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・2/fatale≠lot:呪縛は運否天賦ではない

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/30 📚 シリーズ: literalconnotation ─ なみだの魔法円から現れたのはあたしでした。 📝 4,999文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

夫の浮気を問い詰めた明楽メルは、勢いのまま足元の水たまりに魔法陣を描いた。 「異世界に行く」 もちろん、本当に行けるとは思っていなかった。 ところが次に目を覚ました場所は見知らぬ部屋。しかも自分の体は小学校低学年ほどに幼くなっている。 そんなメルを拾ったのは、銀髪の美青年――自称・悪魔のヴィザーゴだった。 「名前はアキラにしようか」 妙に馴れ馴れしく、人の思考を勝手に読み、肝心なことほど妙な言い回しをするヴィザーゴ。 その従者である三尾の狐ルーモと白山羊ヴェーロ。 言葉も常識も違う世界で、メル改め“アキラ”の奇妙な生活が始まる。 けれど、この世界はどうもおかしい。 消えたはずの傷。 元の自分とは異なる身体。 自分の真名を知る者たち。 ヴィザーゴが口にする「層」と呼ばれるもの。 そして、異世界へ来たはずなのに再び現れる、彼女がいた世界。 ここは本当に「異世界」なのか。 そもそも、自分は何者なのか。 ――まあ、それはそれとして。 服は欲しい。 靴も欲しい。 ご飯は食べたい。 旦那は一発殴っておきたい。 深刻になりきれないメルと、善良とは少々言い難い悪魔。 行き先のわからない二人が辿るのは、偶然でも、運命でもない。

本文

 悪魔……

 あたしは、ヴィザーゴさんの顔を覗き込んだ。

 悪魔ねえ……。

 角も無いし、翼も無いけど。

 どこの宗派の悪魔さんなんだろう。

 にしても、きれいな顔だぜ。

「アキラたちのいう、宗教の悪魔とは似て非なるものなんじゃないかな?一番近しいだけだよ」

 そうなんですね。

「じゃあ、人を騙して魂を獲ったりとか、人を誘惑して地獄に引きずり落としたりするの?」

「そんな面倒くさいことはしたくないねぇ。わざわざ僕らが出向かなくても、僕たちを必要としてるのは君たちだよ」

 そう言って、ヴィザーゴさんは素敵に微笑む。

「ん?待てよ?ってことはあたし、死んじゃったの?」

「死って、生きてないこと?じゃあ、ここにいるアキラは何?」

 あたしは、自分の手をグーパーグーパーと閉じたり開いたりして眺める。

 ん、動かせる。

 あたしの意思で動かしているから、あたしだ。

 その上でヴィザーゴさんに問いかけた。

「これ、この体。元々のあたしの体が幼若くなったんじゃなくて、別物だよね?」

「よく気がついたね」

「肩に火傷がないからね。あたしの体なら、このくらいの歳にはあったから」

「でも、要らないんでしょ、その傷。だから、作らなかった」

「ふぅん、スゴいね」

「そうかな?まだまだだよ」

 ヴィザーゴさんは、再びあたしの髪の毛を弄り出す。

 なぜ?がないのは、気楽だけどなんかさみしい。

 けど、よくよく考えたら意識は読まれてるようだし、わざわざ言わなくてもいいってことか。

 読まれてるのは記憶だろうか?

 それとも意識?思考?

 ここまで考えても、ヴィザーゴさんは手を止めない。

 じゃあ、これはあたしの一人語りだ。

 ——初めての夜、旦那はあたしの肩を見て停まった。

 小学校入学前に、ちょっとした事故で肩に火傷を負った。

 その火傷はケロイドとなって、あたしの肩に貼り付いていた。

 腕は動くし、服を着ていれば見えないし、庇ってくれた父の火傷跡の方が酷かったので、別段気にしてなかった。

 小学校でプールの授業が始まるまでは。

 かわいそう。

 気持ち悪い。

 感染うつるんじゃないの。

 クラスはまことしやかに、そんな話題で盛り上がった。

 病気じゃないのに。

 あたしは気にしてないのに。

 子供の説明は、子供の耳をすり抜ける。

 周りが気にするから、隠すようにした。

 旦那には付き合う時に、ちゃんと言った。

「あたしね、肩に火傷の跡があるんだ。子供の時にやっちゃってね。結構酷いの」

 猿な高校生は、下心でラッピングした口先で、君は君だろう?と言った。

 まだ、見てなかったから。

 ようやく動き出した奴は、火傷に口づけた。

 たぶん、キズにキスする漫画でも読んだのだろう。

 もしかすると猿の性欲の方が、勝ってただけなのかも知れない。

 その日以来、奴はあたしの肩から、服を脱がすことはなかった。

「随分と心無い伴侶だねぇ」

 ヴィザーゴさんはどこからともなく出した、リボンやら金鎖やらを髪に編み込んでいる。

 いったいどんな出来映えになってるのだろうか。

「見てみる?ルーモ」

 そう言うと、狐さんが鏡を持ってきてくれた。

 そこは魔法じゃないんですね。

「あるものは使うよー。無から作るのは、存外めんどくさいもん」

 ならこのリボンやらどこから出した。

「このくらいならわけないよ」

 くるくると指を回すと、光の帯がリボンに変わる。

 鏡を覗くと、意外にも品良く飾られていて、ぷぷっぴどぅなドレスでも浮いていない。

「センスいいですね」

「そうかな?まだまだだよ」

 いったい、何と比べているんだろう。

 くすっと笑い声を残して、

「兎、食べに行こう」

 と、言い出した。

 いきなりですね。

 にしても、兎とな?!ジビエですか?

 兎さんを食す習慣はないから、躊躇するぞ?

 それに、おフランス料理なんて、デートの時……いや、いい。

 たった一回の、結婚前のクリスマスなんて思い出すこともなかろう。

 クリスマスなんて、仕事の日平日だよ。

 くすっと、ヴィザーゴさんの笑い声。

 悪魔なんて言うけど、随分と笑い上戸ですね。

 悪魔だからか?

 待てよ?

「行こうってことは、ここではないのですかね?」

「そうだね。表だね」

「なら!下着が欲しいです!」

「下着?隠すものはつけてないつもりだけど」

 ええ。

 なんとなく気付いてますよ。

 股間が人形みたいだってことは。

 でもですね。

「くすっ。習慣ってやつだね」

「よくお分かりで。なんとか出来ますかね?」

 あたしはヴィザーゴさんの顔を見上げた。

 ヴィザーゴさんは、少しだけ考えて、

「ルーモ」

 と呼んだ。

 そう言えばだよ?

「この美人狐さんがルーモさん。じゃあ、あっちの白山羊紳士さんは?」

「……美人に、紳士……まぁいいけど。こいつらはルーモヴェーロ。どっちがどっちって訳ではないけど、狐がルーモ。山羊をヴェーロって呼ぶかな?」

「ルーモさんに、ヴェーロさんですね!えっと、『アキラ……』」

 と、フルネームを言おうとしたら、指で唇を塞がれた。

「名前も、言わないほうがいいの?」

「だってそれは、アキラの真名でしょう?それに、こいつらはアキラの名を呼ぶことはないよ」

 どういうことだ?

「山羊と狐だからね」

 そういうことか。

 でもさ。

 呼ばない事と、知らない事は別だと思うぞ?

「大丈夫。こいつらは君の名前は知ってるから」

 流暢な『大丈夫』。

 ヴィザーゴさんとルーモヴェーロはテレパシーで共有してるってことだろうか。

「ん。そんなとこかな」

 このままヴィザーゴさんの膝にいたら、喋り方を忘れてしまいそうだ。

「読まれる方が怖いものじゃないの?」

「隠すことないもん」

「ふうん……」

 イイコすぎたかな?

「いいんじゃない?アキラによく似た人たちも知ってるよ。層が違うから、アキラの方が珍しいけど」

 そう?層とな?

「用意が出来たみたいだよ」

 ヴィザーゴさんの指す方で、ルーモさんがヴェーロさんに布を渡している。

 ヴェーロさんが、ばさっと広げ頭から被る。

 フード付きのケープか。

 ……世紀末救世主伝説みたいだな。

 ルーモさんがあたしに、ちっさい白い布の固まりを渡してくれた。

 ヴィザーゴさんの膝に乗っかったまんま、それを受け取る。

 ……話の流れからして、この固まりは、おぱんつだよね。

 ルーモさんのかしら?

「くすっ。ルーモが新しく作ってくれたみたいだよ」

 なんと!

「ルーモさん!ありがとう!」

 ルーモさんは小首を傾げて、笑った気がしたよ?

 可愛いのぉ。

 ……で、早速どこでお着替えしようかなって、辺りを見渡すのだけど、トイレとかどこだろう?

「無いよ、トイレ」

 って、くすくす笑ってやがる。

「ねぇ、ここでつけなよ」

 はああああ?なに言ってんだ?

 ニヤリとするヴィザーゴさん。

 からかってやがる。

 セクハラ親父か。

「せく……?」

 悩んでろ。

ぱちん、ってルーモヴェーロさんたちが、音を立てた。

 二重奏。

 ふわっと、体が浮いて、ヴィザーゴさんの腕をすり抜けると、試着室みたいな広さの、濃い光の囲いの中に運ばれた。

 なんかわかんない言葉のヴィザーゴさんの声が聞こえるけど、なんなんだろうねぇあの人は。

 人目も無くなったことだし、ルーモさんが渡してくれた布を広げる。

 うわっ!布、ちっさっ!

 いわゆる紐パンってやつで……

 こんなセクシーな下着、旦那の前でもつけたことないな。

 だからか?

 だからダメなのか?

 ……履こう。

 で、ついでにそっと股間に触れてみた訳だけど、やっぱりなにもない。

 お人形さんの股間。

 ん?でも今からご飯って言ってたよね?

 兎なのは、一旦置いとこう。

 食べたものは何処から出るんだ?

 ……まさか、全て脂肪になるんじゃあるまいな!

 くすっと外から聞こえて、また聞いてやがる、と思った。

 ところで、ここからどうやって出るんでしょう。

 壁に出入り口は無い。

 迷っていたら、ぱちんと音がした。

 きれいに揃った二つの音。

 壁は溶けるように消えたけど、あーやっぱり。

 ヴィザーゴさんは機嫌悪そう。

「お待たせしました」

 ご機嫌を取るように、スカートの裾を持ってお辞儀を披露する。

 カーテシーってやつだ。

 知らんけど。

 ルーモさんは既にフードをつけていて、お揃いのフードをかけてくれた。

 ルーモさんと、ヴェーロさんとお揃いだ。

 しっかりとした生地なのに、驚くほど軽い。

 そんな中、ヴィザーゴさんは一人違う。

 インバネスコート。

 マントかな。

 ええ、お似合いですとも。

 ヴィザーゴさんは、あたしと目が合うと、ふわって笑った。

 なんだろねーこの人は。

「お気に召したかな?」

「履き慣れないからむずむずするけど、すっぽんぽんよりは安心です」

「なら、良かった」

 会話の途中で、あたしはヴェーロさんに抱きかかえられた。

 うおー!高っ!二階席だよ。

 ヴィザーゴさんさえ見下してる。

 否、見下ろしてる。

「どっちでもいいけどね」

 聞こえてるんですよね。

 自重します。

 ヴィザーゴさんがくるっと手を回す。

 空気を掻き回すと、指先が光の波紋を作る。

 指を立て、くるっ、くるっ……三……四……五……長いな。

 ヴィザーゴさんの声がする。

 謳うような、きれいな声。

 “声”はちゃんと聞こえているのに、翻訳機は作動してない。

 ラテン語とかなのかしらねえ……?

 ルーンと言えばケルトか?

 ケルトって何語なんだ?

 くるっ、くるっ、九……十……

 十二回回すと、絨毯から光が立ち上がって、さっきの魔女っこ変身バンクみたいだけど、さっきより“固い”気がする。

 ぱちんと光の壁の中で、音が反響する。

 ルーモさんと、あたしを抱えたヴェーロさん。

 ……ヴィザーゴさん、顔が……!!

 と思ったら、くいってヴェーロさんがフードを下げてきた。

 何も見えない。

 見ちゃいけないものなのかな?

「うわっ!」

 って、知らないヒトの声が聞こえて、あたしは地面に立たされた。

「フード取ってもいい?」

「どうぞ」

 ……そこに広がるのは、森だった。

 さっきの声の主は、よたよたと躓きながら、明るい方……きっと森の出口に向かっている。

 ん。

 森って言っても、暗いのよ。

 富士の樹海を思い出させる。

 行ったことはないけど。

 しゅたっ!と風を切るように、ルーモさんが暗い方、ヴェーロさんが明るい方に走る。

 ヴィザーゴさんとあたしは取り残されている。

 ふわっと、体が持ち上げられて、今度はヴィザーゴさんがだっこしてる。

 つくづく間近で見ても、きれいな顔だ。

 ヴェーロさんのけもけもも良かったけど。

 ち、また笑われたぜ。

「歩かない方がいいのかな?」

「体がくっついてる方が、アキラが何を考えてるのか分かりやすいからね」

「手を繋げばいいのでは?」

「今から行くのはこっち暗い方だよ。面倒じゃない?」

 確かに。

 ヴィザーゴさんの長い脚なら、難なく越えられそうな障害物が並んでる。

 今の寸足らずなあたしの体だと、追い付けなさそうだ。

「狩りはあいつらに任せて、僕らは村で待っていよう」

 狩り?現地調達なのか?

 獲りたて即、なのか?

「そういうこと」

 ヴィザーゴさんは、くつくつと笑いながら、踊るように歩みを進める。

 義経かね。

「よし……?」

「昔いた武将さん。ほぼ垂直な崖を馬で降りたり、海に浮かんだ小舟を鎧姿でぴょんぴょんと跳び跳ねた人」

「それはすごいね。英雄なの?」

「英雄って言ったら英雄かな?悲劇の、だけど」

「アキラの所って面白いね」

「そうかな?だいぶ昔のお話だよ」

 そんな話をしてたら、目的の村に着いたのだろう、ヴィザーゴさんはあたしを下ろしてくれた。

 手は繋いだままなんですね。

 道中は、ちょっとしたアトラクションのようでした。

 樹の枝を掴むために飛んだりとか、絶対要らなかったでしょ。

「そうだねぇ。ヨシツネを真似たかっただけかな」

 そうかよ。

 深い森の奥の、村。

 不思議と光に溢れていて。

 ルーモさんとヴェーロさんが、村の入り口で待ってる。

 って、ルーモさんはこっちに走ったからわかるけど、ヴェーロさんは?いつ追い抜かれた?

「ああ、町から舗装された道を通ったんだよ。荷車くらいなら通れる道があるから。でないと、村の人たちも不便でしょ?」

 なら、あの獣道は?!

「道を歩いても面白くないかなって」

 おいっ!

 楽しかったけどさっ!

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作者について

有城 砂生

有城 砂生

理であそび 律にあやつる せつなゆたう はざま ワタシはログ。 律であそび 理をあやつる

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