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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
唇に残る、ルベウスのあの痛いほどの熱が、まだ消えてくれない。はっと息を吐いて目を開けたとき、私の目の前にあったのは、終わる世界の大聖堂ではなかった。薄暗いカフェのベロアのソファと、空になった純白の皿『ネージュ・エテルネル』。
本文
唇に残る、ルベウスのあの痛いほどの熱が、まだ消えてくれない。
はっと息を吐いて目を開けたとき、私の目の前にあったのは、終わる世界の大聖堂ではなかった。
薄暗いカフェのベロアのソファと、空になった純白の皿『ネージュ・エテルネル』。
私は、世界を滅ぼした美しい悪魔――ヴァイオレットとして、最初で最後の口づけを交わしたはずなのに。
あの大理石の冷たさも、彼を置いて逃げ出した時の胸が千切れるような痛みも、すべて私の肉体に刻まれている。
それなのに、今の私の手には、聖剣を拒絶したあの冷酷な爪先さえ残っていない。
ルベウス、私の愛しいヒーロー、あなたは今どこで、私の呪いに苦しんでいるの。
現実という名のあまりにも退屈な光の中に引き戻された絶望に、胸の奥がギュッと引き裂かれる。 私の目から零れ落ちた黒い涙が、乾いた喉を伝って、カカオの苦い残滓(ざんし)とともに私を汚していく。
「――嫌よ、私を置いていかないで。お願いだから、あの美しい地獄へ戻して……!」
私は狂ったように自分の唇を指でなぞりながら、二度と手に入らない彼の体温を求めて、ただ激しく咽び泣いた。
その、絶望が最高潮に達した刹那。
重厚なクラシック音楽の重低音の隙間を切り裂くように、耳を澄まさなければ聞き逃してしまうほどに繊細で、硬質な音が薄暗い店内に響いた。
――チリン……。
まるで冷たい氷か銀の鈴が鳴ったかのような、あまりにも涼やかで美しい『クリスタル・チャイム』の響き。
万年雪の白磁『ネージュ・エテルネル』のデミタスカップが、目の前のテーブルへと静かに置かれた音だった。