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『可変戦闘機という名の欺瞞』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/14 📚 シリーズ: 第三格納庫は今日も修羅場 ―スーパーロボット大戦・整備班奮闘記― 📝 8,385文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

世界の危機に立ち向かう、数々のスーパーロボット。 νガンダム、マジンガーZ、ゲッターロボ、エヴァンゲリオン、バルキリー、勇者ロボ、そして各世界から集められた名機たち。 だが、彼らが戦場から帰ってくる場所には、英雄とは別の戦いが待っていた。 「フィン・ファンネルを投げ槍にするな!」 「ゲッターの部品が、また勝手に形を変えたぞ!」 「格納庫内で歌うな! 計測器が共鳴している!」 「他作品の武装を、面白そうという理由で取り付けるな!」 異なる技術、異なる規格、異なる常識。 機械、生命体、金属生命体、人格搭載ロボット、自己修復機、気合いで出力が上がる機体。 各作品の整備士、技術者、博士たちは、世界の垣根を越えて協力しながら、次々と持ち込まれる無理難題へ立ち向かう。 これは、世界を救う英雄たちの物語――ではない。 英雄が壊して帰ってきた機体を、夜通し直す者たちの物語である。 クロスオーバー作品ならではの技術格差や設定の違いを、整備現場から描く会話中心のコメディ二次創作。 第三格納庫では今日も、敵襲より先に整備班の怒声が響く。

本文

統合整備基準策定会議が崩壊する、三時間前。

第三格納庫の管制室に、未確認艦から入電があった。

『こちら、新統合軍所属試験部隊。着艦許可を求む』

管制官が識別情報を確認する。

モニターに映ったのは、航空機だった。

少なくとも、その時点では。

白と赤に塗られた前進翼機。

青い二本角を持つ可変戦闘機。

大型のスーパーパックを背負った機体。

そして、派手な赤色に塗られ、機体各部へスピーカーを搭載した正体不明の航空機。

榊清太郎は映像を見上げた。

「飛行機か」

その声には、久しく失われていた安堵があった。

翼がある。

吸気口がある。

ノズルがある。

人型でもなければ、生物でもなく、気合いで巨大化している様子もない。

整備という言葉が通用しそうな形をしていた。

シバシゲオも頷く。

「ようやく、まともな乗り物が来ましたねえ」

アストナージ・メドッソが端末を確認する。

「可変戦闘機、バルキリーか。航空機なら専門外だが、少なくとも部品が脈打つことはないだろう」

格納庫へ警告音が響いた。

先頭を飛んでいた白と赤の機体が減速し、主翼とエンジンブロックを折り曲げた。

機首が持ち上がる。

脚が生えた。

腕が出た。

航空機は着陸直前、人型へ変形した。

榊の顔から安堵が消えた。

「帰れ」

シゲが慌てて止める。

「まだ降りてもいませんよ!」

「飛行機が空中で人型になるような部隊を入れるな!」

続く機体は、完全な人型にはならなかった。

脚部だけを展開し、両腕を機体下部へ伸ばした中間形態で滑るように着地する。

榊は頭を抱えた。

「途中で諦めた形まであるのか」

通信機から若い女の声が届いた。

『ガウォーク形態です! 低速時の機動性と作業性を両立した、合理的な形態なんですよ!』

桃色の整備服を着たマキナ・中島が、VF-31ジークフリードのコックピット横から身を乗り出していた。

機体が停止すると、マキナは昇降ワイヤーも待たず、脚部から軽やかに飛び降りる。

「うわあっ! ここが混成部隊の格納庫!?」

目を輝かせ、周囲を見回す。

νガンダム。

エヴァンゲリオン初号機。

マジンガーZ。

ゲッターロボ。

イングラム一号機。

マキナは両手を胸元で握った。

「メカメカ天国!」

榊が即座に言った。

「地獄だ」

「この子がイングラムちゃん? 装甲の角張り方が硬派で可愛い!」

「ちゃん付けするな」

「こっちはマジンガー君! 胸の放熱板が大胆!」

「放熱板ではない! ブレストファイヤーじゃ!」

せわし博士が抗議する。

マキナは初号機を見上げた。

「この紫の子、ちょっと生っぽいですね」

初号機の露出した皮膚が、かすかに動いた。

マキナは笑顔のまま二歩下がった。

「この子だけ、後で紹介してください」

「賢明な判断だ」

アストナージが言った。

白と赤のYF-19から、二人の男が降りてきた。

先に降りたパイロット、イサム・ダイソンは格納庫内を見渡し、愉快そうに口笛を鳴らす。

その後ろから降りたヤン・ノイマンは、端末を見たまま怒鳴った。

「イサム!」

「着いた早々、何だよ」

「主翼の基部に亀裂が入っている!」

「着艦できただろ」

「着艦できたことと、壊れていないことは別です!」

ヤンは翼の下へ走り、亀裂を指さした。

「なぜ機体制限を解除した!」

「追いつけなかったから」

「誰に!」

イサムは顎で、後方の青いVF-31を示した。

「青い奴」

VF-31からハヤテ・インメルマンが降りてくる。

「俺は普通に飛んでただけだ」

「踊るように飛びやがって。面白そうだったから追った」

「空は競技場じゃないぞ!」

ヤンが叫ぶ。

榊はアストナージへ顔を向けた。

「飛行機の方がまともだと言ったのは誰だ」

「俺ではない」

「お前も同意した顔をしていた」

「顔まで責任を負わせるな」

その横で、イアン・ヴァスティがYF-19を観察していた。

「熱核反応エンジンで大気圏内外を飛び、人型へ変形するのか」

ヤンは少し誇らしげに頷いた。

「機体制御には高度なAI補助を使用しています。空力特性、推力偏向、変形時の姿勢制御をリアルタイムで――」

「リミッターを外せるのか?」

ロイド・アスプルンドが、いつの間にか隣へ立っていた。

ヤンの表情が固まる。

「なぜ最初にそこを聞くんです」

「外せるんだね」

「外しません」

イサムが親指を立てた。

「外せるぜ」

「あなたは黙っていてください!」

少し離れた場所では、ルカ・アンジェローニがVF-25メサイアの電子装備を展開していた。

無数の小型無人機が周囲を飛び、格納庫内の設備を測定している。

アストナージが眉をひそめた。

「その小さいのは何だ」

「ゴーストです。索敵、電子戦、情報収集に使います」

「自律兵器か?」

「制御下にあります」

「暴走したことは」

ルカは一瞬だけ黙った。

「……安全策は講じています」

「暴走したことがある奴の答えだな」

マキナはすでにランスロットの脚部へ潜り込んでいた。

「この車輪、面白い! 飛ばずに地面を高速移動するんだ!」

セシル・クルーミーが隣で説明する。

「ランドスピナーです。市街地での機動性を確保するための装備で――」

「バルキリーの脚に付けてみません?」

セシルは少し考えた。

「ガウォーク形態なら、有効かもしれません」

榊が二人の間へ割って入った。

「止めろ」

「まだ相談しているだけです」

「技術者が面白いと言って始めた相談は、必ず実物を作るところまで行く!」

ロイドが遠くから声を上げる。

「そのとおり!」

「お前は賛同するな!」

最後に、赤いVF-19改が着陸した。

着陸と同時に、格納庫内へ大音量のギターが響いた。

『俺の歌を聴けぇっ!』

整備員たちが一斉に耳を塞ぐ。

VF-19改はガウォーク形態へ変形し、翼下のスピーカーポッドを展開した。

榊が叫ぶ。

「格納庫内で武装を開くな!」

機体から降りてきた熱気バサラは、ギターを背負ったまま答える。

「武装じゃねえ。歌を届けるための物だ」

「兵器の翼に付いている物は、ひとまず武装として扱う!」

「歌は兵器じゃねえ!」

その後ろから、Dr.千葉が大量の測定器を抱えて現れた。

「いえ、歌エネルギーは対象の精神状態と生体反応に作用します。条件によっては、兵器以上の効果を――」

「では危険物だ!」

榊が即断した。

Dr.千葉は初号機を見上げる。

「素晴らしい。あの人造人間へ歌エネルギーを照射すれば、シンクロ率に変化が起きる可能性がある」

赤木リツコの声が背後から飛んだ。

「無許可の実験は認めません」

「科学の発展には検証が必要です!」

「検証対象が暴走した場合、あなたが止めるの?」

「歌で!」

「却下します」

バサラは初号機の前まで歩き、見上げた。

「こいつ、歌を聴いてねえな」

榊が眉を寄せる。

「寝ているのではないか」

「起きてるとか寝てるとかじゃねえ。心を閉じてやがる」

初号機の指先が、ほんのわずかに動いた。

整備員たちは全員、後ずさった。

バサラだけがギターを構える。

「よし。まずは一曲――」

リツコがバサラの襟首を掴んだ。

「外でやりなさい」

「歌に場所なんか関係ねえ!」

「ここには音圧で誤作動する試験機器が四百点あるの」

「だったらそいつらにも聴かせてやる!」

「機械は観客ではありません」

マキナが元気よく手を挙げた。

「機械にも心はあります!」

アストナージ、榊、イアンが同時にマキナを見る。

マキナは笑顔で続けた。

「比喩的な意味で!」

三人は少しだけ安心した。

「でも、たまに本当にあります!」

安心は即座に失われた。

ヤンは格納庫の整備設備を確認しながら尋ねた。

「可変戦闘機用の整備区画はどこですか」

榊が答える。

「ない」

「変形機構用の支持架台は?」

「ない」

「航空機用のエンジン整備設備は?」

「ない」

「では、どうやって整備を」

榊はνガンダム用の大型架台、イングラム用の移動足場、ランスロット用の小型クレーンを指さした。

「組み合わせて使え」

ヤンは絶句した。

マキナは喜んだ。

「わあ、現場合わせ!」

「喜ぶところではない!」

ルカが端末で寸法を計算する。

「VF-25をファイター形態で固定するなら、νガンダムの脚部架台を横倒しにして、イングラム用の支持具を四基追加すれば可能です」

アストナージが首を振る。

「νガンダムが出撃したらどうする」

「バトロイド形態で立たせます」

「整備中の機体を自立させるな」

マキナが提案する。

「ガウォークなら三点で支えられますよ」

榊が机を叩く。

「だから途中の形で妥協するな!」

マクロス勢の到着から、一時間後。

第三格納庫の整備分類表に、新たな項目が追加された。

人型機動兵器。

生体兵器。

自律変形兵器。

気合い駆動兵器。

航空機。

航空機兼人型機動兵器。

航空機兼人型機動兵器兼音響装置。

榊は最後の項目を見つめた。

「分類したことで、余計に分からなくなった」

ヤンが隣で頷く。

「バルキリーとは、そういう機体です」

「誇らしげに言うな」

格納庫の奥で、マキナとセシルがランドスピナーをVF-31の脚へ当てて寸法を測っていた。

ロイドはYF-19の制御プログラムを覗き込んでいる。

Dr.千葉はエヴァンゲリオン用スピーカーの設計図を描いていた。

バサラはマジンガーZの頭上に座り、ギターを鳴らしていた。

せわし博士は「光子力と歌エネルギーの共鳴」という題名の資料を読み始めている。

榊は深く息を吸った。

「全員、手を止めろ!」

誰も止めなかった。

マクロス勢は格納庫へ到着した。

そして、整備班が守ろうとしていた最後の常識は、三段変形しながら飛び去った。

『非承認兵装交換会』

統合整備基準策定会議が崩壊した直後。

整備責任者たちは第三格納庫へ走っていた。

先頭を走るイアン・ヴァスティが、格納庫の大型扉を蹴り開ける。

「刹那ぁっ! それは剣じゃない!」

中央作業区画では、ガンダムエクシアがウイングガンダムゼロのツインバスターライフルを両手で構えていた。

刹那・F・セイエイは、コックピット内で真剣に照準を調整している。

隣にはヒイロ・ユイが立っていた。

アストナージが叫ぶ。

「ヒイロ! なぜ渡した!」

「使用できる可能性があった」

「可能性で他人の機体に主砲を持たせるな!」

刹那の声が通信機から返る。

『この武器なら、より迅速に紛争を根絶できる』

イアンは頭を抱えた。

「エクシアは近接戦闘用だ! 機体の電力系統も照準システムも合っていない!」

『俺が合わせる』

「お前は機械規格ではない!」

その隣では、ガンダムデスサイズヘルのビームシザースを、ゲッター1が握っていた。

流竜馬が笑う。

『いいじゃねえか! ゲッタートマホークより長い!』

神隼人は冷静に観察していた。

『重量配分も悪くない』

アストナージが隼人を睨む。

「お前は止める側だろう!」

『使える物を試しているだけだ』

「それを止めるのが整備会議の参加者だ!」

格納庫の反対側では、マジンガーZがガンダムヘビーアームズのビームガトリングを装備していた。

兜甲児が上機嫌で銃身を回転させる。

『すげえ! 弾切れを気にしなくていい機関銃だ!』

トロワ・バートンが地上から見上げる。

「エネルギー供給が続けばな」

せわし博士が配線を確認した。

「光子力エネルギーを変換すれば撃てるかもしれん」

榊が博士を睨んだ。

「なぜ協力している!」

「科学者として、可能性を確かめたくてのう」

「さっきの会議で何を学んだ!」

「変換アダプターを作ることになった」

「決定事項を最悪の速度で実行するな!」

さらに奥。

ランスロットはVF-25用のスーパーパックを背負っていた。

枢木スザクが推進器を試験稼働させる。

ランドスピナーが床を滑り、背部ブースターが白煙を噴いた。

機体は前方へ高速移動し、そのまま整備資材の山へ突っ込んだ。

セシルが悲鳴を上げる。

「スザク君!」

資材の中から、スザクの声が返る。

『推力配分に問題があります』

ロイドは拍手した。

「分かったことが一つ増えたね」

榊はロイドへ詰め寄った。

「お前が付けたのか!」

「僕だけではないよ」

マキナがランスロットの足元から顔を出した。

「取り付けは私です!」

「嬉しそうに名乗るな!」

マキナは端末を見せる。

「ナイトメアフレームは軽いので、バルキリー用ブースターとの相性は良いと思ったんです。でも、姿勢制御用スラスターが足りませんね」

ラクシャータが煙管を揺らす。

「フロートユニットと併用すればいいんじゃないのぉ?」

セシルが考え込む。

「制御系を統合できれば……」

榊が叫ぶ。

「反省しろ! 考察を始めるな!」

νガンダムの背中には、VF-31用のフォールドクォーツ搭載コンテナが仮固定されていた。

アムロがコックピット内から通信する。

『サイコフレームとフォールドクォーツには、似た反応がある』

アストナージの顔色が変わった。

「外せ」

『まだ測定中だ』

「外せ!」

『人の意思を増幅する素材同士なら、干渉を確認する必要がある』

「お前まで技術者みたいなことを言うな! 自分で実験機に乗る技術者が一番危険なんだ!」

その横では、ルカが大量のゴーストを展開していた。

ゴーストの一機が、νガンダムのフィン・ファンネルへ接近する。

ルカが興奮気味に説明した。

「自律制御とサイコミュ誘導を統合すれば、操縦者の負荷を減らせます!」

アムロが答える。

『自律判断が介入すると、意図した動きから遅れる』

「予測アルゴリズムを調整します!」

アストナージが二人の間へ割り込んだ。

「失くしたファンネルの代わりを、勝手に無人機で埋めるな!」

ルカは小さく言った。

「同じような物かと……」

「大きさ以外、ほとんど違う!」

その時、大音量のギターが響いた。

全員が音の方向を見る。

熱気バサラのVF-19改が、エヴァンゲリオン初号機の肩へ巨大なスピーカーポッドを取り付けていた。

赤木リツコの眼鏡が、照明を反射した。

「誰の許可を得たの」

バサラはギターを鳴らしながら答える。

「許可を待ってたら、歌いたい時に歌えねえ」

「エヴァにスピーカーは必要ありません」

Dr.千葉が資料を掲げる。

「しかし、エヴァンゲリオンとパイロット間の同期に、歌エネルギーが作用する可能性は高い!」

伊吹マヤが端末を確認する。

「先ほどの試験音で、初号機の脳波パターンに変化が出ています!」

リツコが振り返る。

「試験したの?」

マヤは青ざめた。

「私ではありません!」

初号機のエントリープラグ内部から、碇シンジの声が聞こえた。

『僕が……少し聴いてみたいと言いました』

リツコは目を閉じた。

榊が同情するように肩へ手を置く。

「部下だけではなく、パイロットまで乗り気になると止められん」

「慰めになっていないわ」

バサラが叫ぶ。

「シンジ! 機械に歌わせるんじゃねえ! お前が歌え!」

『えっ』

「エヴァに乗ってる時だけが、お前の全部じゃねえだろ!」

初号機の肩に取り付けられたスピーカーから、ギター音が流れ始めた。

シンジは困惑したまま、小さく声を出した。

『残酷な――』

リツコが即座に通信を切った。

「その選曲は駄目」

榊が尋ねる。

「なぜだ」

「説明すると長くなるわ」

格納庫の端では、イングラム一号機がVF-1用のガンポッドを構えていた。

泉野明が楽しそうに照準を動かす。

『これ、リボルバーカノンより弾が多いです!』

シゲが足元で叫ぶ。

「野明さん、引き金には触らないでくださいよ!」

『安全装置は?』

「規格が違うので分かりません!」

『じゃあ、どれが引き金ですか?』

「触らないでと言ってるでしょう!」

榊が一号機の前へ走る。

「泉! 今すぐ置け!」

『でも、持ちやすいですよ』

「レイバーの手は、物を持てば壊れる可能性がある!」

『手って、持つためにあるんじゃないですか?』

榊は一瞬、言葉に詰まった。

「今は哲学をしている場合ではない!」

その上空を、VF-31がガウォーク形態で通過した。

両腕には、ランスロットのヴァリスと、ガンダムエクシアのGNソードを持っている。

ハヤテが通信する。

『この剣、ガウォークでも振れるぞ』

刹那が即座に反応した。

『返せ』

『今、お前はバスターライフルを持ってるだろ』

『GNソードはガンダムだ』

『会話になってないぞ』

マキナが地上から歓声を上げる。

「異作品装備の空中試験! データ取れました!」

ヤンが頭を抱える。

「なぜ試験飛行を許可した!」

「ハヤテが、ちょっと浮かせるだけって」

「パイロットの『ちょっと』を信用するな!」

その言葉に、格納庫内の整備責任者たちが一斉に頷いた。

イサムがYF-19のコックピットから顔を出す。

「何だよ。ちょっとくらいいいだろ」

ヤンは振り返った。

YF-19の翼下には、ウイングガンダムゼロの予備シールドが二枚取り付けられていた。

「あなたは何を付けているんです!」

「空力が変わって面白そうだから」

「今すぐ外してください!」

「一回飛んでから」

「飛ばせません!」

「じゃあ、滑走だけ」

「同じです!」

混乱の中心で、ノーマン・バーグだけが静かに紅茶を注いでいた。

その背後には、ビッグ・オー。

交換用の右腕として、マクロスクォーターの艦載砲が無理やり固定されている。

榊がカップを受け取りながら尋ねた。

「おい」

「はい」

「あれは何だ」

ノーマンはビッグ・オーを見上げた。

「ミスター・スミスが、交渉力の強化を希望されまして」

「お前まで参加したのか!」

「腕の修復には時間が必要です。使用可能な代替品を探すのは、整備士として自然な判断かと」

「戦艦の砲を腕にするな!」

ビッグ・オーの通信機から、ロジャー・スミスの声が響く。

『兵器の威力は、交渉開始前の説得力に影響する』

榊は紅茶を一気に飲んだ。

「お前の交渉は、最初から最後まで暴力だ!」

警報が鳴った。

敵部隊の接近。

出撃まで、十分。

整備責任者たちは動きを止めた。

格納庫には、本来の装備を失った機体と、他作品の兵装を抱えた機体が並んでいる。

イアンがエクシアを見上げる。

「十分で元に戻せるか?」

整備員が首を振った。

「変換アダプターを溶接しています。取り外しには二十分以上かかります!」

アストナージがνガンダムを見る。

「フォールドコンテナは」

「固定解除に十五分!」

榊がイングラムを指さす。

「ガンポッドは置くだけだろう!」

シゲが叫ぶ。

「指が食い込んで外れません!」

リツコが初号機を見る。

「スピーカーは」

マヤが答える。

「装甲の再生組織が固定具を取り込んでいます!」

リツコの顔が引きつった。

バサラが親指を立てる。

「気に入ったみたいだな!」

「あなたは黙って!」

出撃指令が繰り返される。

整備責任者たちは互いの顔を見た。

元へ戻す時間はない。

このまま出すしかない。

アストナージが低い声で言った。

「帰ってきたら、全員説教だ」

イアンが頷く。

「パイロットだけではない。手伝った技術者もだ」

榊が腕を組む。

「帰ってきた機体は、一機ずつ完全に元へ戻す」

リツコが初号機のスピーカーを見上げる。

「戻せればね」

出撃ゲートが開く。

最初に飛び出したのは、ツインバスターライフルを抱えたガンダムエクシア。

続いて、スーパーパックを背負ったランスロット。

ビームシザースを振り回すゲッター1。

ビームガトリングを装備したマジンガーZ。

フォールドクォーツを背負ったνガンダム。

VF-1用ガンポッドを両手で抱えるイングラム一号機。

巨大スピーカーを肩に載せたエヴァンゲリオン初号機。

艦載砲を腕にしたビッグ・オー。

最後に、熱気バサラのVF-19改が飛び立つ。

『武器なんか交換して喜んでんじゃねえ!』

バサラの歌声が戦場へ響いた。

『お前ら全員、俺の歌を聴けぇっ!』

榊は出撃していく機体を見送り、静かに呟いた。

「最もまともなことを言っている奴が、最もうるさい」

ヤンが隣で頷く。

「マクロスでは、よくあることです」

「慣れたくない文化だ」

十分後。

戦場から最初の報告が届いた。

ツインバスターライフルを撃ったエクシアが、反動で後方へ吹き飛んだ。

スーパーパック付きランスロットが、制御不能のまま敵陣を一周した。

ゲッター1のビームシザースが、なぜか巨大化した。

マジンガーZのビームガトリングは、光子力エネルギーを流した瞬間、光子力ガトリングへ変質した。

νガンダムのサイコフレームとフォールドクォーツが共鳴し、周囲の敵味方へ歌声が直接届き始めた。

初号機は肩のスピーカーを自ら増殖させた。

アストナージは報告書を閉じた。

「整備基準に、新しい禁止事項を追加する」

榊が端末を開く。

「何と書く」

アストナージは戦場の映像を見た。

武装も技術も世界観も混ざり合い、誰にも説明できない光を放っている。

「他作品の装備を、面白そうという理由で取り付けてはならない」

ヤンが付け加える。

「空力を試したい、も入れてください」

イアンが言う。

「紛争を根絶できそう、もだ」

リツコが眼鏡を直す。

「歌を聴かせたい、も追加して」

榊は入力を終えた。

禁止事項、全四項目。

その直後、戦場からマキナの通信が入る。

『ランドスピナーとガウォーク形態の相性、すっごく良かったです! 次は正式に試作しましょう!』

榊は端末を机へ伏せた。

「禁止事項は、読まれないためにあるのか」

第三格納庫に、答える者はいなかった。

全員、心当たりがあったからだ。

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TETORU

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