第2話『サナちゃん』
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
「ここの煮込み美味しいですね!よく来るんですか?」半個室のボックス席。モツ煮込みの椀を抱えた早苗が、上機嫌に声を上げる。「……あの、虫壁さん……」
本文
「ここの煮込み美味しいですね! よく来るんですか?」
半個室のボックス席。モツ煮込みの椀を抱えた早苗が、上機嫌に声を上げる。
「……あの、虫壁さん……」
「早苗って呼んでください。サナとかサナちゃんだともっといいです。あたしも有紗さんって呼びますから」
「虫壁さん……いくら人気がないって言っても、ああいう場で、その……」
どう伝えたらいいものか、言葉がつっかえて出てこない。
有紗は、マスクの隙間からハイボールをすする。
あの後、駐車場でいきなりホテルに誘ってきた早苗を引っ張るようにして、有紗は近くの居酒屋に転がり込んだ。
日勤帯の職員は大体退勤した後だ。駐車場を通るのは出勤してくる夜勤職員くらいなものだったが、人に聞かれていたらというプレッシャーに耐えきれなかったのだ。
「ごめんなさい! いきなりホテルは早かったですよね! まだ手も繋いでないのに!」
勢いのまま大声で頭を下げた早苗に、隣のボックスの客が驚いたように視線を向ける。
「虫壁さん!」
この子は……本当に――
「有紗さん、有紗さん? 起きてます? 大丈夫ですか?」
「お酒結構弱いんですね。新しい一面」
「そんなベロベロで帰るんですか? 明日は日曜日じゃないですか。もっと一緒にいたいです。小説の話とか、聞かせて欲しいです」
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