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第23話 通信、切りますね

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/30 📚 シリーズ: 区役所のハズレ勇者は定時で帰りたい~能力が地味だと笑われた公務員、実は空間操作を駆使して世界を救ってしまう~ 📝 2,320文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

異世界と東京が繋がって35年。区役所「異世界住民課」で働く天野勇は、定時退庁を愛する平凡な公務員。だがある日、テロ事件に巻き込まれ、うっかり「勇者」に選ばれてしまう!  発現した能力は、空間をつなぎ合わせるだけの地味なもの。世間からは「ハズレ勇者」と哂われるが……実は空間操作を駆使した常識破りの最強スキルだった!?  コンビニスイーツ中毒のエルフ聖騎士アイリスと共に、勇は世界の危機と“残業”に立ち向かう! 「僕はただ、定時で帰ってアニメを見たいだけなのに!」  オタク公務員が二つの世界を繋ぐ、現代×異世界ファンタジー! ※本作品は「カクヨム」「あいぺん」にて同時掲載しています。

本文

 新宿の空を覆う赤黒い瘴気の下で、信じられないほど奇妙で、そして最悪な静寂が落ちていた。

 目の前には、新宿ゲートの中枢タワーと融合し、今まさにこの世界を崩壊させようとエネルギーを溜め込んでいるサイボーグ魔王がそびえ立っている。

 その巨体から放たれるプレッシャーは、35年前の災厄を知らない僕でさえ、本能的な恐怖で足がすくみそうになるほどだ。

 しかし、その絶望的なバケモノを前にして、両世界の精鋭部隊は完全に動きを止めていた。

 十字路を封鎖するように展開した陸上自衛隊の装甲車部隊。彼らの魔導キャノンや重機関銃の砲口は、サイボーグ魔王ではなく、上空を旋回する異世界の聖騎士団に向けられている。

 一方、純白のペガサスに跨る聖セレステリア騎士団の面々も、その手に握った魔導槍の狙いを、眼下の自衛隊員たちへと定めていた。

 突然インカムから、神原室長の酷く嗄れた声が響いた。

「天野! アイリス! お前たち、まだ退避していないのか!」

「すみません隊長、ちょっと通信機の調子が悪くて、退避命令がよく聞こえなかったもので」

「ふざけるな、回線をハッキングしておいて何が通信不良だ……!」

 神原室長は呆れて深く息を吐き出してから、最新の状況を続けた。

「今、榊特務部長が総理官邸で、状況把握と今後の対応を上層部と会議中だ」

「やっぱり、あの魔王はセレステリア王国が仕向けたと思ってるんですか」

「ああ。日本政府は『セレステリア王国の侵略だ』と疑っている。セレステリア王国側は『日本の兵器実験だ』と考えてるみたいだが」

「もし自衛隊が一発でも撃てば、極度の緊張状態にある聖騎士団はそれを自分たちへの攻撃と確信し反撃するだろう。逆もまた然りだ。今は双方が睨み合い、けん制しあってる状態に陥ってる」

「こんなところでにらみ合ってる場合じゃないのに!」

「だから今、官邸で政治的決断の会議をしているとこだ」

「で、その会議が終わる頃には、東京と向こうの王都が衝突して消滅してるってわけですね。35年かけて築き上げた両世界の信頼が、あいつらの計画でここまでもろく崩れるとは、呆れて笑うしかないな」

「天野、あいつらっていったい誰のことだ!?」

「レイノス・インダストリー社とベルモント伯爵です!」

 想像していなかった名前を突然聞いて驚く神原室長。

「いったいどういう事だ天野! 魔王はセレステリア王国が仕組んだんじゃないのか?」

「違いますよ! やつらは結託して、魔王をサイボーグにして復活させ、二つの世界を破壊する計画を企ててるんです!」

「それはほんとか!?」

 僕は冷静を装いながらも、内心の苛立ちを抑えきれずにいた。

「アマノ殿! 通信を代われ!」

 アイリスが強引に僕の耳元へ顔を寄せ、インカムに向かって叫んだ。

「神原室長! 私から直接、上空の騎士団長に説明して誤解を解きます! 私がラインハルト家の名にかけて説得すれば、彼らとて分かってくれるはずだ!」

「ダメだアイリス! お前は今、日本側の組織である境界防衛室に所属している! 今のお前が不用意に動けば、セレステリア王国側から裏切り者として扱われ、最悪の場合、お前自身が双方の標的になる!」

「なっ……! 私は、世界を守るために剣を振るう聖騎士だぞ!? 誰が裏切るものか!」

「分かっている! だが、それが政治なんだ。……天野、頼む。アイリスを止めてくれ。これ以上の混乱は――」

「了解です隊長。――あれ、急に雑音が混じってきて――通信、切りますね」

「おい、天野聞いて――プチッ」

 僕は神原室長の言葉を遮り、インカムの電源を完全にオフにした。

「ア、 アマノ殿!? なぜ切ったのだ」

「これ以上聞いていても、僕たちの仕事が増えるだけだからね」

 僕はアイリスの肩にポンと手を置き、上空で睨み合う彼女の同胞たちに視線を向けた。

「室長の言う通りだ。アイリスが今出て行けば、ややこしい火種を増やすだけになる。君をあんなドロドロの睨み合いの中に放り込んだら、ストレスで知恵熱を出して倒れちゃうよ」

「馬鹿にするな! 私はコンビニの新作スイーツの発売日を完璧に把握できるくらいには、複雑な情報社会に適応しているぞ!」

「それはただの食い意地だ。……まあいい、とにかく、軍隊は動かせないし、僕たちも表立って説得に出ることはできない。なら、やることは一つだ」

 僕は右手をスッと前に突き出した。

「正面突破は無理だろうから、両軍の包囲網を完全にすり抜けた先――サイボーグ魔王が咆哮を上げるゲート中枢の、すぐ目の前の空間にショートカットをつくってみるよ」

 視線の先には、互いに銃口と槍を向け合う双方の最前線。そのさらに奥、魔導ケーブルが這い回る新宿ゲートの最深部に、サイボーグ魔王が鎮座している。

「魔王のすぐ近くの空間に繋ぎ合わせるのだな」

 アイリスの妙に落ち着いた声が、これから始まる戦闘の過酷さを伝えてくる。

「そいうこと。魔王を倒して、そこから中枢制御室に向かいゲートの暴走を停止する」

「アマノ殿。一つだけ聞いていいか?」

「なんだい?」

「もしこのままゲートの中枢に突入し、全てが成功しても……後で上層部から、命令違反の反逆者として死ぬほど怒られるのではないか?」

 アイリスが、透き通るようなブルーの瞳で僕をジッと見つめてくる。 彼女のその裏表のない視線に、ふっと肩の力を抜いて笑い返した。

「そうだね。始末書どころか、懲戒免職ものだ。……でも、世界が消滅して明日からアニメが見れなくなるよりは、百倍マシなバッドエンドだろ」

「ふっ……違いない。貴殿のその行い、見上げたものだ!」

 アイリスは腰に帯びた精霊剣の柄に手をかけ、楽しげに笑った。

「さあ行こうか、アイリス」

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作者について

ふっせ

初めて小説を書いてみました。 文章を書くこと自体が初めてなので、拙いところや誤字脱字なども多々あるかと思います。 それでも、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

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