黒曜石の檻 [2]
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p>伸ばした俺の指先が、彼女の頬に触れる。</p><p>凍てつく夜の氷のようになめらかで、酷く冷たかった。だが、俺を射抜く紫色の瞳に宿る光だけは、すべてを焼き尽くす烈火のように熱い。</p><p>月の逆光を浴びて、風に揺れる夜色の髪が、彼女の白い首筋に妖しく絡みついていた。 世界の終わりを前にしてもなお、彼女は傲慢に、そして残酷なほど美しく微笑んでいる。</p>
本文
伸ばした俺の指先が、彼女の頬に触れる。
凍てつく夜の氷のようになめらかで、酷く冷たかった。だが、俺を射抜く紫色の瞳に宿る光だけは、すべてを焼き尽くす烈火のように熱い。
月の逆光を浴びて、風に揺れる夜色の髪が、彼女の白い首筋に妖しく絡みついていた。 世界の終わりを前にしてもなお、彼女は傲慢に、そして残酷なほど美しく微笑んでいる。
滅びゆく世界の中で醜く生き長らえるくらいなら、このまま俺の手で果ててやる――そんな剥き出しの気高さが、俺の胸を狂おしいほどに締め付けた。
立場も、思想も、何もかもが相容れない。なのに、なぜこれほど抱きしめたい。
「相変わらず愚かなヒーロー。 私を倒して英雄のまま終わる機会を、自ら捨てるなんて」
向けられた言葉は冷徹極まりない。 だが、世界で二人きりになった今、その声はまるで俺たちの愛を確かめ合う囁きのようにも聞こえた。
ヴァイオレットは、頬に触れた俺の手を拒まなかった。それどころか、己の冷えた掌を俺の手の甲に重ね、妖しく唇を吊り上げる。
「いいわ、ルベウス。あなたのその決意、最後まで見届けさせて頂戴?」 重なる手のひらから、彼女の微かな体温が伝わってくる。
夜の帳のような深い紫のドレスが、滅びゆく世界の風に吹かれて、俺の足元に冷たく絡みついた。
作品統計
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