第26話 椿様、墓穴掘って自分で墓穴落ちて、墓穴の中で宣うの巻!
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ポンコツ社畜アラフォー女子♪日常こそネタ祭り! - 第26話 椿様、墓穴掘って自分で墓穴落ちて、墓穴の中で宣うの巻!
本文
午後。
スマホの画面と椿。
診察後の雑談みたいな流れだった。
ゲームの話。
昔のネット文化。
ニコニコ動画。
椿はその辺、意外と理解がある。
不登校を支えてくれた一部な彼らを今も
心から愛している。
だから空も椿も、少し気を抜いていた。
本当に、少しだけ。
『くっころなんて……』
送ってから、数秒待たず後悔した。
既読。
そして。
『すみません、くっころって何ですか?』
完全停止。
「……………………は?」
小野瀬氏は、本当に知らなかった。
ふざけてもない。試してもない。
純粋に、
意味を聞いている。
性的な話題は、ほぼ触れない椿。
なのに。
よりによって、“くっころ”。
椿はスマホを持ったまま、眉間を押さえる。
どうする。誤魔化す?
いや、心理士に通じない。
変に逃げる方が返って不自然。
説明、するしかない。
(サイアク…)
打っては消して、打っては止まったあと、
ついに観念する。
『えっと……』
『女騎士とかが、敵に捕まって……』
送信してから、もう顔が熱い。
『鎧とか服とか剥がされて、辱めを受けた後に……茫然自失になって……』
『「くっ……殺せ!」って言う特殊なシチュ……
トーマとタツハが好きでイヤ』
送信。
終わった。
「……も、無理ぽ……」
数秒。
既読のまま、返事が来ない。
その沈黙が、余計に苦しい。
「絶対困ってる……」
「引かれた……」
「終わった……」
そして、ようやく通知。
『なるほど……
そういうジャンルの呼称なんですね』
「真面目か!?」
椿、硬直。
(くっ……何でネット知識豊富なのに
くっ殺だけは知らないのよ!?
草とか普通に通じるじゃん!
何でピンポイントでソレだけ知らないの!?)
スマホを見たまま、完全停止。
その異変に、空が気づく。
「椿?どしたの?」
「へ?べ、別に?
ちょっと小野瀬さんが変なコト聞くもんだから」
「変な事って?」
(しまったー!!)
椿、即座に。
「いーの!アンタはほらソッチ優先でしょ?
夏樹さん苦労するから資料完成させなさいよ」
「あー……そうだよね」
空、素直に戻る。
助かった。
別方向から察知するのが冬馬だった。
ゲームしながら、異常に鋭い嗅覚で。
「ツバッキー、チョイ調べモン〜」
「……貸さないよ」
「何故に?」
「貸せない」
「だから何故に?」
椿、露骨に挙動不審。
「いーの!
ほらアンタもさっさか部屋片付けなさいよ!
アンタが謎に一番上手いんだから!」
「や、一昨日やって綺麗そのものだろ」
ボス戦しながら返す。
「ねー、貸せって。
あとチョイで中ボス倒せんの!」
「わ、かった!理解ったから大人しくしろ!
このアホトーマ!」
「言ったなぁ!?」
ゲーム一時停止。
「知らねーよ!歳上だからって
いっつも偉そうなコトばっか!」
「王は偉いから王なんじゃねーの!
偉いコトして、認められたから王なの!」
空が吹きそうになる。
突拍子も無いが、例え自体は優秀だったから。
「言うだろ?椿様って。空もたまに言うよな?」
「もー!!五月蝿いな!」
半分やけくそに。
「はい!小野瀬さんと今後の復職について
話してんだから早よ返せ!」
「ほ〜いw」
スマホ受け取りながらニヤつく冬馬。
(にゃるほど。理恵にゃんとのやり取りね)
ぽち。
画面点灯。
そして。
停止。
「……にゃ???」
数秒後。
「へっ???」
理解。
爆発。
「神⭐︎展⭐︎開!キターーー!!
♪───O(≧∇≦)O────♪」
「見ぃるなぁぁぁぁ!!」
スマホを引ったくる椿。
空は事情が分からないまま、
資料片手に目を瞬かせる。
「……何が?」
冬馬腹抱えて笑い崩れる。
「ツバッキーが!!小野瀬さん相手に!!
くっ殺説明してる!!ふ、復職相談ん〜」
沈黙。
空、ゆっくり椿を見る。
真っ赤だ。
「………………」
空、数秒固まったあと、静かに顔を覆う。
「……あー……それは……その。お疲れ……」
「くっ殺キライな癖にくっ殺案件で草www
しかも自分で自滅!!
完っ全自業自得wwwww」
「だぁぁぁぁもう!!」
椿、クッション投擲。
しかし外れる。
いくらドッジボールの名手といえど
相手も同じなのだ。避けるのは容易い。
空は苦笑しながら、資料を抱え直す。
「冬馬、落ち着いて。椿、居た堪れなくて
家出しちゃうから。私みたいに」
自虐ネタを混ぜるのは最早習性か。
「やー!こりゃ堪らん!」
冬馬、まだ笑いが止まらない。
「椿の自滅は良くあれど
こ、コリは中々乙なモンよのぅ」
「だーまーれー!!」
その時。低い声。
「お前等、暇だな」
部屋の空気が、一瞬で静まる。
黒だった。
壁際に寄りかかりながら、
呆れた目で全員を見ている。
「そして何より阿呆だろ。空も構うな。
狗に餌撒くな」
「狗ゆーな!」
即反応する椿。
完全に無視。
「で?問題はそこじゃない」
椿、ぴくっと止まる。
黒と椿はスマホを見る。
「返事、止まってるぞ」
「う゛っ」
小野瀬さんとのチャット、未返信。
冬馬、再起動エンジン点火。
「送れ送れ!
“ちなみに小野瀬さんはお好きですか?”って!」
「あの人を煩わせるな。殺すぞ冬馬」
「くっ……殺せ!!wwwwwwwww」
「トーマァァァァ!!」
机に突っ伏して笑いを堪える空。
「普通に返せ。誤解広げるな」
「わ、分ぁってるわよ!」
真っ赤なまま入力開始。
打って、止まる。消す。また打つ。
空がそっと覗く。
『私は特にそういう嗜好がある訳では無く……』
「硬っ」
「うるっさい!」
『ネット文化として知っていただけで……』
「“知っていただけ”w椿様の必死の弁明www」
「送らないよ!?」
『いや、送れよ』
総ツッコミ。しかも空までその口調。
くすっと笑いながら頷き、
「つ、椿ー?大丈夫だよー?」
椿、顔を覆ったまま動かない。
「小野瀬さんは分かってるよ。
冬馬やタツハが好きなだけで、
椿は何も無いって」
「空ぁ……」
消え入りそうな声。
「それにね?」
椿、優しい笑顔の彼女の続きを待つ。
尻尾が有れば期待に振っているだろう。
「くっ殺を説明する椿が
くっ殺案件に今まさに遭ってる、
それも自分から振った、なんて
普通私たち以外誰も気づかないよー?」
……
沈黙。
冬馬、ぴたりと止まる。
黒が、静かに目を閉じる。
「空、ソレ」
「完全に」
二人同時。
『トドメ刺した』
数秒後。
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
クッション二個目飛来。
今度は冬馬に直撃。油断だろう。
「ぐはっ!」
そこでようやく理解する空。
「あ」
黒、冷静に追撃。
「しかも無自覚で。正に最悪空だな」
「やめてぇぇぇ!!」
耳まで真っ赤になる椿
冬馬はクッション抱えながら、笑いすぎて涙迄。
「芸術点高すぎんだろ……!ギャグセン最高」
空、申し訳なさそうに近寄る。
「えっと……ごめん?」
「遅いよぉ、空ぁ」
黒だけが静かにスマホを見ながら、
ぼそっと言う。
「小野瀬さんに早う返せ。あの人を煩わせるな」
全員停止。
椿、ゆっくり絶望顔。
「……あ゛」