第3話 知らない部屋
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
翌朝。夢うつつで目を開けた有紗の視界に入ったのは、知らない部屋の光景だった。「あれ……?私……」自分の家とは違う柔軟剤の匂いがする。
本文
翌朝。夢うつつで目を開けた有紗の視界に入ったのは、知らない部屋の光景だった。
「あれ……? 私……」
自分の家とは違う柔軟剤の匂いがする。
ぬくぬくとした布団に包まれながら、有紗はぼんやりと頭を回す。
夕べは早苗と居酒屋に行って、軽く食事して、それから――
「……どこ?」
ギシ……ベッドがきしむ。
彼女が起き上がって辺りを見渡すと、化粧品が満載のローテーブルや、服やバッグがたくさんかけられているラックが目に入る。
窓にはレトロなカーテンがかかっていて、同じくレトロな壁掛け時計が九時を指している。ここはどうやら女性の部屋らしい。
――なんだか、苦しい。気がする。
胸に持っていこうとした手に目を落とすと、見覚えのないモコモコのパーカーが着せられているのに気づいた。
そして、いつも顔を覆っているマスクの感触が、ない。
「やだ……なんで……」
咄嗟に口元を押さえた時、隣でもそもそと布団が動いた。ハッと横を見ると、ピンク色の掛布団から茶色いボブの頭が覗いているのが見えた。
「虫壁……さん?」
布団を引っぺがして肩をゆする。だるだるのジャージに身を包んだ彼女は、「ん~」と不満げな声を上げながら寒そうに身を縮めた。
「ちょっと、起きてください。ここどこですか?」
「ん? おはようございます……早起きですね」
「もう九時です。私、どうしてここに……?」
「覚えてませんか? も~、有紗さん寝かしてくれなくて……」
けだるげに言った早苗に、有紗は「はぁ!?」と声を上げる。
「へ、変なこと言わないでください!」
「思い出してくださいよ。あの後田鎖さん酔っ払っちゃって、お家分かんないから仕方なくうちに……」
「な、何かしましたか? 私……」
口元を押さえたまま、早苗の言葉を遮るように詰め寄る。
「何かって……ほんとに覚えてないんです? 」
「う、嘘……そんな……」
早苗の態度に、最悪の想像が有紗の頭をよぎった。
見られた? 触れられた? 侵食、された?
「帰ります」
パーカーを脱ぎ捨てる。
ベッドサイドに畳まれていたコートを身につけた有紗は、カバンを雑に掴んで正面に見える玄関に歩き出した。
「ええ!? せっかくの休みじゃないですか。デートしましょうよ」
「どうして……あなたは!」
これ以上ここにいたら、頭がおかしくなりそうだった。