配信スタート。
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
十年前の事故で両親を亡くした。 そこから彼女の人生は全て変わってしまった。 でも、諦めずに立ちあがろうとする。 _この先どんなことが起こるかも知らずに__
本文
ホームルームが終わると、教室は一気に喧騒に包まれた。
新しいクラスメイトたちが連絡先を交換し合い、
グループを作っていく。
凪も数人の男子に話しかけられていた。
「闇莉、そろそろ帰るか?」
凪がこっちを振り返って言った。
闇莉は小さく頷き立ち上がった。
帰り道。
桜は朝よりも散り始めていた。
風が吹くたびに花びらが舞い。
アスファルトの上にピンクの絨毯を作っている
「疲れただろ」
凪が闇莉に言った
「…うん」
闇莉が頷くと
「無理しなくていいからな。明日からも、できる範囲で通えば」
と凪が言った。
凪の言葉に闇莉は何も答えなかった。
家に着いた。
とっても静かだった。
靴を脱ぎ、そのまま2階の自室へ向かう。
部屋に入るとPCのモニターが暗く沈んでいた。
机の上にはヘッドホンとマイクが置いてある。
闇莉は鞄を床に置き、PCの電源を入れた。
ファンが回り始める音が部屋に響く。
配信をしようと思った。
学校のことは忘れたかった。
それに、今日は初めて凪が自分を推しと言った。
その事実が胸のどこかで引っかかっていた。
闇莉はデスクトップに並んだアイコンの中から配信アプリ
MetaPulseのアイコンをクリックした。
画面が切り替わる。
自分のアバターが出た。
泡沫めろのイラストで作ったアバターだ。
タイトルを入力する欄に指を置いて少し考えた。
何も思いつかなかった。
結局『おはようございます』とだけ打ち込んだ。
時刻は午後二時を回っているけれどメロの配信はいつもそうだ。
時間なんて関係ない。
配信開始のボタンを押す。
数秒のラグの後、コメントが流れ始めた。
「来た」「めろちゃんだ〜」「おはよう!」
画面の端に表示される視聴者数が少しずつ増えていく。
闇莉はゆっくりと息を吸い口を開いた。
「こんにちは〜、泡沫めろで〜す。
今日はねちょっと早くかえって来れたから
ゆるっと雑談しようかなって思って配信開きました〜」
声のトーンが変わっていた。
学校で話すときの掠れた小さな声ではなく。
明るくて少し高めの声だった。
「え〜、今日は何していたかと言うと〜…あんまり言えないけど
新しい環境に行ってきました〜」
コメントが流れる。
「学校?」「お仕事?」「新生活?」
「まあそんな感じです。緊張しました〜」
そう言いながら闇莉はモニターの向こうの反応を眺めていた。
コメントの一つ一つが現実から少しだけ遠ざけてくれる。
ここでは自分が泡沫めろでいればよかった。
黒羽 闇莉でいる必要はなかった。
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