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第22話 一触即発の睨み合い

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/27 📚 シリーズ: 区役所のハズレ勇者は定時で帰りたい~能力が地味だと笑われた公務員、実は空間操作を駆使して世界を救ってしまう~ 📝 3,379文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

異世界と東京が繋がって35年。区役所「異世界住民課」で働く天野勇は、定時退庁を愛する平凡な公務員。だがある日、テロ事件に巻き込まれ、うっかり「勇者」に選ばれてしまう!  発現した能力は、空間をつなぎ合わせるだけの地味なもの。世間からは「ハズレ勇者」と哂われるが……実は空間操作を駆使した常識破りの最強スキルだった!?  コンビニスイーツ中毒のエルフ聖騎士アイリスと共に、勇は世界の危機と“残業”に立ち向かう! 「僕はただ、定時で帰ってアニメを見たいだけなのに!」  オタク公務員が二つの世界を繋ぐ、現代×異世界ファンタジー! ※本作品は「カクヨム」「あいぺん」にて同時掲載しています。

本文

「嘘、でしょう……?」

 インカムの向こうで、千代田が息を呑む気配がリアルに伝わってきた。

 僕とアイリスの視線の先――新宿ゲートの制御タワーと融合し、サイボーグとして強制起動させられた魔王から、ドス黒い紫色の波動が同心円状に幾重にも広がっていく。

 それは単なる魔力の暴風ではなかった。波動が通り過ぎるたび、建物がベキベキと音を立てて歪んでいくのだ。

「アマノ殿、足元を見ろ! 道路が、道路が消えていくぞ!?」

 アイリスが悲鳴に近い声を上げた。僕たちが踏みしめていたアスファルトの路面が、まるで蜃気楼のようにブレたかと思うと、次の瞬間には中世欧風の石畳へと換わっていた。

 かと思えば、その数十センチ隣は元のコンクリートのままで、その境界線から火花のような空間の歪みがパチパチと弾けている。見上げれば、超高層ビルのガラス壁に、見たこともない巨大な城壁の影が二重露光のように重なって映し出されていた。

「千代田! スクリーンセーバーがバグったなんてレベルじゃないぞ、これ!  一体何が起きてる!?」

「最悪よ。サイボーグ魔王の核がゲートのシステムを完全にオーバーライドしたわ。出力が大きすぎて、ゲートが本来保っているはずの二つの世界の距離を維持できなくなってるの! 今、新宿とレイノスティアの空間が、同じ座標に無理やり重なり合おうとしてる!」

「重なり合うって……もし完全に重なったらどうなるんだ?」

「最終的には両方の空間ごと木っ端微塵に弾け飛んで、跡形もなく消滅する。タイムリミットは……もってあと数時間程度ね」

 千代田の宣告に、僕は背筋が凍るのを感じた。

 それはつまり、僕がせっせと通っているお気に入りのアニメショップも、お取り寄せ中だった限定フィギュアも、明日食べるはずだったコンビニの新作スイーツも、すべてがこの世から消えてなくなることを意味している。

「冗談じゃない。そんな打ち切り漫画の最終回みたいな強引な終わり方なんて!」

「アマノ殿、何をブツブツと言っているのだ! あの禍々しい鉄屑を今すぐ止めねば、我が故郷もろとも全員があの世行きなのだろう!?」

 アイリスが精霊剣をキィンと鳴らし、鋭い視線でサイボーグ魔王を睨みつける。しかし、その魔王の周囲には、新宿一帯の魔導電力を吸い上げて形成された、おぞましい密度の複合防壁が光り輝いていた。

 僕たちの目の前では、レイノス社の自動迎撃ドローンがなおも増殖し、さらにゲートの割れ目から、魔王の残滓に引き寄せられた野良の魔獣たちまでが溢れ出し始めていた。

「ターゲット、いまだ健在。排除フェーズを継続する」

 機械的な音声と共に、ドローンが一斉にガトリング魔導砲を起動させる。

 それだけではない。サイボーグ魔王の胸部に埋め込まれた巨大な砲身が、不気味な紫色の光をチャージし始めていた。

 あの規格外の砲撃がこの狭い新宿の路地裏で放たれたら、僕の空間接続で受け流せるキャパを確実に超える。

「アイリス、正面突破は無理だ! 一旦、あのビルの影に――」

 僕が叫び、右手を掲げて退路の空間を繋ごうとした、その時だった。

 突如として、新宿の夜空を切り裂くように、目も眩むような巨大な光の矢が数条、サイボーグ魔王の頭上から降り注いだ。

「ドガガガガガァンッ!!!」

 凄まじい爆音と共に、僕たちの前方に展開していたドローンの群れが、一瞬にして光の塵へと還っていく。それは火薬兵器ではない。純粋で、かつ圧倒的な質量を持った高位の神聖魔術の直撃だった。

「何だ……!? 援軍か!?」

 アイリスが目を見開いて上空を見上げる。

 歪んだ空間の向こう側、本来ならまだそこにあるはずのない、中世欧風の城壁の幻影――その上空から、純白のペガサスに跨った、セレステリア王国の聖騎士団が隊列を組んで突入してくるのが見えた。

 彼らは手にした魔導槍から、次々と光の弾幕をサイボーグ魔王へと叩き込んでいる。

「おお! あれは聖セレステリア騎士団! なぜここに!?」

「アイリス。あっち側も見てくれ」

 音を立てて崩れかけたビルの向こう側から、今度は地鳴りのようなエンジン音が響いてきた。

 現れたのは、陸上自衛隊の最新鋭装甲車と、大型の魔導キャノンを搭載した対魔獣用特別車両だった。

 彼らは一斉に車から飛び出すと、道路に重機関銃を設置し、ゲートから溢れ出そうとする魔獣たちに向けて一斉射撃を開始した。

「なるほど、これならいけるかもしれないな。これだけの戦力が一斉にあの鉄屑を叩けば――」

 僕がそう言いかけた瞬間、インカムから千代田の悲鳴のような通信が再び割り込んできた。

「ちょっと天野! 冗談でしょ!? 自衛隊とセレステリア軍の無線を傍受してるんだけど、これ、完全に最悪の展開よ!」

「最悪って何がだよ? ちゃんと共闘して魔王を攻撃してるじゃないか」

「違うのよ! お互いに相手が魔王を呼び出したと思い込んでるの!」

「……は?」

 思わず、間抜けな声が出た。

「自衛隊の司令部は『異世界の主戦派貴族が、魔王を復活させ、東京を侵略しようとしている』って判断したのよ! 逆にセレステリア側は『日本が魔王の遺骸を使って禁忌のサイバネティクス兵器を作り、セレステリアを支配しようとしている』って疑ってる! 今、彼らが魔王を攻撃しようとしてるのは、世界を守るためじゃなくて、相手の秘密兵器を破壊するためよ!」

「嘘だろ!?」

 僕は天を仰ぎたくなった。レイノス社とベルモント伯爵が裏で結託しているとも知らず、二つの世界の軍隊は、相手の宣戦布告だと受け止めてしまっているのだ。

 実際、上空ではペガサスを駆る騎士が、地上の自衛隊の装甲車をギロリと睨みつけ、自衛隊の戦車もまた砲口を騎士団に向けて砲撃の準備を整えている。

 お互いが互いを疑い、一触即発の睨み合い。サイボーグ魔王という共通の敵を前にしながら、その実、両軍の銃口はいつでもお互いに向けられる状態だった。

「なんてことだ……。これじゃあ、魔王を倒す前に、勘違い同士で戦争が始まっちゃうじゃないか」

「そんな……! 我らとこの世界の人たちが積み上げてきた信頼が、このような誤解で壊されてたまるか!」

 アイリスが悔しそうに拳を握りしめる。だが、現場の兵士たちにはどうすることもできない。

 彼らはただ、それぞれの国の上層部から下される命令に従っているだけなのだから。そして、その上層部たちは今頃、事実関係の確認と政治的な思惑の探り合いで、完全にパニックに陥っているはずだ。

「このままだと世界が滅ぶ……か」

 僕は、ぽつりと呟いた。

 このまま両軍が疑心暗鬼に陥り、政治的な硬直によってまともな連携が取れなければ、サイボーグ魔王を倒すことなんて絶対にできない。そして数時間後には、二つの世界が消滅する。

 右手の聖痕が、ドクドクと激しく脈打つ。

お前は何のためにその力を持っているんだと、問いかけられているかのように。

「アイリス」

「む、何だ、アマノ殿」

「公務員の三大義務って知ってるかい?」

「知らん! 騎士の心得なら言えるが!」

 僕はフッと自嘲気味に笑った。

「職務専念義務、憲法および法令遵守義務、そして上司の職務上の命令に従う義務だ」

「それがどうしたのだ?」

「今から僕は、その全部を盛大に破ることにするよ」

 僕は顔を上げ、赤黒い雷光を放ち続ける新宿ゲートの、その真ん中を指差した。

「公務員として行動してたら、僕たちの日常がなくなっちゃう。だったら、命令を無視してでも、僕たち二人であの中枢に直接殴り込みをかけるしかない」

「……っ! 命令違反は、公務員にとって大罪なのであろう!?」

「懲戒免職になるのと、世界がなくなるの、どっちがマシかって話だよ。それに――」

 僕は右手を突き出し、目の前の空間と魔導ケーブルが複雑に絡み合うサイボーグ魔王の胸部へと続く空間をつなげた。

「僕の名前は『勇者』からとった『勇』だからね。親父たちへのリスペクトも込めて、たまには名前通りに行動するのも悪くない」

 アイリスは驚いたように目を見張った後、その透き通るようなブルーの瞳を最高の歓喜に輝かせ、いたずらっぽく微笑んだ。

「よく言った、アマノ殿! その不敵な言葉、聖騎士アイリス・ラインハルト、確かに聞き届けた! よし、二人で世界を繋ぎ止めるぞ!」

「ああ。さっさとあいつを片付けよう」

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作者について

ふっせ

初めて小説を書いてみました。 文章を書くこと自体が初めてなので、拙いところや誤字脱字なども多々あるかと思います。 それでも、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

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