『天津守護』-I'll never lose my mind

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/22 📚 シリーズ: 『天津守護』-I'll never lose my mind 📝 2,741文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

​【あらすじ】 十三年前、紫黒い天蓋と異形の怪異に閉ざされた魔都・東京。時間の流れが狂った結界の中で13年間閉じ込められていた17歳の少年・大神護(おおがみ まもる)と、外界から彼を救うために戦い続けた27歳の特殊部隊元隊長・神崎志乃(かんざき しの)。 ​崩れかけた廃屋で分け合った不味いスープ、指先を傷だらけにして削られた手作りのオルゴール。世界を繋ぎ止める人柱「天津守護」となった護は、「生きろ」という言葉と手作りのオルゴールを志乃に遺し、光となって消え去ってしまう。 ​あの日から、志乃は生涯誰とも婚姻を結ばず、ただ一人「大神護」という少年だけを愛し続けた。甥や姪、その子どもたち(孫世代の葵)を我が子のように愛し、生涯の戦友・風間とともに復興の時代を泥を啜って生き抜いた志乃。 ​そして50年以上の歳月が流れたある夕暮れ。80歳を超え、愛する家族と仲間に囲まれて穏やかに人生を全うした志乃の前に、あの日と変わらぬ17歳の姿で護が手を差し伸べにやってくる――。 ​【こんな人におすすめ!】 ​一途で切ない「純愛・生涯愛」ストーリーで泣きたい方 ​歳の差・時間の歪み・運命に翻弄される重厚なドラマが好きな方 ​悲劇で終わらず、長年の想いが報われる美しいハッピーエンドを読みたい方 ​戦友としての絆や、復興を支える温かな家族愛に触れたい方          0話含め全57話(最終回56話)

本文

第0話:『誕生日』

ザーザーと、容赦なくアスファルトを叩く雨の音が、世界を白く塗り潰していた。

六月の梅雨空は低く垂れ込め、街全体が湿った憂鬱に沈んでいる。

放課後。駅の改札前は、行き交う人々が差す傘の波で埋め尽くされていた。その中で、神崎志乃(かんざき しの)は所在なく佇んでいた。

14歳。

紺色のセーラー服の裾が、吹き込む風でわずかに揺れる。

彼女の手には、赤い傘が握られていた。

(毎日、この駅で別れる。なんてことのない、いつもの日常だと思っていた)

志乃の家は、ここから電車で一時間ほど離れた場所にある。

彼の家とは、進む方向が真逆だ。

同じ中学校という場所がなければ、交わるはずのなかった二つの人生。

スマートフォンの画面を見る。

表示されたデジタル時計は、約束の時間をすでに七分過ぎていた。

「……遅い」

ポツリと呟いた言葉は、激しい雨音にかき消される。

いつもなら、こんな風に待たされたら少しだけ眉をひそめるところだった。けれど、今日の志乃の胸の奥には、どうしようもない気恥ずかしさが居座っている。

付き合って、まだ三日。

そして、今日は――志乃の十四回目の誕生日だった。

「おーい! 志乃ーーっ!」

その時、雨のカーテンを切り裂くようにして、聞き馴染んだ声が響いた。

改札の向こうから、びしょ濡れになった少年が走ってくる。

大神護(おおがみ まもる)。

同じクラスで、席が隣同士で、ぶっきらぼうのくせに困っている人を放っておけない、志乃の「人生初の彼氏」だ。

「はぁ、はぁ……! わりぃ、待たせた!」

護は志乃の前で足を止めると、膝に手をついて荒い息を吐いた。

制服のブレザーの片袖はすっかり濡れ、黒髪から滴る水滴が、彼の強い意志を宿した瞳を濡らしている。だが、その両腕は、何か大切なものを守るように、制服の胸元をきつく抱え込んでいた。

「……来ないかと思った」

志乃は少しだけ視線を逸らし、わざと平淡な声で言った。感情を隠すのは、彼女の悪い癖だった。

「ばっ……! 来ないわけねぇだろ!」

護は顔を真っ赤にして、噛みつくように言い返す。

「彼女の誕生日忘れる奴が、どこにいるんだよ。……ほら、これ」

ふいっと顔を背けながら、護が胸元から差し出したのは、雨に濡れないようビニール袋で二重に包まれた、小さな、本当に小さな紙袋だった。

「ガチャで、どうしても当てたいやつがあってさ……少し遠回りして回してたら時間食った。……人生初だから、こういうの。その、誕生日、おめでとう」

差し出されたプレゼントと、護の耳まで真っ赤になった横顔を交互に見つめ、志乃の胸の奥に、じわりと温かいものが広がっていく。

「……ありがとう、護くん」

志乃の頬が、みるみるうちに赤く染まった。

彼の手から紙袋を受け取る。指先がほんの少しだけ触れ合って、二人して小さく飛び退いた。付き合って三日。まだ、手を繋ぐことさえできない、そんな距離。

二人は並んで歩き始めた。

少しでも長く一緒にいるために、雨の街をあてどなく歩く。

「毎日、ここでバイバイするの、ちょっと寂しいよな」

護は頭の後ろで手を組みながら、強がるように言った。

「進む方向が違うだけでさ。なんか、別の世界に行くみたいだ」

「……うん。でも、明日も学校で会えるよ?」

志乃は赤い傘を少しだけ護の方へ傾けながら、微笑んだ。

「学校に行けば、私の隣には護くんがいるもの」

「まぁ、そりゃそうだけど……」

護は照れ隠しに頭を掻いた。

「これからもずっと、こうして一緒に――」

その言葉が、最後まで紡がれることはなかった。

ズズズ……。

足元から、経験したことのない不気味な地鳴りが響いた。

地面の底から、何かが這い上がってくるような、世界そのものが身震いするような震動。

直後、周囲にいたすべての人々のスマートフォンが、狂ったような警告音を一斉に鳴らし始めた。

空気を引き裂く非常事態のサイレン。

「……え? なんだ、これ」

護が足を止め、怪訝そうに空を見上げた。

「護くん……空が……!」

志乃の声が震える。

雨を降らせていたどんよりとした雲が、まるで生き物のように蠢き、急速に、禍々しい紫色へと変色していく。

バリバリ、と世界のガラスが割れるような、凄まじい音が響き渡った。

上空の空間が、目に見える形で「裂けた」のだ。

そこから何が現れたのか、見る余裕すらなかった。

一瞬の静寂の後、街は、一瞬にして絶叫と混沌の渦へと叩き落とされた。

悲鳴を上げて逃げ惑う群衆。日常は、文字通り一秒で崩壊した。

「志乃! こっちだ、走れ!」

護が志乃の腕を掴もうとした。

しかし、パニックに陥った人間の濁流が、容赦なく二人の間に割り込む。

「護くん! 護くん……っ!!」

「志乃ーーー!!」

繋がろうとした十四歳の細い手は、無情にも引き離された。

人々が逃げ惑う波に押され、二人の距離はどんどん離れていく。

(神様なんて信じていなかった。でも、あの日、世界は確かに終わったんだ)

その時、二人の間に、目も眩むような光の壁が突き抜けた。

地中からせり上がってきた巨大な光の障壁が、超高速で空へと伸びていく。

それは、街を真っ二つに引き裂く、巨大な「檻」のようだった。

「護くん!!」

志乃は、壁の向こう側に見える少年の姿を、必死で目で追った。

光の壁が完全に閉じるまで、あと数秒。

壁の向こう側――黒い煙が立ち込める凄惨な景色の中で、護もまた、志乃を見つめていた。

護は、激しい苦痛に襲われているのか、頭を抱え、崩れ落ちそうになっていた。彼の瞳から、急速に光が消えかけていく。

それでも――護は、志乃を見た。

意識が濁流に飲み込まれていく中で、彼は最後の力を振り絞って叫んだ。

「志乃ーーー!!!」

護は、制服の胸元に残っていた、あの小さな紙袋を掴むと、塞がりかける光の隙間に向けて、全力で投げ放った。

放物線を描いて飛ぶ、十四歳の、人生初の誕生日プレゼント。

次の瞬間、眩い白光とともに、壁は完全に閉ざされた。

――ドンッ。

静寂。

激しかった雨の音さえ消え去ったかのように、志乃の周囲には奇妙な静けさが戻っていた。

志乃の足元に、ポツンと、少し濡れた紙袋が落ちていた。

アスファルトの上で、それはひっそりと佇んでいる。

志乃は震える手で、その紙袋を拾い上げた。

中身を見ることは、できなかった。これを開けてしまえば、彼が本当にいなくなってしまうような恐怖が、十四歳の少女の指先を縛り付けた。

顔を上げる。

そこには、世界を切り裂くようにそびえ立つ、冷たく青白い光の壁が立ちはだかっていた。

「護……くん……?」

ぽつり、と流れた涙が、雨水と混ざって顎から落ちていく。

ここから、引き裂かれた二人の、狂おしいほどに残酷で、切実な物語が始まる。

(これが、私たちの最後の会話。ここから、私の『十三年』が始まる――)

【第0話 『誕生日』 終わり】

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作者について

天霧 セナ

天霧 セナ

広島在住。AI生成を使用し小説とイラストをやってます。 ファンタジー・SF・恋愛など色々書いてますが、 一番大事にしてるのは感情の動き。AIで感情表現は何処までできるかをテーマにしてます。 今年...

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