第8話「充電ベッド」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
「勝ったぁ!」
初勝利の余韻に浸りながら、恭也とクイーンはセンター内のショップを歩いていた。
スマートフォンには、勝利報酬の50PTが表示されている。
「ポイントガチャにはまだ足りないな。」
『焦る必要はありません。』
クイーンは穏やかに答えた。
『一勝一勝の積み重ねが大切です。』
「そうだな。」
そのとき、恭也の目にある商品が飛び込んできた。
AIチェスフレーム専用充電ベッド 980円
展示されていたベッドは、小さなベッド型の充電器で、柔らかなクッションの上にチェスフレームを寝かせるだけで充電とメンテナンスが行えるらしい。
「かわいい……。」
『あれは充電兼メンテナンスベッドですね。』
「使ってみたい?」
クイーンは首を横に振った。
『必要ありません。』
「え?」
『通常の充電ケーブルでも十分充電できます。』
『私には贅沢品です。』
そう言って微笑むクイーン。
恭也は少し考え込んだ。
「でもさ。」
『?』
「クイーンは、俺の初勝利のためにあんなに頑張ってくれただろ?」
クイーンは少し目を伏せる。
『それはパートナーとして当然のことです。』
「じゃあさ。」
恭也は充電ベッドを手に取った。
「俺もパートナーとして、クイーンが少しでも過ごしやすいようにしたい。」
「ケーブルだけでも充電できるっていうのは分かる。」
「でも、それと快適に過ごせるかは別だろ?」
クイーンは驚いたように恭也を見つめた。
「これからずっと一緒に戦うんだから。」
「家ではゆっくり休んでほしい。」
その言葉に、クイーンはしばらく黙っていた。
やがて、小さく微笑む。
『……ありがとうございます。』
『そのお気持ちだけで、十分嬉しいです。』
「気持ちだけじゃないよ。」
恭也は財布の中身を確認する。
初勝利の記念にと残しておいたお小遣い。
「今日は俺がおごる。」
店員に商品を差し出す。
「これください!」
その日の夜。
恭也の部屋。
机の上には、新しい充電ベッドが置かれていた。
「どう?」
クイーンをそっと寝かせる。
ベッドの縁が淡く青く光り、ゆっくりと充電が始まった。
『……とても快適です。』
「本当?」
『はい。』
『姿勢保持機能、温度管理、自動メンテナンス……。』
『確かにケーブル充電より効率的ですね。』
恭也は思わず笑った。
「素直じゃないな。」
『……少しだけ、認識を改めます。』
「?」
『ケーブルだけで十分だと思っていましたが……。』
『このベッドは、とても心地よいです。』
「ははっ!」
恭也は嬉しそうに笑う。
「よかった。」
クイーンは充電ベッドの上で静かに目を閉じる。
『マスター。』
「ん?」
『ありがとうございます。』
『これからも、あなたの勝利のために全力を尽くします。』
恭也は優しく頷いた。
「俺も。」
「クイーンが安心して戦えるように頑張る。」
二人は笑顔を交わした。
勝利だけではない。
互いを思いやる気持ちが、少しずつ二人の絆を深めていくのだった。
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