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第二十一話 鳥は空を舞う

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 2,791文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

鸞駕は集まった一同を見渡した。

「今日はひとまず鋭気を養うがよい。

 里の者も、鬼ヶ島へ向かう者、天界へ向かう者、そして里を守る者とに振り分けねばならぬ。

 出立は明朝じゃ。」

その言葉に皆が頷き、それぞれ用意された部屋へと案内されていった。

     ◇

その夜。

場面は変わり、砦の一室。

卓には焼き魚や山菜、干し肉が並び、酒瓶が置かれている。

素戔嗚は豪快に盃を掲げた。

「ほれ、飲め。」

金時も笑いながら盃を受ける。

「いただきます。」

酒を一口含むと、思わず目を見開いた。

「これは……うまい。」

素戔嗚は豪快に笑う。

「鬼無の里自慢の酒だ。

 鳥の連中は米も育てるが、酒造りも一流なんだよ。」

「さては素戔嗚どのがこの里に居られるのは、酒が目的なのでは?」

「わかりやがったか。

 しかしだな、神たるもの酒好きでなにがわるい」

「まったくですじゃ」

二人はしばらく無言で酒を酌み交わした。

やがて素戔嗚がぽつりと言う。

「タケも酒好きだった。」

金時は懐かしそうに笑う。

「親父殿は飲み始めると朝まで帰ってきませんでしたからな。」

「あいつらしい。」

二人は笑い合う。

笑いが収まると、素戔嗚の表情が引き締まった。

「……明日からは戦だ。」

「⋯⋯はい」

「俺は天界、お前たちは鬼ヶ島。」

金時も静かに頷く。

「親父殿なら申しましょう。

 主が前だけを見て戦えるよう、その背は俺が守る。と」

素戔嗚は酒を飲み干す。

「さすがタケの倅だ。わかってるじゃねぇか。」

二人は再び無言で盃を交わした。

     ◇

その頃、別の露天風呂では桃華と蜜秋が満月を見上げていた──。

鬼無の里の奥にある露天風呂。

湯気が静かに立ちのぼり、岩肌を伝う湯が小さな音を立てて流れている。

桃華は肩まで湯に浸かり、大きく息を吐いた。

「……生き返ります。」

蜜秋は湯船の縁に腕を乗せ、満天の星空を見上げた。

「こっちの月も、やっぱり丸いんだね。」

桃華も空を見上げる。

雲ひとつない夜空。

そこには大きな満月が浮かんでいた。

蜜秋がぽつりと呟く。

「この国じゃ、月には兎がいて、お餅をついてるって言うんでしょ?」

桃華は微笑んだ。

「ええ。幼い頃によく聞かされました。」

蜜秋は楽しそうに笑う。

「でもね、海の向こうの大陸じゃ違うんだ。

 兎は、不老不死の薬をついているんだって。」

桃華は興味深そうに聞き返す。

「不老不死の薬?」

「うん。その薬を飲んで月へ昇った女王様がいてね、その人と兎が一緒に暮らしてるんだってさ。」

桃華は静かに満月を見つめた。

「同じ月でも、見る人が違えば、語り継がれる物語も違うのですね。」

蜜秋は頷いた。

「旅をしてると、そういう話をいっぱい聞くよ。

 だから面白いんだ。」

夜風が二人の髪を優しく揺らす。

桃華は満月を見上げた。

「ねぇ、蜜秋。

 この世の果てまで旅をした斉天大聖様なら、月へも行けたのかな。」

「行けなかったそうだよ。」

蜜秋は少し寂しそうに笑った。

「世界の果てまで辿り着いても、月はまだずっと遠くにあったんだって。」

そう言って、夜空へ手を伸ばす。

「こうして見上げると、手を伸ばせば届きそうなのにね。」

桃華も同じように月へ手を伸ばす。

「本当に……。

 近くに見えるものほど、遠いものなのかもしれませんね。」

夜空の満月だけが静かに鬼無の里を照らしていた。 明日には、それぞれが別々の空へ羽ばたいていくことも知らぬように。

     ◇

鬼無の里の朝は早かった。

朝霧の中、砦の中庭では鳥の戦士たちが忙しく行き交っている。

伝令の準備をする者。

里に残る者。

鬼ヶ島へ向かう者。

天界へ向かう者。

戦地へ赴く者は武具を整えている。

鸞駕は砦の中央で静かに頷いた。

「よし。振り分けは以上じゃ。」

それを見て朱鷺が高見台より号令をかける。

「皆のもの、よいか。これより出陣する」

「おう!」

一斉に猛声が響いた。

     ◇

鬼無の里の門前。

桃華たちは旅支度を整え、出発の時を待っていた。

その時だった。

「お待ちください、桃華様!」

息を切らしながら一人の青年が駆け寄ってくる。

その後ろには、優雅に歩く一人の巫女姿の女性。

青年は桃華の前で膝をつき、胸へ手を当てた。

「朱鷺様より、桃華様の警護を命じられました。

 雉きじの化身、雉牙きばと申します。

 鬼ヶ島へは、我ら雉衆が同行し、皆様の支援を務めさせていただきます。」

桃華は頭を下げた。

「よろしくお願いいたします。」

その横で、巫女姿の女性が満足そうに頷く。

「わらわは凰おう。わらわも共に参ろうぞ。」

雉牙の表情が凍り付く。

「姉上!

 それはなりません!」

凰は不思議そうに首をかしげた。

「なぜじゃ?」

雉牙は慌てて言葉を続ける。

「ご自身の立場をお考えください。

 里の霊鳥が出陣されるなど前代未聞です」

「わらわは鳳凰ぞ。其は神格化した雉。

 ヌシらの力とは比べものにならぬ。」

「それは存じておりますが、鳳凰とは番つがいの霊鳥。万が一のことがあれば、鳳様に申し訳が立ちませぬ!」

凰は小さく笑った。

「案ずるでない。鳳にはすでに了承を得ておる。」

雉牙が目を見開く。

「鳳様が……。」

凰は空を見上げた。

「鳳は素戔嗚様とともに天界へ向かう。

 番つがいである我らは心を通わせることができる。

 互いの戦場で何が起きておるか、おおよそは手に取るように分かるというものよ。」

「わらわが地上を支え、鳳が天を支える。

 それで良いと、あやつも申しておった。」

雉牙はしばらく黙っていたが、やがて深々と頭を下げた。

「……承知いたしました。」

凰は満足そうに頷く。

「うむ、それでよい。」

そして桃華の隣へ立つと、いたずらっぽく笑った。

「桃華殿も両手に花じゃ。

 嬉しかろう?」

突然の言葉に桃華は目を丸くする。

「え……?」

凰はさらに続ける。

「むさい男は後ろを歩いておれ。」

そう言って金時を指差した。

金時は呆れたように肩をすくめる。

「なんじゃと。」

蜜秋は腹を抱えて笑う。

「あははは!

 金時、むさい男だって!」

金時は苦笑しながら鼻を鳴らす。

「犬は主人の後ろを歩くもんじゃ。」

凰は満足そうに頷いた。

「うむ、殊勝な心掛けじゃ。」

その真面目な返事に、その場の全員が思わず吹き出した。

やがて鸞駕が静かに前へ出る。

「では、参るがよい。鬼ヶ島への道は険しい。

 じゃが、お主らなら必ず乗り越えられる。」

朱鷺も一歩前へ出る。

「鬼無の里は、皆様の武運を祈っております。」

桃華は聖剣を握り締めた。

「必ず……朱天を止めます。」

鸞駕は空を見上げ、小さく頷く。

「……そろそろ迎えが来る頃じゃな。」

金時が首を傾げる。

「迎え?」

「うむ。」

「鬼ヶ島まで渡る船じゃ。」

その時だった。

「おっ、来おったわい。」

鸞駕が空を指差す。

一同が見上げる。

遥か天高く――

白い帆を大きく広げた一隻の帆船が、雲を切り裂くようにこちらへ向かってきていた。

「船が……。」

蜜秋が思わず目を見開く。

「空を飛んでる。」

誰もが息を呑み、その幻想的な光景を見上げていた。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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