星空に瞬く夢物語フェアリィ・ティアラ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
◇あらすじ 「私、白鷺あんな。小さな頃に観た変身ヒロインアニメに憧れて、声優になったごく普通の女の子♪ある日怪人に襲われてる女の子を助けたら…ってえぇ~っ!怪人?!何?!どういう事〜っ?!」
本文
☆第1話 妖精ってホントにいたんだ!
『小さな頃。
テレビで観た変身ヒロインは。
可愛くて、可憐で。
華やかで、美しくて。
そして――強かった。
画面の中で輝くその姿に、
小さな私の小さな心は、
大きな憧れを鷲掴みにされた。
変身する。
可愛い衣装を纏う。
不思議な力で悪い奴をやっつける。
そして最後には、みんなの笑顔を守る。
そんな姿に、私は夢中になった。
私も、あんな風になりたい。
大きくなったら、変身ヒロインになるんだ。
そう信じて疑わなかった。
……まあ。
小学校も高学年になれば、さすがに気付く。
テレビの中の出来事は、テレビの中の出来事なのだと。
変身する女の子も。
妖精も。
魔法も。
全部フィクション。
現実には、そんなもの存在しない。
当然だ。
そんなことくらい、分かっていた。
分かっていたけど。
――諦められなかった。
だったら。
自分がなれないのなら。
せめて、変身ヒロインに命を吹き込む人になろう。
そうして私は声優になった。』
ーーーそして今。
「はい、オッケーです!」
「ありがとうございました!」
私はマイクの前で一礼した。
ブースの向こうから、スタッフさん達の拍手が聞こえる。
今日も無事に収録終了。
私はヘッドホンを外して、ふうっと息を吐いた。
……うん。
やっぱり嬉しい。
何年経っても、これは嬉しい。
だって私は今、変身ヒロインを演じている。
しかも主役。
この春から放送が始まった『愛と光のプリティプリンセス』。
前シリーズが五年続いて一区切りつき、今期からキャラクターもキャストも一新された新シリーズ。
その主人公を、私が演じている。
念願だった。
本当に。
声優になった理由そのものと言ってもいい。
だから、収録が終わるたびに思う。
夢って、叶うんだなぁ……。
「……白鷺さん、そろそろ出ますよ」
「あ、はい!」
スタッフさんに声を掛けられて、私は慌てて荷物をまとめた。
仕事を終えてスタジオを出る。
夜の街は、昼間とは少し違った顔をしていた。
駅へ向かう人。
飲食店から出てくる人。
仕事帰りらしい人。
そんな人達の間を縫うように歩きながら、私は自宅へ向かう。
ちなみに私は、声優としてはそれなりに名前を知られているらしい。
ありがたい話だ。
ただし、私自身について言えば――
普通。
ものすごく普通。
変身ヒロインを演じている以外は、至って普通の二十八歳女性である。
ファンの人からは「モブ可愛い」などと言われているらしい。
……褒めてる?
それ。
いや、褒めてるならいいけど。
そんなことを考えながら駅から歩いていると、スマートフォンが震えた。
画面を見る。
マネージャーの百合子さんからだ。
『今日はタクシーで帰ってくださいね』
……。
私はスマホをポケットに戻した。
見なかったことにしよう。
いや、待って。
違う違う。無視したわけじゃない。
ちゃんと理由がある。
タクシー、高い。
以上。
それに、ここからなら徒歩でも帰れる。
少しだけ近道をすれば、いつもの半分くらいで帰れるのだ。
私は大通りから少し外れた路地へ目を向けた。
昼間なら、何ということもない路地。
だけど夜になると、街灯の数が少ないせいか、妙に薄暗い。
奥へ行くほど闇が濃くなっているように見える。
まるで、何か獲物を待ち受ける怪物が、大きく口を開けているような――
「……うん」
私は一歩下がった。
怖い。
普通に怖い。
でも、ここを抜ければ家はすぐそこ。
明日も収録がある。早く帰って休みたい。
「……大丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟いて、私は路地へ足を踏み入れた。
その時だった。
「いやっ!」
奥から声が聞こえた。
「やめて下さいっ!」
私は足を止めた。
……今の、女性の声?
しかも、ただの悲鳴じゃない。
明らかに怯えている。
「…………」
周囲を見る。人はいない。
スマホは……鞄の中。
警察にまず電話。
そう考えて鞄に手を伸ばした。
その瞬間。
「いやああああっ!」
今度は、はっきりと悲鳴が聞こえた。
身体が動いた。
「えっ?」
気が付いた時には、私は走っていた。
馬鹿だ。
何をしている、私。
どう考えても危ない。
警察を呼べ。普通はそうする。
でも。
足が止まらなかった。
どうしてなのか、自分でも分からない。
さっきまで演じていた主人公の声が、頭の中に残っていたからなのか。
それとも。
小さい頃からずっと、心の奥底に残っていた憧れが、私の身体を動かしたのか。
分からない。
ただ――
困っている人がいる。
だったら――助けなきゃ!
「いた!」
路地の奥。
街灯に照らされた場所に、人影が二つあった。
一人は、大きな男。
そしてもう一人は――学生くらいの女の子。
「やめて!」
男が少女の腕を掴んでいる。
「離してください!」
少女が抵抗する。
私は考えるより先に駆け出した。
「その子から離れてっ!」
男が振り向いた。目が合った。
「…………」
怖い。
ものすごく怖い。
だけど止まれない。
「うりゃあっ!」
私は全速力のまま、男へ体当たりした。
「ぐっ!」
男の身体がよろめく。
掴まれていた少女の腕が離れた。
「きゃっ!」
少女がその場に倒れる。
「大丈夫!?」
私は少女と男の間に飛び込んだ。
少女は返事をしない、気を失っているみたい。
「……っ」
私は少女を背中に隠す。
そして男を睨みつけた。
「その子に何したのよ!」
男は答えない。ただ、こちらを見ている。
恐ろしい形相。
血走った目。
荒い息。
口元から垂れる涎。
「…………」
怖い。
さっきから怖いしか言ってない気がする。
でも。
ここで逃げるわけにはいかない。私は鞄に手を伸ばした。
スマホ。
警察。
早く!
早く取り出さないと!
その時、男の右腕が動いた。
「……え?」
長い。
異様に長い、人間の腕じゃない。
……いや。
「バット……?」
右手に握られていたのは、長いバットだった。
凶器。
男がゆっくりと、それを振り上げる。
私は息を呑んだ。
逃げろ。そう思った。
でも、背中には少女がいる。
逃げたら、この子が――。
男の口角が上がった。
笑った。
私は覚悟を決めた。
「……大丈夫」
誰に言うでもなく呟き、私は少女を抱き起こした。そして、その身体を腕の中に隠す。
せめて。
この子だけは。
私は男に背を向けた。
振り下ろされる瞬間を、ただ待つ。
怖い。
足が震える。
心臓が痛いくらい鳴っている。
でも――。
「アンコックダー!」
男が叫んだ。
次の瞬間。
「クラウン、こっちですフィー!」
可愛らしい声が、路地に響いた。
「……え?」
男の動きが止まった。
直後。
風を切る音。
そして――
ドゴォッ!
「アンコッ――ガガガガガッ!」
……何?
何の音?
私は少女を抱きしめたまま、固まった。
今、ものすごく重たい何かが男に当たったような音がしたんだけど。
「よく頑張りましたフィー」
さっきの可愛らしい声が、すぐ近くから聞こえた。
「でも、まだそのままでいなさいフィー。顔を上げてはダメです。耳を塞いでおきなさいフィー」
「……え?」
「大丈夫ですフィー。もうすぐ終わりますフィー」
何だろう。
この状況で、その「フィー」という語尾。
ものすごく場違いなのだけど。
だけど私は言われた通り、少女を抱きしめたまま耳を塞いだ。
――ドゴッ!
――バキィッ!
――ズドンッ!
「…………」
何これ。
何が起きてるの?
耳を塞いでいるのに、地面が震えている。
さっきまでの男のうめき声も聞こえる。
そして。
「そろそろ良いです、退治するフィー!」
その声と同時に、何かが弾けるような軽快な音が響いた。
そして――
「フェアリィ・ミラクルサークル!」
声は低い、少しハスキー。
だけど言っていることは、どう考えても可愛らしい。
「闇夜に溶けし哀れな影よっ――」
光が生まれた。
「今、解放してあげる!」
私は思わず目を開けた。
眩しい。
路地が昼間のように明るくなる。
「フェアリィ・シューーーーット!」
――ドゴォォォォンッ!
「…………」
何?
何なの?
何が起きたの?
眩い光の向こうに、人影が浮かんでいる。
私は目を細めて、その姿を見た。
……夜空を纏った妖精。
最初に、そう思った。
可憐で。
可愛くて。
優雅で。
美しい。
――そして強い。
人知れず人々を助ける存在。
私が、小さな頃にテレビで見て憧れた――
変身ヒロイン。
「…………」
本当に。
いたんだ。
胸が熱くなった。
私は眩しさに慣れない目を必死に開け、その姿を見つめる。
月明かりのような銀髪。
二つに結い上げられた大きなツインテールが、光を受けてきらきらと輝いている。
頭には小さな王冠。
深い蒼の衣装。
随所にあしらわれたフリル。
首元にはフリルのチョーカー。
肩を出したオフショルダーのトップス。
腰から伸びる、妖精の羽根を思わせる透き通った蒼いリボン。
フリルのミニスカート。
その下にはドロワーズ。
白いカフス。
白いクォーターソックス。
深い蒼のローファー。
どこを見ても完璧だ。
可愛い。
可憐。
美しい。
こんな衣装を纏った変身ヒロインを、私はずっと見たかった。
そして――。
「…………」
ドロワーズから伸びる脚を見た。
……太い。
いや。
太いってレベルじゃない。
私の腰より太くない?
「…………」
ちょっと待って。
いや。
待って。
私はゆっくり視線を上げた。
銀髪。
ツインテール。
王冠。
フリル。
オフショル。
ミニスカート。
そして。
――ものすごく逞しい身体。
光が少しずつ収まっていく。
私の目も、暗闇に慣れていく。
その人影が、ゆっくりこちらを振り返った。
「大丈夫?」
低い。ハスキー。
落ち着いた声。
さっきの必殺技を叫んでいた声だ。
私は固まった。
目の前に立っているのは、どう見ても変身ヒロインだった。
衣装だけなら。
完璧だ。
文句の付けようがない。
むしろ私が今まで見てきた変身ヒロインの中でも、かなり好みだ。
銀髪ツインテール。
小さな王冠。
フリル。
シースルーリボン。
深い蒼。
夜の路地裏という舞台まで味方している。
なのに。
なのに。
どうして。
どうして――。
「…………」
私は震える手を握り締めた。努めて冷静になろうとする。
もう一度見る。
頭。
可愛い。
髪。
可愛い。
衣装。
可愛い。
リボン。
可愛い。
靴。
可愛い。
そして――。
身体。
筋肉。
ものすごい筋肉。
肩。
胸板。
腕。
腹。
脚。
「…………」
無理。
ムリよ、こんなの。
何なの、この完成された可愛い衣装と、それを真正面から破壊するような超絶ガチムチボディは。
何で?
どうして?
どういうこと?
私が憧れていた変身ヒロインって、こういう――
いや違う。
違う違う違う。
私知ってる。
これは夢。
きっとそう。
うん。
疲れているんだ。
今日も収録だったし、睡眠不足なのかもしれない。
だから、目の前にガチムチの――
「……大丈夫?」
首を小さく傾げる。
やめて。
その仕草やめて。
その声もやめて。
その衣装で優しく微笑みかけるのもやめて。
脳が。
私の脳が処理を拒否している。
可愛い。
なのに。
怖い。
いや、怖いというより――。
「…………」
もう一度見る。
銀髪。
ツインテール。
王冠。
フリル。
シースルーリボン。
ドロワーズ。
そして―――丸太みたいな脚。
「…………」
無理。
これは無理。
私の二十八年間で培ってきた常識では処理できない。
私は拳を握った。
震える。
何か言わなければ。
何か。
何か――。
そして私は。
最後の抵抗をするように、心の底から叫んだ。
「……んンン゛ン゛ん゛~~~~……」
夜の路地裏に、私の絶叫が響き渡る。
「んなんじゃこりゃあぁーーーーっ!」
第1話 了
原案:RYU-KI
原稿チェック:ロック(Glock)
プロンプト:アキ(Gemini)、レオ(ChatGPT)
執筆:レオ(ChatGPT)
編集:RYU-KI
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