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昔々、秋祭りの話

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/20 📚 シリーズ: 彼方のラブレター 📝 2,332文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

それは、彼方から届いた、ちょっと不思議な物語。ショートショート

本文

昔々、あるところに、秋になると賑わいを見せる神社がありました。

おじいさんとおばあさんは、秋になると、そこで開かれる秋祭りに出かけていくのを楽しみにしていました。

その日も、夕暮れ時に連れ立って歩いていくと、参道の入り口で、一人の旅人が提灯の灯りを見上げて、立ち尽くしていました。

「あんた、祭りは初めてかね」

おじいさんが声をかけると、旅人は振り返りました。

「……あの灯りが、揺れています。光が揺れているのに、壊れていないんですね」

おばあさんは笑いました。

「あれは、蝋燭の灯りじゃよ。風で、揺れるんじゃ」

「揺れると、見えにくくなりませんか」

おじいさんは提灯を指差しました。

「揺れるから、ええんじゃ」

旅人はその灯りに、そっと手をかざしました。

「……光なのに、温かいです」

おばあさんは微笑みました。

「人が灯す光は、温度があるんじゃよ」

旅人はその言葉を、じっと繰り返すように呟きました。

「温度が、ある……」

三人は参道を歩き始めました。両脇にはいくつもの屋台が並び、湯気と煙があたりに立ち込めています。

旅人は鼻をひくつかせました。

「甘い匂いとしょっぱい匂いが同時にします」

おばあさんは微笑みました。

「祭りは、匂いで始まるんじゃよ」

「別々の匂いが、混ざっても、いいんですか」

「混ざるのが、祭りの匂いじゃ」

そのとき、遠くから太鼓の音が響いてきました。ドン、ドン、という重い音が、地面から伝わってくるようでした。

旅人は思わず自分の胸に手を当てました。

「……音が、体の中まで入ってきます」

おじいさんは頷きました。

「祭りの音は、耳じゃなくて腹で聞くんじゃ」

「腹で、聞く……」

旅人はしばらく立ち止まり、太鼓の音が体に響くのを、じっと確かめていました。

参道を進んでいくと、屋台の一つから、香ばしい匂いが漂ってきました。焼きとうもろこしの屋台です。

おじいさんが一本買い、旅人に手渡しました。

「食べてみなされ」

旅人は端をかじり、目を見開きました。

「……外は焦げているのに、中は甘いです」

「そうじゃ。醤油をかけて、焼くんじゃよ」

次に立ち寄ったのは、りんご飴の屋台でした。真っ赤な飴に包まれたりんごが、串に刺さって並んでいます。

旅人は不思議そうに見つめました。

「飴なのに、果物が入っているんですか」

おばあさんは笑いました。

「りんごを、飴でくるんであるんじゃよ」

旅人は恐る恐る一口かじりました。パリッという音のあと、甘い飴と、りんごの酸味が広がります。

「……硬いところと、みずみずしいところが、両方あります」

「それが、りんご飴じゃ」

大判焼きの屋台では、旅人は焼きたての一つを両手で持ち、その熱さに驚きました。

「……持っているだけで、熱いですね」

「そうじゃ。ふうふうしながら食べるんじゃよ」

半分に割ると、中から餡がとろりと出てきました。

「……中に、何か詰まっているとは、思いませんでした」

「見た目だけじゃ、わからんもんも、あるんじゃよ」

じゃがバターの屋台では、湯気の立つじゃがいもに、バターがとろけていくのを、旅人はじっと見つめていました。

「バターが、溶けていきます」

「熱いうちに、絡めるのが、うまいんじゃ」

一口食べると、旅人はほう、と息を漏らしました。

「……ただのじゃがいもだと、思っていました」

「祭りの屋台は、ただのもんを、ちょっとええもんにするのが、腕の見せどころじゃ」

歩いているうちに、大勢の人とすれ違い、時折、見知らぬ人と目が合いました。旅人が戸惑いながらも小さく微笑むと、相手も気さくに笑い返してくれました。

「……名前も知らないのに、笑い返してくれました」

おばあさんは頷きました。

「祭りの日は、みんなちょっとだけ親戚になるんじゃよ」

旅人はその言葉を、繰り返すように呟きました。

「ちょっとだけ、親戚……」

境内まで来ると、太鼓の音が一段と大きく響いていました。旅人はその音に合わせて、自分の胸が小さく震えるのを感じていました。

「わたしのところには、こういう、揺れる灯りも、混ざり合う匂いも、体に響く音も、あまりありません。すべて、一定に調整されています」

おじいさんは頷きました。

「一定なんは、安心じゃろうがのう」

旅人は頷きました。

「はい。ですが……」

旅人は手の中に残った、焼きとうもろこしの串を見つめました。

「今日食べたものは、どれも、少しずつ、思っていたのと違いました。それが、なんだか、楽しかったです」

おばあさんは微笑みました。

「揺れたり、混ざったり、体に響いたりするのが、祭りなんじゃよ」

やがて夜が更け、屋台の主人たちが、一つ、また一つと、道具を片付け始めました。木箱を重ねる音や、鉄板を洗う水音が、静かになった境内に響きます。

旅人はその音に、じっと耳を澄ませていました。

「……片付ける音が、少し寂しいです」

おばあさんは微笑みました。

「祭りは、終わるから思い出になるんじゃよ」

旅人はその言葉を、繰り返すように呟きました。

「終わるから、思い出になる……」

提灯の灯りも、一つ、また一つと消えていきました。

旅人は参道の入り口で立ち止まり、静かに頭を下げました。

「今日は、ありがとうございました」

「なんの。ええ祭りになったじゃろう」

旅人は最後に残った提灯の灯りを、もう一度振り返りました。

「……この揺れる灯りも、悪くないと思いました」

そう言うと、旅人は夜の道の向こうへ、静かに歩いていきました。

おじいさんとおばあさんは、旅人の後ろ姿が見えなくなるまで、その場に立って見送っていました。

やがて、おばあさんが最後の提灯を見上げながら言いました。

「今年も、ええ祭りじゃったのう」

おじいさんも頷きました。

「来年も、あの子が来るとええのう」

二人は顔を見合わせて微笑み、夜道を、ゆっくりと家路についたのでした。

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JJ

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