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養鶏家『新作落語』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 帰ってきました~貴方へのラブレター~ 📝 2,045文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

オムニバス 職業短編集(お好きな所からお読みください)

本文

養鶏家 | 小説投稿サイト「あいぺん」

あの話、実は落語にもしてみました

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養鶏家『新作落語』

(ぽんと膝を打ち、扇子をパッと開いて)

えー、本日はお運びいただきまして、ありがとうございます。

……昔から、勇者と申しますと、剣を持って魔王を倒す、これが相場でございます。ところが今日日(きょうび)は、勇者もいろいろおりまして。中には、剣の代わりに温度計を握って、異世界へ乗り込んだ男もいる、というんですから、いやはや恐れ入りやした。

(一拍置いて)

さる王国に、天から一人の男が降ってまいりました。名を、佐藤の純。

王様も家臣も、さぞかし強い勇者様がと胸を躍らせておりましたら、この純、剣も魔法も使えない。かわりに得意なのが、鶏の世話。

「あの、日本で養鶏場をやっておりまして」

「よ、養鶏場……?」

王様、椅子からずり落ちそうになりましたが、そこは背に腹は代えられない。とりあえず鶏小屋を任せてみますってえと、これが半年で卵不足解消。二年で兵糧改善。四年で魔王軍の進軍速度が半分に。

「痩せた兵より、蛋白質たっぷりの兵の方が強い」

これだけの理屈で、国が持ち直しましてね。人々はいつしかこの男を「卵聖人」と呼ぶようになった。純の方は、

「もうちょっと、現場の人間らしい呼び名はないんですかね」

と不満顔でございます。

(軽く扇子を叩いて)

そんな純の元へ、ある日、王都中央広場に運ばれてきましたのが、高さ三メートル、青銅色の殻に稲妻の模様、百年に一度という天空竜の聖なる卵。

学者は色めき立つ、王様は鼻息も荒い。ところが純だけは、腕組みしたまま、ひとこと。

「温度、足りないですね」

広場中、水を打ったように静まり返る。

「な、何だと」

「湿度も足りません。巣材も悪い」

宮廷魔導士が声を荒げます。

「貴様!これは天空竜の聖卵だぞ!」

「卵は卵です。相手が竜でも、やるべきことは変わりません」

純は大真面目でございます。

(間)

その日から、純は寝袋片手に卵の隣で寝泊まり。

「勇者殿、そこまでなさるのですか」

「生き物ですから。鼓動を近くで感じてないと、見落とす変化もあります」

「感動しました」

「あと、割れたら中身が気になる。どんな姿で出てくるか、今から楽しみで」

「本音が出ましたな」

二十日目の夜、ついに殻にひび。王様も姫様も固唾を飲んで見守る中、卵が割れる。

出てきたのは、意外なほど小さな、青い竜の子。

丸い金色の目で純を見上げると、長靴によじ登り、指をペロリ。

「守護竜様だ!」「かわいい!」

広場中、大歓声。純はその竜を持ち上げて、腹をポンと押す。

「空腹ですね」

「わかるのですか!」

「鳴き方で。言葉は通じなくても、何を求めてるかは伝わってきます」

(少し声を落として)

それから純の一日は、朝は鶏舎、昼は出荷、夕方から竜の世話。竜はよく食べる男でしてね、小魚、肉、果物、なんでも来い。だが一番好きなのが――卵。

茹で卵は殻ごと、目玉焼きは丸飲み、卵焼きを見れば羽をばたつかせて寄ってくる。

「共食いでは」騎士団長、青い顔。

「種類が違います。美味いもの食べて育つ。生き物として、これほど健全なことはないでしょう?」

純は涼しい顔でございます。

(膝を打って)

竜は育ち、牛ほどの大きさに。空も飛ぶ、火も吐く。それでいて甘えん坊、純の姿が見えないと倉庫を壊して探し回る始末。

王国の民は恐れおののく。ところが純だけは、

「待て」

その一言で竜は座る。

「よし」

尻尾を振る。王様、涙を流して、

「なぜ勇者殿にだけ懐くのだ」

「最初に餌やったからでは」

「単純!」

(サゲに向けて、ゆっくりと)

十五年目、魔王軍との最終決戦。純は竜の背に乗り、空から火を浴びせ、城壁を砕く。魔王が叫びます。

「なぜだ!なぜ竜が人間につく!」

「世話したからです」

魔王はそのまま踏まれましてね。

戦は終わり、王様は城と財宝を差し出しますが、純は首を振る。

「帰還でお願いします。俺がいなきゃ始まらない場所が、あっちにあるんです」

送還の光に包まれる純に、竜が寂しげに「ピィ……」

「大丈夫だ。立派な守護竜として、この国を頼んだぞ。……あ、それと、貝殻食え。骨が強くなる」

(扇子をパチンと閉じて)

気がつきゃ純、日本の鶏舎に立っておりました。スマホを見ると、十秒しか経っていない。

家に帰れば、女房が台所から顔を出す。

「遅いよ」

「少し遠くまで。一生忘れられないような」

「また鶏と話してた?」

「まさか。何を求めてるか、ちょっとわかるだけだ」

食卓には親子丼。純は思わず笑う。異世界の珍味も竜の宴も、この味には敵わない。

翌朝、鶏舎の集卵ケージ。ふと奥を見ますってえと、白い卵に紛れて、ひとつだけ――

高さ十センチ、青銅色、稲妻模様の卵が一つ。

純はそれをじっと見つめて、ひとこと。

「……温度、足りないですね」

女房の声が聞こえます。

「純さーん、朝ごはんできたよー」

「すぐ行く! あと、強力な孵卵器、あれ、ア◎ゾンで頼んどいてくれ!」

(深々と一礼)

窓の外、青い空に、龍の形の雲が一つ、ゆっくり流れておりました。

お後がよろしいようで。

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JJ

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