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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
私は、鬼の里へすてられた…。
本文
【ヒナ視点】
彼のぶっきらぼうな笑みに、ほぅと何とも言えない胸のあたたかさを感じながら、
「……うん! ありがとう、厳牙」
突き出されたお皿を受け取り、私は声を弾ませた。
じゅうじゅうと美味しそうな音を立てるお肉を一口頬張ると、じゅわっと温かい肉汁が口いっぱいに広がる。
人間の村で、あの冷たい檻の中で、ひとりで生の野菜をかじっていた時には決して感じられなかった、本当の「美味しい」の味がした。
「おい、美味いか?」 厳牙は相変わらず顔をトマトみたいに真っ赤にしたまま、視線をそっぽに向けた状態で、ボソッと聞いてくる。
まともに私の顔を見られないくせい、私がちゃんとお肉を食べているか気になって仕方がないみたいだ。 その様子がなんだか愛おしくて、私の胸の奥は、パチパチと薪がはぜる囲炉裏の火よりも、ずっとずっと温かい何かで満たされていく。
雪のように白い髪も、血のように赤い目も。 人間たちの間では「災いの子」だと気味悪がられたこの容姿を、この人は「綺麗だ」と言ってくれた。
私がうつむけば世界で一番慌てて、私が笑えば今度は言葉を失うほど真っ赤になる。 (……この里でなら)大きな身体を小さく丸めて、不器用に私の機嫌を伺っている赤鬼の背中を見つめる。
いらないものとして世界から捨てられた私だったけれど、この優しくて純情な鬼の隣でなら、私はもう一度、自分の名前を愛して生きていけるかもしれない。
「厳牙、お肉、すごく美味しいよ」 もう一度、心を込めてそう伝えると、厳牙の大きな一本角が嬉しそうにピクッと跳ねた。
外からは、まだ遠くの酒場から鬼たちの賑やかな笑い声が風に乗って聞こえてくる。鬼の里の夜はやっぱり荒々しくて騒がしいけれど、今の私には、世界中のどこよりも優しく、あたたかい場所に思えた。