第2話『サナちゃん』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/3 📚 シリーズ: 見て、見ないで 📝 533文字 ✅ 全年齢

あらすじ

「ここの煮込み美味しいですね!よく来るんですか?」半個室のボックス席。モツ煮込みの椀を抱えた早苗が、上機嫌に声を上げる。「……あの、虫壁さん……」

本文

「ここの煮込み美味しいですね! よく来るんですか?」

半個室のボックス席。モツ煮込みの椀を抱えた早苗が、上機嫌に声を上げる。

「……あの、虫壁さん……」

「早苗って呼んでください。サナとかサナちゃんだともっといいです。あたしも有紗さんって呼びますから」

「虫壁さん……いくら人気がないって言っても、ああいう場で、その……」

どう伝えたらいいものか、言葉がつっかえて出てこない。

有紗は、マスクの隙間からハイボールをすする。

あの後、駐車場でいきなりホテルに誘ってきた早苗を引っ張るようにして、有紗は近くの居酒屋に転がり込んだ。

日勤帯の職員は大体退勤した後だ。駐車場を通るのは出勤してくる夜勤職員くらいなものだったが、人に聞かれていたらというプレッシャーに耐えきれなかったのだ。

「ごめんなさい! いきなりホテルは早かったですよね! まだ手も繋いでないのに!」

勢いのまま大声で頭を下げた早苗に、隣のボックスの客が驚いたように視線を向ける。

「虫壁さん!」

この子は……本当に――

「有紗さん、有紗さん? 起きてます? 大丈夫ですか?」

「お酒結構弱いんですね。新しい一面」

「そんなベロベロで帰るんですか? 明日は日曜日じゃないですか。もっと一緒にいたいです。小説の話とか、聞かせて欲しいです」

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作者について

彩華 じゅん

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