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第七話 旅立ち

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 2,054文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

桃色の光が家の中を満たすと、鬼神族は思わず足を止めた。

「やはり……。」

鬼神の一人が低く呟く。

「聖剣桃光。」

桃華は静かに剣を構えた。

「ここから先へは行かせない。」

鬼神族が一斉に襲いかかり、鋼がぶつかり合う音が山里に響いた。

鬼神族の剛剣を、桃華は紙一重でかわす。

その動きは、記憶を失っていた少女のものではない。

幾度となく剣を振るい、天界を護ってきた《桃》の化身、そのものだった。

一閃。

桃色の光が弧を描き、一体の鬼神が膝をつく。

二閃。

炎をまとった槍が真っ二つに断ち切られる。

鬼神たちが後ずさる。

「……これが、桃の破邪か。」

隊長格の鬼神が苦々しく呟いた。

桃華は《桃光》を構えたまま、一歩前へ出る。

「まだ、やりますか。」

「…………」

鬼神は周囲を見る。

傷ついた仲間たち。

そして、桃色の光を放つ聖剣。

「……退くぞ。」

「しかし!」

「これ以上は無駄だ。」

鬼神は桃華を睨みつける。

「桃の化身が地上にいることは分かった。」

黒い瘴気が、その身体を包み始める。

「次は、こうはいかぬ。」

鬼神族は黒い霧に包まれ、山の彼方へと姿を消した。

静寂が戻ると、桃華はゆっくりと聖剣を納める。

振り返ると、じいさんとばあさんが立っていた。

二人は何も言わない。

ただ、優しく微笑んでいた。

桃華は深く頭を下げる。

「……黙っていて、ごめんなさい。」

じいさんは首を横に振った。

「謝ることじゃない。」

「お前さんにも、話せん事情があったんじゃろう。」

ばあさんも穏やかに笑う。

「桃華という名前も、きっと素敵な名前なんだろうね。」

その言葉に、桃華の胸が熱くなる。

「でも……。」

ばあさんは続けた。

「わたしたちにとっては、お前さんは桃太郎だよ。」

桃華の瞳から、涙が一筋こぼれ落ちた。

「ありがとうございます……。」

その夜。

囲炉裏には、いつもと変わらぬ夕餉が並んでいた。

焼き魚。

山菜の煮物。

味噌汁。

決して豪華ではない。

それでも桃華にとっては、天界のどんなご馳走より温かい食卓だった。

食事を終えた頃、桃華は静かに口を開く。

「私は、旅に出ます。」

じいさんは静かに頷く。

「じゃろうな。」

「鬼たちは、お前さんを追ってくる。」

「ここにおれば、この村が危ない。」

桃華は俯いた。

「ごめんなさい。」

「また謝る。」

じいさんは苦笑する。

「人はのう。

 守りたいものがある時、旅に出るもんじゃ。

 わしらも若い頃はそうだった。」

ばあさんが、小さな包みを取り出す。

「明日の朝、持っていきな。」

桃華は包みを受け取り、不思議そうに見つめた。

「きびだんごだよ。

 旅は、お腹が空くからね。」

桃華はその包みを胸に抱いた。

「ありがとうございます。」

その夜は遅くまで眠れなかった。

囲炉裏の火が小さく揺れる。

じいさんの寝息。

ばあさんの穏やかな呼吸。

この家で過ごした日々が、走馬灯のようによみがえる。

本当の家族ではなかった。

けれど、本当の家族以上に温かかった。

翌朝。

山の稜線から朝日が昇る。

桃華は旅支度を整え、聖剣桃光を腰に差した。

じいさんが静かに言う。

「桃華。」

桃華は振り返る。

「世界を救う者であっても、帰る場所を忘れるな。」

ばあさんも微笑んだ。

「疲れたら、いつでも帰っておいで。」

桃華は深く頭を下げた。

「はい。必ず、帰ってきます。」

そして二人に背を向け、歩き出した。

何度も歩いた村の道。

水を汲んだ井戸。

じいさんと汗を流した畑。

ばあさんと洗濯をした川へ続く道。

村人たちも、桃華を見送ってくれた。

「桃太郎、達者でな!」

「気をつけて行くんだよ!」

桃華は何度も振り返り、そのたびに頭を下げた。

やがて家々が少なくなり、畑も途切れ、桃華は村外れまでやってきた。

ここから先は、知らない道だった。

桃華は一度だけ振り返る。

遠くに、老夫婦の家が見える。

「……行ってきます。」

小さく呟き、再び前を向いた。

その時だった。

「待ちなさい。」

「……?」

道端の大岩に、一人の老人が腰を下ろしていた。

白髪を長く垂らし、一本の杖を手にしている。

桃華には、その老人がいつからそこにいたのか、まるで分からなかった。

老人は桃華を見つめ、静かに言った。

「桃の娘よ。

 お前には、これより三つの試練が待っている。」

桃華は足を止める。

「三つの試練……?」

老人は杖で地面に三本の線を描いた。

「その試練を越えるには、三つの力が必要となる。」

一本目の線を指す。

「犬――すなわち、忠義。」

二本目。

「猿――すなわち、知恵。」

三本目。

「鳥――すなわち、天を翔ける導き。」

桃華はその三本の線を見つめる。

老人は微笑んだ。

「姿を追うでないよ、その心を探すのじゃ。」

風が吹き、桃の花びらが舞い上がる。

桃華が目を閉じ、再び開いた時、そこに老人の姿はなかった。

ただ、三本の線だけが、大地に静かに刻まれていた。

桃華は空を見上げる。

「犬、忠義。

 猿、知恵。

 鳥、導き。」

その言葉を胸に刻み、一歩、また一歩と歩き始める。

懐には、きびだんご。

腰には、聖剣桃光。

そして胸には、「桃太郎」と呼んでくれた二人の想い。

こうして桃華は、新たな仲間との出会いを求め、最初の試練が待つ旅路へと歩み始めた。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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