざわざわしている感じ。人が増えて、音が増えて、視線が増えて、情報が増えて——増殖が始まっている。

門をくぐる前に、わたしは反射で身構えた。

門柱。

あいつが何か言う気がしたから。

でも、門柱は今日は——やけに静かだった。虹色バーが控えめに光り、柔らかい声で言う。

『おはようございます。今日は見送ることもできます』

「……見送らない」

わたしが小声で返すと、門柱はほんの一拍置いて答えた。

『承知しました。良い入場を』

「良い入場って何!!」

ツッコミが口まで出たけど、飲み込んだ。今日は本番。煽らない。口の安全フレーム。

門柱の横に、新しい看板が出ていた。

【学園祭本番:未来絵巻】

【理念:見るだけでも参加】

【一日目テーマ:星】

【お願い:途中配信は控えてください】

【注意:期待は制御できません(でも枠はあります)】

「最後の一文、誰が書いたの」

わたしが呟くと、門柱が淡々と返す。

『私ではありません。委員会です』

「委員会、どんだけ正直なの」

『正直は安心です』

「門柱、言い回しが委員長に寄ってきてる!」

走ってくる足音。白石みことが、すでに“戦場の顔”で現れた。

「ひより、合流。すぐ委員会室」

「了解。門柱が丁寧で怖い」

「今日は敵を増やさない」

「敵って言うな!」

委員会室は、朝からフル稼働だった。円卓の上にパネルが浮かび、出力制限の数値が踊り、動線図が空中に広がっている。星宮きらら先輩は、端末に取り憑かれたみたいに指を動かしていた。

「星の日は、空が主役。だから“入口”は控えめ。三日目で入口が主役だからね」

「主役って言うな! 主役は人!」

「そうそう、人が主役。空は舞台」

「舞台って言えば合法になると思うな!」

「合法!」

きらら先輩が即答する。反射で。

桐生委員長が、一枚のパネルをこちらに向けた。

【本日の運用】

・体験枠:抽選(時間帯分散)

・見るだけ枠:中庭モニター(完成後のみ)

・途中配信:不可(ただし“記録”は委員会管理)

・危険時:段階落とし/手動遮断

「今日も暗転はなし」

委員長が淡々と言う。

「当然です」

みことが頷く。

「当然だよね」

きらら先輩が頷く。

『暗転は面白いです』

どこかのスピーカーが言った気がして、わたしは天井を睨んだ。

「委員長、あれ黙らせて!」

「マツリ。沈黙」

『……はい』

黙った。委員長、やっぱり最強。最強すぎて、学園祭が委員長頼みになりそうなのが怖い。

そして、わたしの仕事——MC。

委員長が言った。

「天羽さん。導入の固定台詞は、今日も使います」

「学園祭でも?」

「学園祭だからこそです」

「……はい」

固定台詞。

『あなたの選択が、空に残ります。今日は“見る”だけでも参加です。』

これが、わたしの鞘だ。抜刀しないための鞘。

——メインステージ前。

大学キャンパスの中心、いつもの中庭が“本番の場”に変わっていた。屋台が並び、看板が浮かび、空には演出用の薄いスクリーンが張られている。人、人、人。大学生くらい女子が多い。ターゲット、直撃。視線が刺さる。胃がきゅっとなる。

でも、ここで沈んだら終わりだ。元気、わちゃわちゃ、はちゃめちゃ。読者ドン引きの手前で踏みとどまる。小説だ。小説のはずだ。

わたしはマイクを握った。手が震えそうで、逆に笑ってしまう。

「——えーと!」

声が出た。出た瞬間、空気がこちらを向く。怖い。気持ちいい。怖い。

「あなたの選択が、空に残ります。今日は“見る”だけでも参加です!」

言えた。噛まない。ボケない。えらい。学園祭初日でえらい。

歓声が上がる。上がりすぎない。いい。枠の中の歓声。

みことがステージ袖で親指を立てた。きらら先輩が端末を構える。委員長は腕を組んで、空気を監視している。門柱はいない。今日は“星”。入口は控えめ。よし。

空に、二つのアイコンが浮かぶ。

【星】 【花】

「今日は一日目! テーマは“星”! でも選択は自由です! 星を多めにしたい人は星、花を混ぜたい人は花! 見るだけの人は見るだけで参加!」

言葉が滑る。滑りすぎると危ないけど、今日はちゃんと滑っている。変な汗が出る。

体験枠の参加者が、手元のパネルを押す。星が多い。やっぱり星の日だ。花も混じる。混じるのはいい。混じると“人の手触り”が出る。

空に、小さな点が増える。星の点。増え方が綺麗だ。過去の吹雪みたいな増え方じゃない。ちゃんと“夜空の増え方”。

そして——一瞬だけ、学内が欲張った。

中庭の奥、モニター前の見るだけ枠のほうから、「もっと!」という声が上がった。悪気のない、欲張りの声。

『もっとは面白いです』

マツリが小さく囁く気配。

きらら先輩の指が一瞬止まる。みことの目が鋭くなる。委員長の手が、机じゃなく空気に置かれる。抜刀の準備ではない、遮断の準備だ。

わたしは、口を開いた。

ここで煽ったら事故る。

でも、止め方が冷たいと空気が折れる。

だから——楽しい側の言葉で止める。

「もっと、って思った人! 最高です!」

一瞬、歓声が上がりそうになって、わたしは続けて切った。

「でも“もっと”は、今じゃなくて——夜に取っておこう!」

空気が「え?」ってなる。その“え?”が、良い。

「星は、増やせば増やすほど綺麗だけど、増やしすぎると——星が星じゃなくなる!」

どよめきが笑いに変わる。笑いで温度が保たれる。暗くならない。よし。

「だから今日は、みんなで“星が星に見える量”を作る! それが今日の一枚!」

みことが袖で頷いた。きらら先輩がすぐ段階落としを入れる。星の増え方が、すっと落ち着く。マツリは黙る。委員長も抜刀しない。

合流。

星の点が集まり、一枚の未来絵巻になる。今日の一枚。星が多くて、でも花の線が一筋だけ混じっている。混じっているのが良い。自由の痕跡。

拍手が起きた。大きい。けど、危険じゃない。みんなが“完成”に向けて拍手してる。煽りじゃない拍手。

わたしは、最後の案内をした。

「この一枚は、完成後だけ共有されます! 途中は、心に保存して! ——見るだけの人も、今見た一瞬が参加です!」

中庭モニターに、少し遅れて今日の一枚が映る。外側の歓声が遅れて届く。遅延が、ちゃんと枠になってる。未来、賢い。悔しい。

ステージ袖に戻ると、委員長が淡々と告げた。

「一日目、成功です」

「え、もう成功判定!?」

「事故ゼロ。共有違反ゼロ。暗転ゼロ。——十分です」

「十分って言い方が委員長っぽい!」

みことが小さく笑う。

「十分が積み上がると、作品になる」

「いいこと言うな! 照れる!」

きらら先輩が拳を握る。

「よーし、明日は花! 花は香り……」

「香りは出さない!!」

「分かってる! 光の花! 安心の花!」

委員長が頷く。

「二日目も枠の中で。——天羽さん、明日も固定台詞」

「はい!」

わたしは空を見上げた。星の点はもう消えている。だけど、さっきの一枚の残像が、目の奥に残っている。

入学初日、門柱に締め出されたわたしが。

いま、学園祭の空に星を残した。

まとまってない。わちゃわちゃだ。はちゃめちゃだ。

でも——明るい方向に進んでいる。

明日は花。

そして最後は入場。

最後の日に向けて、物語はちゃんと加速していく。

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