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13 それから…。

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/12 📚 シリーズ: 鬼の里の白妙雛 📝 1,645文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

私は、鬼の里へすてられた…。

本文

🌸

それから、鬼の里に春が3回過ぎた頃。

里を囲む巨大な木々には淡い桃色の花が咲き乱れ、かつて荒々しかった岩壁の家は、今や完全に二人のあたたかい我が家になっていた。

そして、今の私には――もう一つ、愛おしくてたまらない変化があった。

  「ヒナ! 頼むから大人しく座っててくれ! そこ、段差があっから! あーもう、見てるこっちの心臓が保たねえ!」 居間の縁側に少し腰をかけようとしただけで、台所からもの凄い勢いで厳牙(げんが)が飛び出してきた。

身の丈2メートルを超える大男が、今や私の前にすっ飛んできて、割れ物を扱うようにそっと私の身体を支えてくれる。

  「大丈夫よ、厳牙。まだそんなに動けないわけじゃないんだから」 私はふふっと笑いながら、自分のふっくらとしたお腹を両手で優しく愛おしそうに撫でた。

あの、恥ずかしいとすぐ頭を打ちつける厳牙をとめる連続だった日々を乗り越え、不器用な鬼の旦那様と結ばれてから3年。

私の小さなお腹の中には、今、厳牙と私の新しい命が宿っていた。

  「大丈夫なわけねえだろ! お前の中に、俺たちのちっこいのが入ってんだぞ!?」 厳牙は私の前にドカッとしゃがみ込むと、相変わらず耳の裏まで真っ赤にしながら、だけどその瞳には溢れんばかりの愛おしさを湛えて私のお腹を見つめた。

彼はごつごつした大きな掌を、恐る恐る、本当に壊れやすい宝物に触れるように私のお腹にそっと添える。

  「生まれてくるこの子がよ……お前みたいに綺麗な白い髪と赤い目をしてたら、俺、嬉しくて泣いちまうかもしれねえ」 厳牙は少し照れくさそうに、でも誇らしげに鼻を鳴らした。

人間の村では不吉だと檻に閉じ込められた私の容姿。それをこの人は今でも世界で一番愛してくれて、生まれてくる我が子にも「お前みたいであってほしい」と願ってくれている。

  「……うん。厳牙に似て、一本角が生えた元気な子がいいね。でも、照れ屋なところは似てほしくないかも」

  「そ、それは言うな! 俺だってこれでも父親になるんだからな、これからは威厳ってやつをだな……」

  「威厳、ねぇ?」 私はわざとらしく小首を傾げてみせた。3年経っても、ちょっとからかうだけですぐに耳まで真っ赤にするこの純情な旦那様の、どこにそんな威厳があるというのだろう。

  「なに笑ってんだよ! 俺は本気だぞ! 生まれてくるチビの前では、絶対にどっしり構えたカッコいい親父でいてやるんだからな!」 厳牙はふんすと鼻息を荒くして、腕を組んでそっぽを向いた。

でも、その視線はチラチラと私の様子を伺っていて、やっぱりちっとも隠せていない。

そんな彼の様子がおかしくて、愛おしくて、私は声を上げて満面の笑顔を咲かせた。

かつて人間たちの村で「災いの子」と呼ばれ、檻の中で笑い方さえ忘れていた私が、今ではこんなに毎日お腹の底から笑っている。

  「……ふふっ。でもね、厳牙」 私はそっと身を乗り出して、大きな厳牙の顔を覗き込んだ。白い髪をさらりと揺らし、血のように赤い、けれど今は幸せに満ちた瞳で彼をまっすぐに見つめる。

  「私、今でもたまに思い出すんだよ? あの最初の夜のこと」

  「ゲッ……最初の夜って、お前、あの『美味しく喰っていいから』のやつか!? 頼むからあれは黒歴史として忘れてくれぇ!」 厳牙はガバッと頭を抱えて、3年前と全く同じように顔をトマト色に染めてのたうち回った。

そんな彼を愛おしそうに見つめながら、私は自分のふっくらとしたお腹に手を当てて、楽しそうに、そしてちょっぴり悪戯っぽくぽつりと呟いた。

  「――結局、あのあと本当に、美味しく喰われちゃったわけだけどね?」

  「ヒ、ヒナァアアア! お前、そういう言い方は本当に心臓に悪いってぇええ!!」 さらに大爆発した厳牙の叫び声が、桃色の花が舞う鬼の里の空へと響き渡る。

最後までウブで愛おしい私の旦那様。でも、彼の大きな手から伝わってくる熱は、どこまでも優しく、私たちの未来をあたたかく包み込んでくれていた。

(完)

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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