第3話 知らない部屋

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/3 📚 シリーズ: 見て、見ないで 📝 936文字 ✅ 全年齢

あらすじ

翌朝。夢うつつで目を開けた有紗の視界に入ったのは、知らない部屋の光景だった。「あれ……?私……」自分の家とは違う柔軟剤の匂いがする。

本文

翌朝。夢うつつで目を開けた有紗の視界に入ったのは、知らない部屋の光景だった。

「あれ……? 私……」

自分の家とは違う柔軟剤の匂いがする。

ぬくぬくとした布団に包まれながら、有紗はぼんやりと頭を回す。

夕べは早苗と居酒屋に行って、軽く食事して、それから――

「……どこ?」

ギシ……ベッドがきしむ。

彼女が起き上がって辺りを見渡すと、化粧品が満載のローテーブルや、服やバッグがたくさんかけられているラックが目に入る。

窓にはレトロなカーテンがかかっていて、同じくレトロな壁掛け時計が九時を指している。ここはどうやら女性の部屋らしい。

――なんだか、苦しい。気がする。

胸に持っていこうとした手に目を落とすと、見覚えのないモコモコのパーカーが着せられているのに気づいた。

そして、いつも顔を覆っているマスクの感触が、ない。

「やだ……なんで……」

咄嗟に口元を押さえた時、隣でもそもそと布団が動いた。ハッと横を見ると、ピンク色の掛布団から茶色いボブの頭が覗いているのが見えた。

「虫壁……さん?」

布団を引っぺがして肩をゆする。だるだるのジャージに身を包んだ彼女は、「ん~」と不満げな声を上げながら寒そうに身を縮めた。

「ちょっと、起きてください。ここどこですか?」

「ん? おはようございます……早起きですね」

「もう九時です。私、どうしてここに……?」

「覚えてませんか? も~、有紗さん寝かしてくれなくて……」

けだるげに言った早苗に、有紗は「はぁ!?」と声を上げる。

「へ、変なこと言わないでください!」

「思い出してくださいよ。あの後田鎖さん酔っ払っちゃって、お家分かんないから仕方なくうちに……」

「な、何かしましたか? 私……」

口元を押さえたまま、早苗の言葉を遮るように詰め寄る。

「何かって……ほんとに覚えてないんです? 」

「う、嘘……そんな……」

早苗の態度に、最悪の想像が有紗の頭をよぎった。

見られた? 触れられた? 侵食、された?

「帰ります」

パーカーを脱ぎ捨てる。

ベッドサイドに畳まれていたコートを身につけた有紗は、カバンを雑に掴んで正面に見える玄関に歩き出した。

「ええ!? せっかくの休みじゃないですか。デートしましょうよ」

「どうして……あなたは!」

これ以上ここにいたら、頭がおかしくなりそうだった。

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作者について

彩華 じゅん

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