秋の棚
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
それは、彼方から届いた、ちょっと不思議な物語。ショートショート
本文
ある日の午後、お母さんはスーパーの和菓子コーナーに立ち寄りました。
「まだあるかな……」
夏の間、介護をしているおじいちゃんが、毎日おいしそうに食べていたカップの水羊羹です。
嚥下がうまくできないおじいちゃんにとって、なめらかですっと喉を通る水羊羹は、とても食べやすく、毎日の楽しみでもありました。
「秋になっても、まだ暑い日があるから、きっと売っているよね」
そう思って棚を見上げたお母さんは、思わず立ち止まりました。
そこにはもう、水羊羹の姿はありません。
秋らしい栗や芋のお菓子が、きれいに並んでいます。
そして棚の隅には、小さな札が一枚。
「今季の販売は終了いたしました」
「ああ……そうか。もう秋なんだ」
お母さんは、少し寂しくなりました。
「最後に十個くらい、買っておけばよかったなあ」
思わず苦笑いしながら、棚をもう一度見つめます。
でも、季節は待ってくれません。
「さて、今度は何なら食べやすいかな」
お母さんは、また新しいお菓子を探すために、スーパーの中を歩き始めました。
季節が変われば、食べられるものも変わる。
それでも、おいしいものを食べさせてあげたいという気持ちは、変わりません。
お母さんは今日も、次の小さな楽しみを探しているのでした。
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