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第二十話 鬼ヶ島への道

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 1,980文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

炉の火が静かに揺れていた。

湯呑を口元へ運んだ男は、一口茶をすすり、大きく息をつく。

「よう。」

嵐を思わせる鋭い眼差しが桃華たちを見据えた。

「ずいぶん遅かったじゃねぇか。」

桃華は思わず膝をつく。

「素戔嗚すさのお様……。」

間違いない、天界でも幾度かお見かけしたことのあるコア様の弟君。

素戔嗚は湯呑を置くと、金時を見て口元を緩めた。

「久しいな。タケの息子。」

金時は苦笑する。

「ご無沙汰しております。」

蜜秋が首をかしげる。

「タケって誰?」

金時が答えようとしたその時、素戔嗚が先に口を開く。

「武御雷神たけみかづちのかみ。雷を司り、剣を振るう武神だ。

 俺ぁタケって呼んでる。昔からの戦友よ。」

金時は静かに頷く。

「俺の親父殿です。」

一人、状況を理解できずにいた蜜秋が聞く。

「ってことは、このおっちゃんも神なの?」

その一言に、素戔嗚が吹き出す。

「知らんのも無理はない。」

金時は笑いながら答えた。

「太陽神の弟君であり、嵐を司る神、素戔嗚尊すさのおのみことじゃ。」

蜜秋の顔色が変わる。

「えっ?」

蜜秋は慌てて頭を下げた。

「し、失礼しました!」

素戔嗚は豪快に笑う。

「気にすんな。

 神だからって偉ぶる趣味はねぇ。」

そう言うと、真顔になった。

「さて、鳥どもから、おおよその事情は聞いてる。

 だが、当事者から直接聞きてぇ。」

桃華は静かに頷いた。

天界で起きた出来事。

千年の儀。

鬼神族の襲撃。

朱天の裏切り。

要石が砕かれたこと。

天照が重傷を負い、自らを犠牲にして桃華を地上へ逃がしたこと。

そして、朱天が鬼神族を率いていること。

すべてを話し終える頃には、部屋は静まり返っていた。

素戔嗚は腕を組み、目を閉じる。

「……そうか。」

長い沈黙の後、小さく呟く。

「姉上が。」

その声には、弟としての心配が滲んでいた。

「鳥達からの報告とも、概ね一致いたしますな」

鸞駕らんが、そして朱鷺ときも頷いた。

しかし次の瞬間、素戔嗚のその眼光が鋭くなる。

「だが、おかしいぜ。要石が破られた?

 月読がいながらか。」

桃華は眉をひそめた。

「月読様でも、防げなかったということですか?」

素戔嗚は腕を組んだ。

「そこなんだよ。

 兄貴は黄泉を治める神だ。

 黄泉には牛頭と馬頭を筆頭に、腕の立つ獄卒どもが大勢いる。奴らがみすみす邪を地上へ溢れ出させるとは思えねぇ。」

鸞駕も頷いた。

「儂も同感じゃ。

 鳥たちの報せでも、黄泉そのものが崩壊したという話は届いておらぬ。」

金時が眉をひそめる。

「つまり……。

 何者かが黄泉を押さえ込んでおるのか、あるいは黄泉でも戦が起きておるのか。」

素戔嗚は低く言った。

「どちらにせよ、兄貴が黙って見ているとは思えねぇ。」

部屋に重い空気が流れる。

朱天の裏切りだけではない。

黄泉でも何かが起きている。

そんな予感が、全員の胸をよぎった。

やがて素戔嗚は立ち上がった。

「決めた。」

桃華たちを見る。

「俺は天界へ向かう。」

桃華は驚いた。

「天界へ?」

「ああ。」

「姉上のことは俺に任せろ。

 それと兄貴の様子も見てくる。」

「天界は俺が動かす。」

桃華は思わず立ち上がる。

「では私も!」

「お前には別の役目がある。」

素戔嗚は真っ直ぐ桃華を見た。

「朱天を止めるんだろ。その為に託された聖剣だ。

 それに奴が今、鬼どもを集めているのにもわけがあるはずだ。」

「失礼します」

一礼して入ってきた男が朱鷺に耳打ちをする。

「皆さん、朱天たちの本拠地が分かリました。」

朱鷺が地図を広げた。

「向かうは瀬戸の内海。そこにある女木めぎという島です。」

桃華は地図へ視線を落とす。

「女木島……。」

鸞駕が静かに頷く。

「昔から鬼が棲む島として知られておる。

 島の中央には巨大な洞窟があり、天然の砦となっておるのじゃ。」

金時が腕を組む。

「攻めるには厄介じゃのう。」

鸞駕は続ける。

「古くから瀬戸の漁師たちは、その島を鬼ヶ島と呼んでおるそうじゃ。」

「鬼ヶ島……。」

桃華はその名を静かに繰り返した。

その名を聞いた瞬間、金時の表情が引き締まる。

「鬼の島か。名前からして物騒じゃ」

蜜秋も棍を握り締めた。

「鬼の本拠地……。」

桃華は聖剣の柄へ手を添える。

鬼ヶ島。

そこに朱天がいる。

ついに目指すべき場所が明らかになった。

素戔嗚は鸞駕へ顔を向ける。

「鳥の連中にも頼みがある。」

鸞駕は静かに頷く。

「承知しておるよ。

 すでに各地へ伝令を飛ばしておる、戦える者は集まるだろう」

「よし。」

素戔嗚は豪快に笑った。

「それなら間に合うな。」

桃華は尋ねた。

「何が、ですか?」

素戔嗚は口元に笑みを浮かべる。

「鬼ヶ島へ渡るにも船がいるだろ。

 それにこの戦、お前たちだけで戦わせるつもりはねぇ。応えてくれる奴らが、きっといるさ。」

その言葉に、鸞駕も朱鷺も意味ありげに微笑んだ。

風が砦の窓を吹き抜ける。

鳥たちは一斉に空へ舞い上がり、それぞれの使命を果たすため、四方へ飛び去っていった。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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