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『自己修復という名の無断改造』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/14 📚 シリーズ: 第三格納庫は今日も修羅場 ―スーパーロボット大戦・整備班奮闘記― 📝 6,938文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

世界の危機に立ち向かう、数々のスーパーロボット。 νガンダム、マジンガーZ、ゲッターロボ、エヴァンゲリオン、バルキリー、勇者ロボ、そして各世界から集められた名機たち。 だが、彼らが戦場から帰ってくる場所には、英雄とは別の戦いが待っていた。 「フィン・ファンネルを投げ槍にするな!」 「ゲッターの部品が、また勝手に形を変えたぞ!」 「格納庫内で歌うな! 計測器が共鳴している!」 「他作品の武装を、面白そうという理由で取り付けるな!」 異なる技術、異なる規格、異なる常識。 機械、生命体、金属生命体、人格搭載ロボット、自己修復機、気合いで出力が上がる機体。 各作品の整備士、技術者、博士たちは、世界の垣根を越えて協力しながら、次々と持ち込まれる無理難題へ立ち向かう。 これは、世界を救う英雄たちの物語――ではない。 英雄が壊して帰ってきた機体を、夜通し直す者たちの物語である。 クロスオーバー作品ならではの技術格差や設定の違いを、整備現場から描く会話中心のコメディ二次創作。 第三格納庫では今日も、敵襲より先に整備班の怒声が響く。

本文

第三格納庫の整備予定表は、ついに壁一面を埋め尽くしていた。

赤。

赤。

赤。

どの機体も、修理期限超過を示す赤色だった。

νガンダム、左腕駆動系。

ランスロット、推進制御系。

イングラム一号機、右脚全交換。

マジンガーZ、冷却系洗浄。

エヴァンゲリオン初号機、肩部装甲再生待ち。

ゲッターロボ、分類不能。

ウイングガンダムゼロ、主砲返却待ち。

ガンダムエクシア、主砲使用による全身関節再調整。

ビッグ・オー、右腕。

VF-19改、整備妨害。

最後の一項を見た熱気バサラが、ギターを鳴らした。

「俺は壊してねえ!」

榊清太郎が赤いペンで項目を二重線にする。

そして、書き直した。

VF-19改、騒音による整備遅延。

「悪化してんじゃねえか!」

「事実を書いただけだ」

整備予定表の前には、各作品の整備責任者が集まっていた。

アストナージ・メドッソ。

イアン・ヴァスティ。

赤木リツコ。

リーロン・リットナー。

マキナ・中島。

ヤン・ノイマン。

ロイド・アスプルンド。

シバシゲオ。

そして、新たに配属された三人。

フリーデン整備班長、キッド・サルサミル。

ナデシコ整備班、ウリバタケ・セイヤ。

ネオジャパン代表、レイン・ミカムラ。

キッドは壁一面の予定表を見上げ、目を輝かせた。

「すげえ! こんだけ機体があれば、部品を組み合わせて一機くらい新型を作れるな!」

榊が即座に振り返る。

「作らんでいい」

「余った部品だけでさ」

「余っている部品などない。所属不明の部品があるだけだ」

格納庫の隅には、持ち主の分からない部品が山積みにされていた。

巨大な歯車。

紫色の装甲片。

赤い羽根。

人間の手ほどの大きさがあるボルト。

脈打つ金属片。

シゲが山の前に立ち、札を下げる。

『触るな』

脈打つ金属片が札を飲み込んだ。

シゲは新しい札を用意した。

『本当に触るな』

ウリバタケは工具箱を机に置き、予定表を眺めた。

「で、整備班の人数は?」

アストナージが答える。

「機体数の三分の一だ」

「工作艦は?」

「ない」

「自動修理装置は?」

「ない」

「じゃあ根性で?」

榊の表情が険しくなる。

「その言葉を整備班で使うな」

リーロンが微笑んだ。

「螺旋力なら貸せるわよ」

「貸すな」

キッドが予定表を指さした。

「自分で直る奴から後回しにすればいいじゃん」

リツコが答える。

「初号機の生体組織は再生するけれど、装甲や拘束具は直らないわ」

「中身が直るなら楽じゃないか」

「中身が直った結果、壊れた装甲を内側から押し広げることがある」

キッドは少し考えた。

「……楽じゃないな」

「学習が早い」

レインが初号機の資料を読む。

「生体組織の再生には、かなりのエネルギーが必要なのね」

リツコが頷く。

「加えて、パイロットとの同期状態にも左右されるわ」

「精神状態で修復速度が変わるの?」

「変わる可能性がある」

榊が顔を覆った。

「修理にまで感情が要るのか」

ロイドが嬉しそうに言う。

「素敵じゃないか。機体に優しく話しかければ、早く直るかもしれない」

「お前が話しかけたら悪化する」

「試してみないと分からないよ」

「試すな」

その時、格納庫の扉が開いた。

白い機体が、ゆっくりと入ってくる。

頭部に二本の髭を持つ、∀ガンダム。

その足元を、小柄な老人が端末を片手に歩いていた。

シド・ムンザだった。

「遅くなった。機体の調査に時間がかかってな」

∀ガンダムは所定位置に立ち、静かに停止した。

外装に目立った損傷はない。

キッドがすぐに駆け寄る。

「こいつ、戦闘に出てたよな? 傷が全然ないぞ!」

シドは機体の脚を叩いた。

「ナノマシンによる自己修復だ」

格納庫が静まり返った。

全員が、∀ガンダムを見上げる。

その視線には、羨望があった。

希望があった。

そして、整備員特有の疑念があった。

アストナージが慎重に尋ねる。

「どの程度まで直る」

「装甲、駆動系、内部回路。時間と材料があれば、かなりの範囲を修復する」

イアンが一歩近づく。

「部品交換は?」

「損傷が小さければ不要だ」

榊が歩み寄る。

「調整は?」

「自動で行われる」

「清掃は?」

「異物も分解する」

「点検は?」

「自己診断がある」

榊はしばらく黙っていた。

「……嫌な機体だ」

シゲが目を丸くする。

「楽できるんですよ?」

「自分で直ったと言い張る機械ほど信用できん」

シドは苦笑した。

「正しい反応だ。私も完全には信用しておらん」

「どこが問題なんだ」

「何を基準に元の状態と判断しているのか、分からない」

全員の顔から、希望が少し消えた。

シドは続ける。

「ナノマシンは機体を修復する。だが、我々が施した改造まで故障と判断して元へ戻す場合がある」

キッドが∀ガンダムの脚へ顔を近づけた。

「じゃあ、パワーアップしても勝手に消されるのか?」

「場合による」

「面白え!」

「面白くない」

榊が言った。

ウリバタケは端末を取り出し、∀ガンダムを撮影し始めた。

「自己修復ナノマシンか。ナデシコの設備へ応用できれば、整備時間を大幅に減らせるな」

イアンが制止する。

「仕組みも分からん物を持ち込むな」

「調べるだけだよ」

アストナージがウリバタケを見る。

「技術者の『調べるだけ』は、パイロットの『少し試す』と同じくらい信用できん」

ヤンが強く頷いた。

「全面的に同意します」

マキナが手を挙げる。

「少量だけ採取して、バルキリーの装甲に使うのは?」

「駄目だ」

「まだ最後まで言ってません!」

「最後まで聞いたら許可するとでも思ったか?」

一方、ロイドはすでに∀ガンダムの足元へ小型採取器を置いていた。

セシルがいないため、誰も止める者がいない。

榊が採取器を蹴り飛ばす。

「何をしている」

「自然に落ちたナノマシンを集めようかと」

「お前は盗みを科学的観測と言い換えるな!」

その時だった。

格納庫内の警報が鳴った。

汚染警報。

隔壁が降り始める。

リツコが端末を確認する。

「微小機械反応を検出。発生源は∀ガンダム周辺」

シドが顔を上げる。

「おかしい。通常は機体外へ拡散しないはずだ」

格納庫の床を、銀色の粉が流れていた。

∀ガンダムの足元から広がり、床材の亀裂へ入り込んでいく。

キッドがしゃがみ込む。

「こいつら、床を直してるぞ」

亀裂が塞がった。

削れていた塗装が再生し、新品のような光沢を取り戻す。

シゲが感動した。

「便利じゃないですか!」

銀色の粉は、次にイングラム一号機の足元へ到達した。

損傷していた右脚へ這い上がる。

野明がコックピットから声を上げる。

『一号機が、くすぐったいって言ってます!』

榊が叫ぶ。

「機械の感想を代弁するな!」

イングラムの失われた右脚が、ゆっくりと再生し始めた。

金属粉が骨格を作り、装甲を形成する。

整備員たちから歓声が上がった。

「直ってる!」

「脚が戻ってるぞ!」

「設計図を読み取ったのか?」

榊だけは、黙って再生する脚を見ていた。

やがて右脚が完成する。

左右対称。

新品同様。

しかし、シゲが首を傾げた。

「班長」

「何だ」

「この脚、旧型です」

榊の眉が動いた。

「何だと」

「一号機は現場改修で膝関節を強化してます。でも再生したのは、納入時の初期仕様です」

再生した右脚が一歩踏み出す。

関節から、カタカタと音がした。

榊が怒鳴る。

「戻せ! 壊れやすい時代へ戻すな!」

ナノマシンに怒鳴っても反応はなかった。

銀色の粉は、次にランスロットへ移動した。

マキナが声を上げる。

「ランドスピナーが直ります!」

破損していた車輪が再生する。

しかし、増設されていた姿勢制御スラスターが、逆に分解されていく。

ロイドが目を輝かせた。

「興味深い。純正状態を正常と判断している」

榊が振り返る。

「嬉しそうに分析している場合か!」

「純正は美しいからね」

「では、お前の試作装備を全部消してもらえ!」

ロイドの顔から笑みが消えた。

「止めよう」

「急に現実的になるな!」

ナノマシンは、格納庫全体へ広がっていく。

νガンダムの損傷した左腕。

ガンダムエクシアの関節。

VF-31の翼。

マジンガーZの冷却配管。

次々と銀色の粉が取り付いていく。

アストナージがνガンダムの整備記録を確認する。

「待て。サイコフレーム増設部分が分解されている!」

イアンも叫ぶ。

「エクシアの現地改修用補強材が消えている!」

マキナがVF-31を見上げる。

「ランドスピナー用の取り付け部がなくなってる!」

ヤンが答える。

「それは消えていい!」

「せっかく作ったのに!」

「作るなと言われていたでしょう!」

マジンガーZから、せわし博士の悲鳴が上がる。

「光子力ガトリング用の変換回路が消えた!」

榊が叫び返す。

「それも消えていい!」

「研究成果じゃぞ!」

「事故の残骸だ!」

銀色の粉は、初号機の足元へ到達した。

リツコの顔色が変わる。

「隔離して!」

床から伸びたナノマシンが、初号機の脚へ触れる。

初号機の紫色の装甲が、白く変色し始めた。

マヤが端末を見て叫ぶ。

「装甲材を再構成しています!」

リツコが画面を見る。

「設計情報を読み取れていない。別の機体として修復しようとしているわ!」

初号機の脚部が、∀ガンダムの装甲に似た白色へ変わっていく。

榊が呟く。

「他人の機体を、自分と同じ形に直しているのか」

シドが青ざめた。

「ナノマシン同士の通信範囲が拡大している。修復対象の基準が、∀ガンダム自身に固定されたのかもしれん」

キッドが目を輝かせる。

「じゃあ、このまま放っておけば全部ターンエーになるのか?」

「嬉しそうに言うな!」

リツコが緊急停止コードを入力する。

反応はない。

初号機の足元から、生体組織が装甲の隙間を押し広げた。

再生した肉がナノマシンを取り込み、紫色と白色の装甲が混ざり始める。

マヤの声が震える。

「初号機側の自己修復機能が、ナノマシンを組織の一部として利用しています」

シドが後ずさる。

「それは、まずい」

リツコが尋ねる。

「どの程度?」

「分からん」

「便利な言葉ね」

初号機の右肩から、∀ガンダムの髭に似た白い突起が生えた。

格納庫が静まり返る。

バサラが初号機を見上げる。

「似合わねえな」

「感想は求めていないわ」

さらに悪いことが起きた。

床の隅に置かれていた、脈打つ金属片。

ゲッターロボから剥がれ落ちた、分類不能部品。

銀色のナノマシンがそれを包み込んだ。

部品が大きく脈打つ。

シゲが後ずさる。

「札、食べた奴です」

金属片が膨張した。

銀色の粉と融合し、複数の小さな脚を生やして動き始める。

アストナージが叫ぶ。

「隔離しろ!」

動く部品は床を走り、部品棚へ飛び込んだ。

棚に積まれていた予備部品が、一斉に動き始める。

νガンダムの関節部品に、ゲッターのような翼が生える。

ランスロットの予備車輪が、足を生やして走り出す。

VF-25のガンポッドが、勝手にバトロイド形態へ変形しようとして折れた。

マキナが悲鳴を上げる。

「ガンポッドちゃん!」

ヤンが叫ぶ。

「ちゃん付けしている場合ではありません!」

榊は飛び回る部品を見ながら、静かに工具を手に取った。

大型の金槌だった。

「全部、叩き潰す」

シドが止める。

「待て! ナノマシンは衝撃を損傷と判断して、さらに増殖する!」

榊は金槌を下ろした。

「嫌な機体だ」

「最初に言ったでしょう!」

「私の直感が正しかったことを喜べん!」

レインが初号機とゲッター部品を交互に見ていた。

「自己修復同士が干渉している。ナノマシンは機械を、初号機は生体組織を、ゲッター線は進化を優先している」

リーロンが笑みを消す。

「三つの答えが、同じ物を奪い合っているのね」

「止める方法は?」

「修復する必要がない状態だと、認識させるしかない」

アストナージが言う。

「どうやって」

シドは∀ガンダムを見上げた。

「完全な設計情報を与える」

「全機体分か?」

「そうだ」

榊が予定表を見た。

数十機。

それぞれ違う技術体系。

設計図が存在しない機体もある。

機密指定された機体もある。

パイロット本人しか分からない機体もある。

「無理だ」

キッドが端末を掲げた。

「外見だけなら、三次元スキャンでいける!」

イアンが反論する。

「内部構造が分からん」

ウリバタケが工具箱を開く。

「分解して調べよう」

全員がウリバタケを見る。

「冗談だよ」

「顔が本気だったぞ」

レインが言う。

「完全な設計図でなくても、各整備システムの診断データを統合すれば、現在の正常状態を教えられるかもしれない」

ヤンが頷く。

「バルキリーの自己診断データを基準形式へ変換します」

イアンも端末を開く。

「ガンダムの整備履歴を出す」

リツコが言う。

「エヴァの生体情報は、機械系統とは分離して送るわ」

榊がシゲを見る。

「イングラムの最新改修記録を出せ」

「紙です」

「何?」

「最新の現場改修、班長が端末へ入力してません」

榊の顔が固まった。

「メモはある」

「どこです?」

「私の机だ」

「どの紙です?」

榊は答えなかった。

机には大量の書類が積まれていた。

アストナージが肩へ手を置く。

「後で整理しろ」

「今言うな」

整備員たちは一斉に動き出した。

各機体の診断データ。

改修履歴。

部品交換記録。

現場判断の補強。

パイロットが勝手に行った調整。

すべてが統合端末へ集められていく。

問題は、記録の形式がまったく違うことだった。

地球連邦軍形式。

新統合軍形式。

ネルフ独自形式。

ブリタニア軍形式。

特車二課の紙。

光子力研究所の手書き図面。

ゲッターチームの記憶。

リーロンが画面を見る。

「ゲッターの整備履歴、空白ね」

隼人が答える。

「動かなければ叩く。動けば出撃する」

「履歴とは呼べないわね」

「だが事実だ」

ウリバタケが変換プログラムを組む。

キッドが欠落部分を推測する。

ヤンが検証する。

イアンが怒鳴る。

ロイドが勝手に最適化する。

アストナージがロイドの変更を元へ戻す。

マキナが画面へ可愛い機体アイコンを追加する。

ヤンが削除する。

マキナがもう一度追加する。

その間にも、ナノマシンは修復を続けていた。

イングラムの左脚まで旧型へ戻った。

ランスロットの塗装が純白へ戻った。

マジンガーZの胸部へ、∀ガンダムの髭模様が浮かんだ。

初号機は肩だけ白くなった。

ゲッター部品は、机の下で小型の∀ガンダムらしき形へ成長していた。

バサラがそれを拾い上げる。

「こいつ、歌を聴いてるぜ」

小型の∀ガンダムが口のような部分を開いた。

甲高い音を発する。

リツコが端末を見る。

「歌ではないわ。自己診断信号よ」

「歌だ」

「違う」

「魂が乗ってる」

「乗っていない」

統合データが完成した。

シドが∀ガンダムへ送信する。

機体の目が光った。

銀色の粉の動きが止まる。

格納庫内に、長い沈黙が落ちた。

初号機の肩から白い装甲が剥がれ、元の紫色へ戻る。

イングラムの脚が、現場改修後の形へ再構成される。

ランスロットの追加スラスターが復元する。

マジンガーZの髭模様が消える。

飛び回っていた部品が床へ落ちる。

整備員たちから、安堵の息が漏れた。

榊は再生した一号機の膝を調べる。

「強化材も入っている」

シゲが笑った。

「これ、上手く使えば本当に便利ですね」

榊は膝関節を何度も動かした。

異音はない。

精度も高い。

現場で施した改修まで、完全に再現されている。

「……認めたくはないがな」

アストナージがνガンダムを確認する。

左腕は直っている。

増設したサイコフレームも元どおり。

イアンもエクシアの診断結果を見る。

「修復完了。誤差なし」

マキナが目を輝かせる。

「ナノマシンちゃん、正式採用しましょう!」

榊が即座に答える。

「却下だ」

「今、便利だって認めましたよね?」

「便利と安全は別だ」

シドが深く頷く。

「賢明だ」

その時、ロイドが端末を見ながら首を傾げた。

「一つ、問題がある」

全員が身構える。

「統合データの中に、登録されていない機体が一機ある」

画面に、小さな機体の設計情報が表示された。

∀ガンダムに似ている。

ゲッターロボにも似ている。

肩はエヴァンゲリオン。

脚にはランドスピナー。

背中にはフィン・ファンネル。

胸にはマジンガーZの放熱板。

頭部にはマクロス系の可変翼。

武装はガンポッド。

機体名称欄。

『自己修復試作機・分類不能』

榊がゆっくりと机の下を覗いた。

バサラが先ほど持っていた、小型の機体がいない。

格納庫の換気口が開いていた。

シゲが呟く。

「逃げましたね」

キッドの目が輝いた。

「探そう! あれ、絶対面白いぞ!」

榊がキッドの襟首を掴む。

「お前は動くな」

格納庫内へ、緊急放送が流れた。

『艦内通路にて、小型未確認機を発見。清掃ロボット三機を吸収し、現在も成長中』

全員が換気口を見る。

続報。

『未確認機、食堂へ侵入』

榊の顔色が変わった。

「食堂?」

ノーマンが静かに立ち上がる。

「厨房設備には、触れさせられません」

初めて、ノーマンの声に怒気が混じった。

さらに続報。

『未確認機、業務用炊飯器を取り込みました』

ノーマンが走り出した。

誰よりも速かった。

「炊飯器は、兵器の部品ではありません!」

整備責任者たちが後を追う。

キッドも榊の手を振りほどいて走る。

「炊飯器とゲッター線か! 何ができるんだろうな!」

「米だ!」

榊が叫ぶ。

「米以外を作るな!」

第三格納庫の予定表に、新たな項目が追加された。

小型未確認自己修復機。

修理担当、未定。

捕獲担当、全員。

備考。

自己修復機能を持つ機体を、同じ格納庫へ置いてはならない。

特に、ゲッター線と接触させないこと。

その下へ、アストナージが一文を書き足した。

ロイドに採取器を持たせないこと。

ロイドは不満そうに眺めた。

「僕だけ名指しかい?」

榊は赤いペンの蓋を閉じた。

「お前だけは、規則を現象ではなく人物で書いた方が早い」

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TETORU

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