第14話「冷静な一手」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
二連勝を飾った恭也は、満足そうに対戦台を降りた。
「よし!」
「今日は調子がいいな!」
『おめでとうございます、マスター。』
クイーンも穏やかに微笑む。
「もう一試合くらいできそうだな。」
その時だった。
「へぇ。」
背後から声がした。
振り返ると、高校生くらいの少年が腕を組んで立っていた。
「お前が最近連勝してるビギナーか。」
周囲の空気が少し変わる。
近くのプレイヤーが小声で話していた。
「また来た……。」
「あいつ、連戦した相手ばっかり狙うんだ。」
「疲れて判断力が落ちたところを狙うって評判だよ。」
恭也もその視線に気付く。
「何ですか?」
少年は笑う。
「一戦どう?」
「今終わったばっかりなんで……。」
恭也がやんわり断ろうとすると、少年は肩をすくめた。
「なんだ。」
「逃げるのか?」
その一言で空気が張り詰めた。
恭也が返事に迷っていると──
『その勝負、お受けします。』
「クイーン!?」
『マスターが逃げたと思われるのは、私は望みません。』
「でも……。」
『ご安心ください。』
クイーンは静かに言った。
『必ず勝利いたします。』
対戦開始。
相手はナイト。
素早い動きと二本の短剣を武器にした近接型だった。
START!!
試合開始直後からナイトが猛攻を仕掛ける。
ガキン!
ガキン!
短剣が何度も盾を叩く。
『くっ……!』
クイーンも剣で応戦するが、攻撃が空回りしていた。
「クイーン!」
恭也は画面を見つめる。
(いつもの動きじゃない。)
ナイトは素早い。
だが、それ以上にクイーンが焦っているように見えた。
相手が笑う。
「ほらほら!」
「そんなもんか!」
連続攻撃。
クイーンは反撃しようとして、さらに隙を作ってしまう。
「違う……。」
恭也は思わず叫んだ。
「クイーン!」
『はい!』
「落ち着いて!」
「いつもみたいに相手を見て!」
「焦る必要なんてない!」
その声に、クイーンの動きが止まる。
一瞬だけ目を閉じる。
『……申し訳ありません。』
『私は勝たなければならないという思いが強すぎました。』
深く息を整えるように、静かに構え直す。
『冷静に……。』
『相手を観察します。』
ナイトが再び飛び込んでくる。
今度のクイーンは動かなかった。
相手の足運び。
腕の角度。
短剣を振る癖。
『理解しました。』
『右から二連撃の後、左足を軸に回転します。』
「えっ!?」
ナイトがその通りに動く。
クイーンは半歩だけ横へ。
短剣は空を切った。
「しまっ……!」
相手が体勢を崩す。
『今です。』
盾で短剣を弾き飛ばし、
ガードソードを一直線に突き出す。
「チェック!」
恭也の声が響く。
『チェックメイト。』
剣先がナイトのコアへ届いた。
WINNER 神崎恭也
センター内から拍手が起こる。
「勝った!」
恭也は大きく息を吐いた。
対戦を終えたクイーンが、一礼する。
『マスター。』
『先ほどは申し訳ありませんでした。』
「謝ることないよ。」
恭也は笑顔で首を振る。
「俺も焦ってた。」
「でも、クイーンが落ち着いたら絶対勝てるって信じてた。」
クイーンは優しく微笑む。
『ありがとうございます。』
『これからも、どのような相手であっても冷静さを忘れません。』
遠くで敗れた少年は悔しそうに舌打ちし、その場を去っていった。
それを見送った恭也は、小さく頷く。
「強さって、装備だけじゃないんだな。」
『はい。』
『冷静さもまた、大切な武器です。』
二人は並んで対戦台を後にした。
また一つ、勝利とともに大切なことを学びながら。
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