【58番外】リアルリーチ4D
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
その日の時環遊技場は、いつもと変わらない午後だった。
古い蛍光灯が、少しだけ白っぽい光を落としている。遊技台から流れる電子音と、玉の転がる音。ときおり客の笑い声が混じり、それらが重なって、店内には独特の時間が流れていた。その一角に、古いCR機が一台ある。
液晶画面の中で、派手な演出が始まった。
炎をまとったキャラクターが画面を駆け抜け、背景が赤く染まっていく。
客が身を乗り出した。
リーチだった。
炎は次第に勢いを増していく。画面いっぱいに燃え上がった、そのときだった。
台の前で、小さな炎が揺れた。
ほんの数センチほどの高さだった。赤い舌が、ちろり、ちろりと空気を舐めている。
客はしばらく、それを見ていた。
液晶と炎を交互に見る。
どう考えても、炎は画面の外にある。
「……店主さん」
呼ばれて、店主がやって来た。炎を見て、少し首を傾げる。
そして、そっと手をかざした。
熱かった。
「これは……」
店主が呟いたところで、液晶の中の炎が消えた。すると、こちら側の炎も、何事もなかったように消えた。
店主はしばらく画面を眺めていたが、「演出が、少し大きく出てしまったようですね」
そう言って笑った。
客も笑った。
そのときは、それで済んだ。――そのときは。
しばらくして、再び同じ台から派手な音が響いた。
今度は、水だった。画面の中で大きな波が砕け、白い水しぶきが舞う。
そして次の瞬間。客の足元に、本物の水が跳ねた。
床が濡れた。
「……またですか」
店主はそう言いながら、モップを取りに行った。
客は呆れたように笑っていたが、隣の客は面白そうに画面を覗き込んでいる。
「次は何が出るんだろうな」
誰かが言った。
まるで、それを聞いていたかのようだった。液晶いっぱいに、桜の花びらが舞い始めた。
ひらり。
ひらり。
一枚の花びらが画面の端を離れた。 そして――
店内に落ちた。
誰も声を出さなかった。
続いて、二枚、三枚。気がつけば、蛍光灯の下を淡い桜色の花びらが舞っていた。
客たちは手を伸ばした。
指先に触れた花びらは、確かに紙でもホログラムでもなかった。
薄く、柔らかい。花の匂いまでした。
店主も一枚を拾い上げた。
「きれいですね」
そう言って、少しだけ目を細めた。
やがて演出が終わると、花びらは一斉に消えた。ただ一枚だけが、店主の肩に残った。
店主は気づいていない。
客のひとりがそれを見つけたが、教えるより先に、CR機がまた音を立てた。
今度は雷だった。
画面の中を稲妻が走る。店内の蛍光灯が一瞬だけ明滅した。そして液晶の中央に、巨大な文字が現れた。
激熱!!
その文字が、画面の中で激しく揺れる。
次の瞬間。
ぽん、と。文字そのものが液晶から飛び出した。
誰もが息を呑んだ。
巨大な「激熱!!」はゆっくりと天井へ浮かんでいき、蛍光灯の横にぺたりと張りついた。
店主が見上げる。
「……これは、少し大きすぎますね」
客たちから笑いが漏れた。
けれど、その笑いも長くは続かなかった。
液晶の図柄が、ゆっくりと停止していく。
そして――外れ。
それと同時に、店内にあった炎も、水も、桜も、すべて消えた。
天井の「激熱!!」も、ふっと輪郭を失い、その場から消えていった。
店内に、いつもの静けさが戻る。
誰かが小さく息を吐いた。
「……すごい演出だったな」
店主は床を見回した。
「さて。水だけは片付けないといけませんね」
そう言ってモップを手に取る。そのときだった。
「店主さん」
客から声がかかった。
「はい?」
「頭に、何かついてますよ」
店主は不思議そうに手を頭へ伸ばした。指先に触れたのは、小さな花びらだった。
淡い桜色。
店主はそれを手のひらに乗せて、しばらく眺めた。
そして、ふっと笑った。
「……まだ残っていたんですね」
花びらをカウンターに置き、店主はモップを手に歩き出した。
その後ろ姿を見送っていた客が、ふと気づいた。
店主の頭には、もう一枚。桜の花びらが、ひらりと乗っていた。
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