雪は溶たら泥になる 4話 偽りの善意
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
捜査資料 _φ(・_・ AGO母は立 正○○会 立 正○○会は 立憲○○党 立憲○○党は 江川 と 塩尻 村岡 は元市議で今は子どもの権利やいじめボランティアやっててそれ関係で第三者委員会解任された札幌の弁護士とも繋がっていた AGOは被害者の裁判準備の過程で自分の関与を否定してもらう為に被害者に手紙を渡したり、自ら虐められていた経験からとAGOを村岡の助言を受け立ち上げた。AGOにとっては被害者の失踪は遺族への絶好の贖罪アピールとなるため、雪の中ビラ配りを率先してやる。その結果、遺族はボランティアの男の子は加害者ではないと否定してもらえた。 ここまではAGO親子の筋書き通りだった… [匿名さん] この書き込みは本当だろうか?
本文
資料室は、夜の帳が降りる頃には、一層その薄暗さを増す。窓の外はとっぷりと暮れ、街灯の光が薄く網膜に焼き付いたように残る。天井から吊り下がった裸電球は、古びた黄ばんだ光を辛うじて空間に投げかけており、資料棚の影が長く伸びていた。埃の匂いが古い紙の匂いと混じり合い、浅野の鼻腔をくすぐる。その頼りない光の輪の中で、彼は一枚の写真をじっと見つめていた。指先で触れる印画紙の冷たい感触が、なぜか胸の奥をざわつかせる。
それは、行方不明となった美咲の捜索活動を報じる新聞記事の切り抜き写真だった。白黒の粗い粒子の中に、複数の子供たちがビラを手に写っている。その中央で、まだあどけなさの残る顔をした、こども会議白川A.G.OのメンバーであるYYが、くしゃくしゃになった美咲のビラを両手で握りしめ、目を潤ませていた。その隣には、同じくA.G.Oの少年Gが、YYを支えるように立っている。
二人は、必死に行方不明の友人を探している、傷つきやすい子どもにしか見えない。彼らの表情には、悲しみと、一刻も早く美咲を見つけ出したいという純粋な願いが宿っているように見えたことだろう。だが、浅野の胸には、拭い去ることのできない、冷たい違和感が澱のように沈んでいた。机の上のマグカップから立ち上る湯気だけが、資料室の静寂の中で、か細く揺らめいている。
浅野は、その湯気を見つめながら、深々と息を吐いた。
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■ A.G.Oの“異様なほど熱心な”捜索活動
浅野は、A.G.Oの活動記録が記されたバインダーを自分の手元に引き寄せ、ページを繰った。彼らの動きは、日にちを追うごとに詳細に記録されている。
- 2/17(水) 買い物公園前でビラ配り(強風のため終了)
- 2/19(金) 買い物公園前でビラ配り予定 → 人が集まらず中止
- 2/20(土) 買い物公園前でビラ配り
- 2/27(土) ツルハドラッグ白川中央でビラ配り
- 3/6(土) ツルハドラッグ白川中央でビラ配り
- 3/7(日) 札幌駅でビラ配り
浅野は、眉間に深い皺を刻んだ。指先で一つ一つの日付をなぞる。中学生が、ここまで連日、あるいは毎週のように、しかも場所を変えて広範囲にわたる捜索活動を続けることは珍しい。彼の経験からしても、これは“異様”と言えるほどの熱心さだった。
「初めは純粋な善意から始まったとしても、これだけ続けば、普通は疲弊するものだ。特に子どもは……」
浅野はそう呟き、ペンを指先で回した。
しかも、YYとGは、常に活動の中心に立ち、大人たちを差し置いて積極的に声を張り上げていたという証言も複数寄せられている。彼らの姿は、まさに美咲の救世主のように見えたことだろう。だが、浅野には、その熱心さが“善意”だけでは説明できない、もっと底知れぬ何かを孕んでいるような気がしてならなかった。彼の視線は、再びYYが涙ぐむ写真に引き寄せられる。写真の中のYYの目は、何かを隠しているかのように、浅野には見えた。
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■ 聞き込みで判明した「YYの過去」
浅野は、美咲が通っていた学校周辺で、細心の注意を払って聞き込みを行った。子どもたちのデリケートな感情を傷つけないよう、言葉を選びながら丁寧に。複数の生徒が、最初は口ごもり、ためらいながらも、やがて同じことを口にした。
「YYは……美咲に、いじめをしていたみたいです。」
その言葉を聞くたびに、浅野の胸に鈍い痛みが走った。いじめの内容は、浅野が想像していたよりも陰湿なものだった。
- 身体を触る
- 下品な言葉を浴びせる
- それを笑いものにする
そして、追い打ちをかけるように、親同士の話し合いで“和解”が成立したという事実が浮かび上がった。
「和解……か。」
浅野は、資料を握る手に無意識のうちに力を込めた。手のひらには、びっしょりと汗が滲んでいる。彼の脳裏に、いじめられていた頃の美咲の、うつむいた姿が鮮明に浮かび上がった。
「……いじめていた相手の捜索に、あれほど熱心に参加するものなのか?」
その疑問は、彼の心の中で雪だるま式に膨れ上がり、彼の常識と人としての感情に、大きな楔を打ち込んだ。それは、長年刑事として培ってきた経験が、不意に告げる不穏な警鐘だった。犯罪心理学で語られる典型的なパターンが、彼の頭の中で閃光のように駆け巡る。浅野は、思わず唇を噛み締めた。
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■ 浅野の推理:「犯人が捜索に参加する理由」
浅野は、大きく息を吐き出し、机に広げた過去の事件資料に目を落とした。古びた紙の匂いが鼻腔をくすぐる。犯罪心理学に関する専門書、過去の失踪事件の捜査報告書。それらを指先でなぞりながら、静かに呟いた。その声には、微かな焦燥が混じっていた。
「……犯人が捜索に参加する理由は、いくつもある。」
彼は、無意識のうちにペンのキャップをカチカチと開け閉めしている。その小さな音が、やけに大きく響く。机の上の資料を、まるで自分に言い聞かせるかのように、一つずつ整理していく。彼の眉間には、深い考えの皺が刻まれていた。
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● ① 疑われないため
「“一緒に探している”という印象を作ることで、犯人ではないと思わせる……か。」
浅野は、再びYYが涙ぐむ写真に目を向けた。電球の光を受けて、写真の中のYYの瞳が潤んで見える。その瞳の奥に、浅野は冷たい計算を見出そうとしていた。
「……もし、あれが“疑われないため”の涙だったら?」
胸の奥が、じわりと熱くなる。それは怒りにも似た、しかしもっと冷たく、どろりとした感情だった。手のひらに、じんわりと汗が滲む。浅野は、その感情を抑え込むように、ぎゅっと目を閉じた。
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● ② 捜査情報を得るため
「警察の動き、住民の噂、捜索範囲……現場に顔を出せば、自然と耳に入る。」
YYが、捜索活動中に大人たちの会話に耳を傾けていたという証言も、記憶に新しい。その様子を語る目撃者の声が、浅野の脳裏で鮮明に再生される。彼らは、警戒心なく子どもたちの前で、捜査の進捗や憶測を口にしていたことだろう。
「……情報を集めていた可能性もある。次の手を打つために、捜査の動きを探っていたとしたら?」
浅野は、自分の声が微かに震えていることに気づいた。それは、真実に近づく恐怖と、それを暴くことへの衝動が混じり合った、複雑な感情の表れだった。指先が、無意識に震えている。
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● ③ 遺体発見を遅らせるため
「捜索の方向性を、“さりげなく”別の場所へ誘導する。」
ビラ配りの場所の提案、捜索の声かけ、SNSでの拡散――。A.G.Oの活動記録が、その可能性を裏付けるように、浅野の頭の中で意味を持ち始める。
「子どもがやれば、誰も疑わない。純粋な善意だと、誰もが思い込む……。」
もし、YYが意図的に、美咲の遺体がある場所から目を逸らすように、捜索を誘導していたとしたら?浅野は、資料を握る手に思わず力を込めた。指の関節が白くなり、紙がしわくちゃになる。美咲の命が、その無邪気な顔の裏で弄ばれていたとしたら、許されない。血が沸騰するような怒りが、浅野の全身を駆け巡った。
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● ④ 罪悪感の処理
「“自分は悪くない”と思い込むために、捜索に参加する者もいる。」
浅野は、もう一度YYの涙を思い出した。あの涙は、本当に罪悪感からくるものだったのか。それとも、自らの内なる矛盾を解消するための、表面的な感情の吐露に過ぎなかったのか。彼は、ふと自分自身の過去の経験を思い出す。罪悪感に苛まれながらも、それを認められずに自らを欺く人間を、浅野は何度も見てきた。
「……演技か。それとも、自分自身を納得させるための自己催眠か。」
自分の声が、思った以上に冷たく、硬質に響いた。まるで、氷の塊が胸の奥で音を立てて砕けるような感覚だった。
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● ⑤ “演技”としての参加
「泣きながら捜索に参加する犯人も実在する。」
浅野の脳裏に、過去の事件の映像が鮮やかに浮かび上がる。テレビのニュースで見た、被害者の家族の隣で、人目をはばからず泣き崩れ、「早く見つかってほしい」と叫んでいた男。その男こそが、後に逮捕された犯人だった。その男の顔と、写真の中のYYの顔が、一瞬重なるような錯覚に陥る。
「……演技は、時に本物よりも強く、人を騙す力を持つ。見る者を深く信じ込ませるほどに。」
浅野は、自分の胸の奥がざわつくのを感じた。それは、人間の持つ恐ろしい闇に直面した時の、根源的な不安感と、そしてそれを暴かねばならないという刑事としての使命感の混じり合った、複雑な感情だった。彼は、静かに指先でこめかみを揉んだ。
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■ 他の失踪事件でも同じことが起きる
浅野は、机の上の資料をゆっくりと閉じた。その動きは重く、そして深かった。資料の表紙に書かれた「失踪事件における容疑者の心理と行動パターン」というタイトルが、彼の目に焼き付く。そこには、数多の事例が記録されていた。
失踪届を出す。ポスターを貼る。ボランティア捜索に参加する。家族の横で“心配だ”と言う。
これらは全て、“犯人がよく行う行動”として、犯罪心理学の文献に繰り返し記録されている。まるで、彼らが書かれた台本に従って動いているかのように。浅野は、数々の事件現場で目にしてきた光景を思い出し、深い溜息をついた。
「……YYが犯人だと言いたいわけじゃない。」
彼は、両手で顔を覆った。しかし、これほどまでの“嫌な一致”を、偶然で片付けることはできない。
だが、“可能性”は、確かにそこにあった。それは、見たくない真実の影のように、彼の胸を重く圧し続けていた。この事実に目を瞑れば、刑事として失格だ。しかし、この可能性を追えば、幼い少年を疑うという、倫理的な重荷がのしかかる。
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■ 浅野の無力感
浅野は、資料室の椅子に深く腰を下ろした。革張りの冷たい感触が、彼の疲弊しきった体を包み込む。彼の視線は、虚空をさまよった。
「……俺は、一体何をしているんだ。」
真相に近づこうとすればするほど、見えない巨大な手が捜査を阻む。これは上層部からの圧力なのか、それとももっと根深い何かなのか。追うべき人物がいても、上層部の判断で追えない。少年法の壁、保護者の意向、そして何よりも「子どもを疑う」ことへの社会的な反発。調べるべき団体があっても、外部からの政治的な圧力、あるいは権力を持つ者の介入によって、調べさせてもらえない。息苦しさが、喉の奥から込み上げてくる。まるで、巨大な泥沼にはまり込み、身動きが取れないような感覚だった。
浅野は、苛立ちと絶望を隠すことなく、机に額を押しつけた。冷たい木目の感触が、彼の熱くなった頭をわずかに冷やす。
「美咲……お前のために動きたいのに……どうして、こんなにも邪魔が入るんだ。」
声にならない声が、喉の奥で震えた。それは、怒りとも絶望ともつかない、途方もない無力感の呻きだった。彼の拳は、机の上で強く握り締められ、関節が白く浮き上がっていた。
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■ それでも、浅野は諦めない
しばらくして、浅野はゆっくりと顔を上げた。その顔は憔悴しきっていたが、目の奥には、静かで、しかし決して揺るがぬ光が宿っていた。それは、深く沈んだ海の底で、それでもきらめきを失わない一粒の砂のようだった。諦念と、それを打ち破る決意が、その瞳の中で複雑に混じり合っていた。
「……追えなくても、見えなくても、手が届かなくても。」
彼は、小さく、しかし確かな声で呟いた。その声には、再び燃え上がった闘志が宿っている。
浅野は、机の上の資料を一枚ずつ丁寧に揃えた。その手つきは、まるで誓いを立てるかのように、慎重で確固たるものだった。乱れた資料を整理するように、自身の心の混乱も鎮めていく。
「俺は、“隠されたもの”の形だけは掴んでみせる。それが、どんなに悍ましい形をしていても。」
証拠がなくても、捜査が止められても、真実に近づく道は必ずある。彼はそう信じていた。その信念だけが、この暗闇の中で彼を支える唯一の光だった。
浅野は立ち上がり、資料室の電気を消した。パチン、という乾いた音が、静寂に吸い込まれていく。一瞬の完全な闇の後、窓の外から漏れる街灯の光が、資料室のわずかな輪郭を浮かび上がらせた。暗闇の中で、彼の瞳だけが微かに光を宿していた。
「……この街の闇は深い。だが、必ず光を当ててやる。どんなに深く根を張った闇であっても。」
その声は、誰に届くこともなく、静かに夜の廊下へ溶けていった。彼の背後には、闇に沈んだ資料室の重い扉が閉まり、深い沈黙が残された。しかし、その沈黙の中にも、浅野の決して諦めない強い意志が、確かに響いていた。
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