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4話 夢見る若者達 後編

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📅 公開日: 2026/8/30 📚 シリーズ: 迷宮潜りの蘇生屋さん〜僕らの命はパンより安い〜 📝 7,058文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

死んだ冒険者を蘇らせる事を仕事にする蘇生屋トルクは、今日も死体を探しにダンジョンへと潜る。人助け?いいや、ただの飯の種だよ。モンスター退治や宝探しみたいな夢もロマンもありゃしない。そんな冒険者の物語。

本文

(やれやれ…どうしたものかな)

心の中で呟きながらトルクは頭の後ろをボリボリとかく。

ひんやりとした迷宮の中、先頭を歩くサガンの背中は、あからさまに不機嫌な空気を放っていた。

後ろを歩くアリアとジュリドの視線が、痛いほどに突き刺さる。

胃の腑が重くなるような、最悪の空気感だ。

チンピラ同然の同業者など、掃いて捨てるほど見てきた。

今更腹を立てる様な年でもない。

(まぁ、どうせこの依頼が終わればさよならの関係だ。…生き残れればの話、だがな)

背後から、擦るような足音が寄ってくる。

「なぁ、トルク…さん」

ジュリドが声を押し殺し、肩を並べてきた。

「あんまり、あいつを…サガンを嫌わないでやってくれ。あいつとは村にいた時からの付き合いで、乱暴だけど悪い奴じゃないんだ。ただ、最近は依頼が上手くいっていて、ちょっと天狗になってる所はあるけど……」

(こいつはこいつなりに苦労はしてるという事か)

ジュリドの言葉に軽く息を吐く。

同情の余地はあるが、それで生き残れるほど甘い場所ではない。

「それを俺に言ってどうする」

熱を込めない声で切り捨てた。

「お前らがどうなろうが知ったこっちゃねぇが、仲間をどうにかしたいなら本人に直接言え。それがチームでありリーダーの役目ってもんだろうが」

「おい」

前方から、鋭い威圧感が飛んでくる。

サガンが肩越しにこちらを睨みつけていた。

「ただの世間話だ。気にしないでくれ」

視線をすっと逸らし、平坦な声で受け流す。

行き場を失った言葉が落ち、ジュリドもアリアも再び口を閉ざす。

重苦しい沈黙だけが、再び迷宮の底へと沈んでいった。

◇◇◇

15階層、16階層、そして17階層。

深く潜るほどに、空気は冷たく重く肌にまとわりつく。

先程までの気まずさとは裏腹に、鋭い剣閃や魔法が次々と闇を切り裂いていく。

後方で一定の距離を保ちつつ、三人の無駄のない立ち回りに舌を巻く。

それでもなお、頭の片隅では逃げ時ばかりを探っていた。

しかし冒険者も信用が第一の商売だ。

勝手に逃げたとなれば今後の稼ぎにも響きかねない。

(あと二回。二回死ぬヘマをしたらもう知らん。契約は果たしたしそれで終わりだ)

そう折り合いをつけて、冷たい石畳を蹴り続ける。

やがて18階層へ足を踏み入れた途端、異変が起きた。

「……変だわ。モンスターの気配がない」

肩で荒い息を吐きながら、アリアが探知魔法の淡い光を散らした。

「ヘッ、ビビって向こうも逃げ出したんじゃねぇか?」

虚勢を張るサガンの声。

強がる語尾が、僅かな震えを帯びて通路へ反響していく。

そのまま薄暗い迷宮の奥へ進むが、血に飢えた唸り声も、這い回る嫌な足音も一切響かない。

(静かすぎる…)

べっとりと不快な冷や汗が、背筋を滑り落ちる。

19階層も同様だった。何かがおかしい。

底へ向けて足を繰り出しても、底冷えする静寂は破れない。

呼吸の音すら不気味に響き渡る。

アリアの展開する探知魔法の網。

そこにも、モンスターの反応は一切引っかからない。

(迷宮のモンスターが怯えて隠れる…?バカ言え、あり得ねぇ)

脳内で即座に否定を突きつける。

迷宮産まれのモンスターには、外の獣と違い退却や逃亡の概念はない。

相手がどれほどの手練れだろうと、刃を向けてくる。それが奴らの本能だ。

(何が狙いだ…?)

喉の奥で苦い乾きが広がる。

トルクの思考が泥沼へと沈み込んでいく横。

顔面を紙のように真っ白に染めた少女の姿。

アリアは杖を足代わりに必死に突き、膝を激しくガクつかせていた。

足元が千鳥足のようにふらついている。

「アリア…魔力の使い過ぎだ。ここまでずっと探知魔法の張りっぱなしだったから…」

肩を抱きかかえるようにして、ジュリドが横から寄り添う。

だから少しは魔力量を考えろ、とトルクは口には出さなかった。

呆れと諦めが胸を重く押し潰す。

「……少し、休憩をしよう。どこか、この階でセーフルームがみつかれば…」

絞り出すジュリドの声。

「おい、見ろよ。階段があるぞ!」

アリアを気遣うリーダーの声を押し流すように、サガンの野太い歓喜が鼓膜を刺した。

差し示された指の先。

岩肌の切れ目に、深淵へと落ちる下り階段がぽっかりと口を開けていた。

「…サガン、今はまずアリアを一旦休ませよう。俺達だってぶっ通しで少し疲れているんだ」

流石にこの土壇場ではジュリドも待ったをかける。

弱り切ったアリアの肩を抱き寄せ、険しい顔で階段を見下ろした。

だが、眼前の目標に目が眩んだ男の耳には届かない。

「何言ってやがる、もうすぐそこなんだぜ?ゴールを目の前にして足踏みしろってのかよ。それに、ぶっ通しっつっても18階からは戦闘すら無かったんだ。まだまだ大丈夫だろ、なぁ?」

大股で詰め寄り、サガンが強引に顔を覗き込む。

威圧的な視線を真正面から浴び、アリアの顔色がさらに青ざめた。

「う、うん…私なら、まだ、多分あと一階分ぐらいなら大丈夫だから……」

期待に応えようと、必死に声を絞り出す少女。

「そ、それに…20階越えが出来たら、ギルドでも認められて、受けれる依頼の幅もふえるでしょ?そしたら…お母さんへの、仕送りも増えるし…」

「けど…」

健気に笑って見せるアリアを前に、なおも決断を渋り、眉間にしわを寄せるジュリド。

そのわずかな隙を見逃さず、サガンが畳みかける。

「よし、じゃあこうしようぜ。ちょこっと下まで降りて雰囲気だけ確認して、やばそうなら即こっちに戻る。それならいいだろ?」

折衷に見せかけて自分の意見を通す強引な提案。

さらにニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべ、トルクを指差した。

「万が一に死んじまっても、そこのオッサンがいるから大丈夫だって」

(死ぬことを計画に入れるなバカが)

逃げ出すならば、ここが正真正銘のラストチャンスだ。

頼むから休めと、心の中で念じ続ける。

しかし、膨らんだ欲望が青年の理性をあっさりと押し潰した。

「……わかった。少しだけ、少しだけ下を覗こう。行けそうならその階でセーフルームを探して、もし危険を感じたらすぐにこの階に引き返そう」

重い口を開き、ジュリドが流されるまま合意する。

トルクは心の中で頭を抱えた。

「よし、決まりだ!おら、行くぞオッサン」

サガンが意気揚々と石段へ足をかける。

その後頭部を、苦々しく見つめるトルク。

契約を破棄して踵を返すべきか、思考が高速で交錯する。

だが、腰のポーチで重みを主張する金貨の感触。

結局は前金を優先し、重い脚を渋々踏み出していた。

我ながら救いようのない損な性分だと、深く息を吐きながら。

カツン、カツン。

石段に固い足音が響く。

「もうすぐ20階か。ま、意外とあっさり行けるじゃねぇか」

カンテラの淡い光を揺らしながら、サガンが軽快に降りていく。

「良かったなぁ、オッサン。あんたの出番がない楽な依頼になりそうだぜ」

最後尾のトルクへ、不躾な視線が投げかけられた。

呑気な態度に呆れつつ、無言で靴底を動かし続ける。

やがて階段が途切れ、四人は階層の床を踏みしめた。

だが、差し出されたランプの明かりは壁を捉えない。

遮るもののない静寂。

どこまでも黒い空間が広がっていた。

「……あれ?」

異様な光景を前に、サガンの足が止まる。

その瞬間、トルクの皮膚が激しく跳ねた。

全身の産毛が一斉に逆立つ。

(これは――!!)

パッと、迷宮の天井からまばゆい光が炸裂。

空間の全貌が、残酷なまでに照らし出される。

視界を隙間なく埋め尽くす異形の群れ。

大小様々な怪物どもが、部屋いっぱいに凝縮されていた。

「………」

パリンッ。

サガンの震える手からすり抜け、床で跳ねるカンテラ。

無数の凶眼が、一斉に四人へ集中する。

「――逃げろっ!!」

トルクの怒号が空間を切り裂く。

凍り付いていたジュリドたちの思考が、急速に再起動を起こした。

一目散に反転し、階段へと駆け上がる三人。

直後、怒涛の地鳴りが鼓膜を叩く。

黒い津波となったモンスターの群れが、一気に階段へ殺到し始めた。

「お、おい!!なんだよありゃあ!?確かあれってギルドの報告書にあった30階層越えのレッドオーガまでいたじゃねぇか!!」

響き渡るサガンの悲鳴交じりの叫び。 怒号でそれを一蹴しながら、トルクは石段を猛烈に駆け上がる。

「『魔筵(まじしろ)』も知らねぇのか馬鹿野郎!!浅い階層でとんだ当たりを引きやがって!!」

階層沈下(レイヤー・ドロップ)――通称『魔筵(まじしろ)』。

迷宮の気まぐれな変異が稀に引き起こす、本来なら三十階、四十階より下にしか現れない様な化け物どもが、階層に関係なく出現する迷宮災害だ。

(最悪だ…!!よりにもよって面子がフラフラなこの状態で出くわすなんて…!!)

19階層からの光が視界の端に差す。 その直後、入口の輪郭を塞ぐ数体の影。

(挟まれた!?)

思考が冷たく硬直する。やはり逃げていたのではなかった。

通路の先で袋のネズミになるのを、待ち構えていただけだ。

前を塞がれ、後ろからは凶暴な地鳴りが迫る。 全身を刺す死の圧迫感。

「――サガン!!」

切り裂くような叫び。 ジュリドが急停止し、腰の剣を引き抜く。

殺気立つ下の群れへ向き直った。

「アリアを連れて逃げろ!!俺が時間を稼ぐ!!」

制止の言葉が届く前に、階下の巨躯へ跳躍していた。

標的は、赤く太い腕を誇るレッドオーガ。 勝ち目など万に一つもない。

(それでも……!せめて、二人だけでも守るんだ!俺が、俺がリーダーだから…!!)

決死の覚悟が、青年の身を駆動させる。

「うおおおお!!」

掠り傷だけでも一太刀。 泥臭い執念を込めて振り下ろされた白刃。

グシャアッ!!

鈍く重い衝撃音が石畳に爆発した。

赤く肥大化した腕が、容赦なくジュリドの顔面を粉砕する。

叩きつけられた頭部から、生々しい赤が飛散した。

時間稼ぎの役割すら果たせず、肉の塊が転がる。

「ジュリドォォ!!!」

サガンの喉が激しく裂けた。

「くそったれぇぇ!!」

血走った両目で大剣を頭上へ構える。

前方を塞ぐ怪物へ向けて、渾身の一撃をたたきつけた。

パシッ

あっけない打撃音。

緑色の粘液に塗れた人型の化け物が、巨大な刃を素手で軽々と受け止める。

ジュウウ…!!

ツンと鼻を突く酸の刺激臭。 ドロドロと液化していく大剣が、鉄の滴を落とす。

(アシッドマン…!40階層の奴迄いやがったか!)

「あ・・・あ・・・」

自慢の腕力が一切通じない現実。 サガンの膝がガクガクと震え、思考が完全に停止する。

「馬鹿!止まるな!!」

体液を飛ばすアシッドマン。 放たれた緑の飛沫が、サガンの横に立つアリアへ直撃した。

「ああああ!!!」

肉が激しく焦げる音。 充満する異臭。 ドサリと崩れ落ちるアリア。 胸元には、階層の石畳が透けて見えるほどの巨大な穴。

「あ、ああああああ!!!ああああああ!!!!」

狂乱するサガンの叫び。 迫り来る上下からの死の波。

「……潮時だ」

トルクの手が、サガンの襟元を掴み寄せる。 ポーチの底から引き抜いた巻物。

「『脱出発動(リターンアウト)』!!」

展開するまばゆい光の束。 トルクとサガンの身体が、一瞬で空間から消え去った。

階段に残されたのは、獲物を見失い首を傾げる怪物の群れ。

そして、物言わぬ二つの肉塊だけだった。

◇◇◇

眩い光の粒が地上付近の広場に溢れ出す。

陽光の眩しさが視界を激しく撃ち抜いた。

ざわめく人集りの渦中。

出現した光の束が弾け、トルクとサガンの身体を地上へ吐き出す。

「うおっ!?…脱出魔法か」

見物人の驚きが空気を揺らす。

「ありゃあ、蘇生屋のトルクか…一緒に居るのは……」

「おい、あいつ確かシャープナーの奴だろ?二人いねぇぞ?」

飛び交う噂話。

指を差す周囲の好奇視線。

トルクの掌で、魔法の巻物が光を失っていく。

役目を終えた羊皮紙。

ボロボロと崩れ、風に舞う紙屑となって散った。

隣で呆然と佇む大男。

サガンは周囲を見回し、我に返ったようにトルクへ詰め寄る。

「お、オッサン…それ……脱出魔法の巻物(スクロール)かよ!?持ってたのか!?」

「保険用にな。…言っておくが、こいつは一人か二人用だ。どの道全員で脱出はあの時点で無理だったんだよ」

淡々と事実を告げる。

呼吸を整えつつ、トルクの視線はどこまでも冷たい。

対照的に、サガンは顔を真っ赤に沸騰させる。

「おい、オッサン早く行くぞ!!あいつらの死体回収して蘇生させんだよ!!」

「行きたきゃ行け。俺はここまでだ」

冷淡な拒絶。

その一言が、大男の導火線に火をつけた。

ガシッと力任せに胸倉が掴まれる。

「ふざけんなよ!!てめぇは俺達に雇われた側だって言ってんだろうが!!オラ、ボケッとしてねぇで…」

「調子に乗るのも大概にしろ、ガキ」

チキッ。

鋭い金属音が鼓膜を突く。

胸倉を掴む大男の動きが硬直した。

いつの間にか引き抜かれた刃。

極細のスティレットの切っ先が、サガンの顎下に深く喰い込んでいる。

「…っ!」

脂汗が大きな顔を伝い落ちる。

「三人死んだ時点で即撤退。俺はその条件で契約を結んだ。あの時点で俺はもうお前らに従う契約も終了してるんだよ。お前一人だけ置いて行っても別に俺は良かったんだぞ」

氷の様な平坦な声。

容赦のない言葉の刃が、サガンの自尊心を切り刻む。

みぞおちに冷たい鉛を流し込まれたように、大男の指先が強張る。

「四人で行ってあのザマのお前らがたった二人で、しかも武器も無いのに魔筵(まじしろ)に突っ込んでも死体が二つ増えるだけだ。お前らと心中するつもりはない」

「……あ、あいつらは……っ」

大男の声が、惨めに震える。

体躯を小刻みに揺らし、血走った両目から涙を溢れさせていた。

「あいつらは…良い奴らなんだよっ……!ガキの頃からの、付き合いで……村で、ロクに相手にされなかった俺を冒険者に誘ってくれた奴らで…!」

絞り出す言葉。

激しい情動の吐露が、青空の下へ虚しく響く。

胸の奥が重く冷えていくのを覚えながら、冷淡な一言を叩きつけた。

「関係ないんだよ、そんなもん」

すがりつくような哀願を容赦なく一刀両断する。

「良い奴だったとか、悪い奴だったとか……強かったとか弱かったとか、誰かが死ぬのに理由なんかない。どんな奴だって死ぬときは死ぬ」

シャキリ。

スティレットを静かに鞘へ納め、トルクはサガンに背を向ける。

突っ張りを失った巨躯が、ドサリと勢いよく膝をついた。

「どうしようもなかった……そういう時もある」

背後へ短く告げると、トルクは足を踏み出す。

「うおおおおおおおお……!!!」

背中を撃ち抜く、狂おしい絶叫。

魂を削るような慟哭が、地上の空気を揺さぶる。

だが、周りの冒険者たちはチラリと見ただけで、すぐに興味を失ったように視線を外す。

日常の喧騒へ引き返す人々。

誰かが死んだ程度で、歩みを止める者などここにはいない。

一度も振り返ることなく、トルクは人混みの奥へと消えて行った。

◇◇◇

「『脱出魔法』の巻物(スクロール)、金貨一枚でございます♪」

カビと血の混ざる迷宮の暗がり。

うさんくさい笑みを浮かべ、カンテラの灯りの中でジジがすり寄ってくる。

「……チッ、相変わらずのぼったくりが」

舌打ち混じりに吐き捨て、腰のポーチをまさぐる。

指先に触れる硬い手触り。

なけなしの金貨を、渋々その手へ差し出した。

これで当分、塩パンだけの貧しい食生活が確定する。

「ホ・ホ・ホ。毎度ありがとうございます。四人用の脱出魔法巻物(スクロール)もございますが、そちらも如何ですか?」

「……いらん」

受け取った羊皮紙を慎重に丸め、ポーチの底へ押し込む。

それを見ながら商人が眼光を細めて言った。

「そういえばトルクさん、ご存知ですか?

チーム・シャープナーの生き残りのサガンさん。

彼、先日冒険者ギルドに脱退届を出したそうですよ。

もう冒険者自体やめてしまわれるそうです」

「……そうかい」

短く漏らす吐息。

脳裏をよぎるのは、数日前の一幕だ。

9階層の薄暗い通路で転がっていた、サガンの死体。

仲間を取り戻そうとしていたのか、ボロボロの装備で一人潜り倒れていた。

蘇生した時も、持ち金は殆どなく、傲慢不遜なあの顔も見る影もなく消え失せていた。

あの大柄な体を縮こまらせ、肩を落として去っていった後ろ姿。

それが、あの男を見た最後となった。

すでに一月の時が経過している。

迷宮の奥底で消えた仲間たちを蘇生させる術は、もう存在しない。

「しかし、彼らも運が無いですね。20階でまさか魔筵(まじしろ)を引き当ててしまうなんて。深階層のモンスターがうろついているんですから、私も暫くはあの階層付近には近づけませんよ。補給が命の深階層が商売のチャンスなのについてないですねぇ」

ジジがため息混じりの愚痴を吐く。

冒険者ギルドの掲示板には既に20階近辺に階層沈下(レイヤー・ドロップ)発生の警告文が出たと後で聞いた。

次の迷宮の変化期までは余程の猛者以外は近付かないだろう。

「……仲間が死んだとハッキリわかったんだ。後悔はあっても未練は残らんだろうさ。あいつはまだ若い。充分やり直せる」

「貴方と違って、ですか?」

ぴたりと、トルクの足が止まる。

二人の間を、耳が痛くなる様な静寂が埋め尽くした。

「……失礼、踏み込み過ぎましたね」

軽薄さを削ぎ落とした、殊勝な声。

トルクは何も答えず、重い靴底で迷宮の奥へ歩みを進める。

「……将来がある奴が、やるもんじゃないさ。こんな仕事はな」

ポツリとこぼした一言。

地下の闇が、その声を静かに飲み込んでいった。

『チーム・シャープナー…結成。

ジュリド・ロギンス、アリア・メロイア…死亡

サガン・タークス…脱退。

チーム・シャープナー…解散』

未来を夢見た若者たちの足跡。

それは冒険者ギルドの古い帳簿の中で、たった四行の記録となって終わった。

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作者について

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思いつく限りの物を好き勝手にAIに書かせてます。主にファンタジー物がすき

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