第9話「学校デビュー」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
翌朝。
「よし、忘れ物なし!」
ランドセル……ではなく、中学生らしい通学バッグを肩に掛けた恭也は、机の上のクイーンへ声をかけた。
「クイーン、学校に行こう。」
『はい、マスター。』
クイーンは充電ベッドから起き上がり、小さく一礼した。
専用ケースに入ると、ケースの透明カバー越しに恭也を見上げる。
「学校にも連れて行っていいんだよな?」
『はい。』
『チェスフレームの携帯は認められています。』
『授業中も、静かにしていれば問題ありません。』
「よかった。」
二人は並んで学校へ向かった。
教室。
「おはよう、神崎!」
「おはよう!」
クラスメイトも、それぞれ自分のチェスフレームを机の上に置いている。
ポーンやナイト、小型のサポートユニットなど種類はさまざまだ。
「みんな普通に連れて来てるんだな。」
『一般的な光景です。』
クイーンは小声で答えた。
ホームルームが始まる。
先生が教壇から教室を見回した。
「チェスフレームを持ってきている者は、授業中は必ずマナーモードにしておくように。」
「返事!」
「はーい!」
恭也もクイーンの設定を確認する。
『マナーモードへ移行します。』
小さくそう告げると、クイーンは静かに目を閉じた。
それからは一切話さない。
授業が始まると、教室には先生の声だけが響いた。
「これなら全然問題ないな。」
昼休み。
マナーモードを解除したクイーンが静かに話しかける。
『学校生活も興味深いものですね。』
「だろ?」
「でも授業中は退屈だったろ?」
『いいえ。』
『教科書の内容を拝見していました。』
「え?」
『歴史は大変興味深い学問です。』
「勉強熱心なんだな。」
クイーンは少しだけ微笑んだ。
『マスターのお役に立ちたいので。』
「ありがとう。でも……。」
恭也は少し真面目な顔になる。
「カンニングはしないからな?」
『もちろんです。』
『そのような行為はルール違反です。』
数日後。
朝のホームルーム。
先生がプリントを配りながら言った。
「今日は数学の小テストを行う。」
教室がざわつく。
先生は続けた。
「テスト中は、チェスフレームの同伴は禁止。」
「全員、前の保管ロッカーへ預けるように。」
教室前方には、AI機体専用のロッカーが設置されていた。
恭也はクイーンを手に取る。
「少しだけ留守番だ。」
『承知しました。』
『試験では、私の知識を利用することはできません。』
「当然だよ。」
「自分の力でやる。」
クイーンは優しく微笑む。
『マスターなら大丈夫です。』
『どうか落ち着いて臨んでください。』
「うん!」
恭也はロッカーへクイーンを預け、教室へ戻る。
今日の戦いは、ロボットではなく自分自身の戦いだった。
そしてロッカーの中では、クイーンが静かに目を閉じ、主の帰りを待っていた。
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