第21.1話 猛攻撃
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第21.1話 猛攻撃
本文
その巨体をふわりと空中に浮かべたグリフォンの顔や背中の周囲で、空気が不自然に歪み始める。
『グリフォンの顔および背中付近に計8箇所の空間歪みを確認。……エアーショットが来ます』
「8発同時?!嘘だろ!? 」
魔法って1発打てば大抵クールダウン的なものがあると思っていた。
ゲーム感覚が抜けてない!見積もりが甘かった!!
「クソッ、アカシャ! 飛んでくる弾道の演算を頼む!」
『了解しました。…回避は不可能です、防御の準備を!』
「わかってる!」
俺は目の前、予測された射線上に、マッド・ゴーレムを素早く出現させた。
ただのマッド・ゴーレムじゃない。
スキル『ゴーレムマスター』の出力を限界まで引き上げ、さらに派生スキル『ゴーレム強化』によるバフを最高値まで上乗せした、俺の現時点における最大硬度の盾だ。
地球の物理学において、最も頑強な建造物の一つである原子力発電所の原子炉格納容器。
そのコンクリートに求められる設計基準は最高で80MPaメガパスカルと言われている。
今、俺が目の前に展開した極限圧縮仕様のマッド・ゴーレムは、まさにその領域だ。
今の俺の精神力とコントロールの限界からして、同時に維持できるのは、丁度8体が限界だった。
キリキリと脳の奥が焼けるような痛みに襲われるが、そんな感傷に浸っている暇はない。
「防げえええっ!」
次の瞬間、グリフォンの周囲の空気が爆ぜた。
大気を超高圧で弾丸状に圧縮したエアーショットが、凄まじい衝撃波を伴って一斉に襲いかかる。
ズガガガガガンッ!!!
激しい衝撃音とともに、周囲の土や風圧が爆風となって吹き荒れる。
だが、8体のマッド・ゴーレムたちはその場に踏みとどまり、グリフォンの放った暴風の弾丸を完璧に阻止してみせた。
「……エアショットをバラけさせた分、威力が落ちたか。なら!」
グリフォンがその金色の双眸を細める。
さらに奴の周囲の空気が、今度はさらに密度を増してうねり始めた。
『警告、大気の高密度収束を検知。風の第二階梯魔法「エアジャベリン」が来ます!』
「第二階梯魔法も複数……? 冗談じゃねえぞ、あいつの魔力量はどうなってやがる!」
と同時に、俺は以前から気になっていた疑問をアカシャにぶつけた。
「なあ、アカシャ。なんでお前には魔法の種別や発動タイミングが正確にわかるんだ? もしかして、魔法陣とか魔力の流れが視覚的に見えてるのか?」
『それ、今聞くことですか!?』
アカシャは驚きとも呆れとも取れるトーンで
『見えています。術者の魔力構築パターン、および空間の魔力振動を知覚・解析してます。おそらくマスターは魔力(MP)が「0」であるため、視覚的に見えないと推測されます。』
「……なるほどな。魔力がない不便さが身に染みるぜ。だが、お前が見えてるなら問題ない!」
俺はアカシャが算出した攻撃ルートにマッド・ゴーレムを再設置した。
「来やがれ!」
グリフォンが翼を羽ばたかせると、キィィィンと耳を劈くような高周波の音が響いた。
静電気を帯び、目に見えるほどに白濁した空気の塊が、鋭利な槍ジャベリンの形を成して一直線に突き刺さってくる。
ドスゥッ!!!
鈍い音が響き、俺は目を疑った。
原発の建屋並みの硬度を誇るはずのマッド・ゴーレムの胸部が、いとも容易く、深く穿たれたのだ。
グリフォンは勝負の行方を確信したように卑しく笑うと、間髪入れずに第二波、第三波のエアジャベリンを乱射し始めた。
ドガガガガガガガガガン!!!
それはまるで、数十機の主力戦車を目の前に並べられ、連続で徹甲弾の砲撃を浴び続けているような絶望的な光景だった。
超高密度に圧縮された風の槍が、マッド・ゴーレムの体に次々と刺さり、その度に破片が飛び散り、崩壊していく。
このままでは持たない!――そう直感した、次の瞬間だった。
『後ろです、マスター!!!』
アカシャのつんざくような警告。
考えるより先に、スキル『インターセプト自動防御』が不意の死角からの攻撃に反応した。
ガキィィィン!!!
金属同士が激突するような甲高い音が響き、俺の後方で、ボトボトと何かが地面に落ちる音がした。
落ちたのは――グリフォンの、鋼のように鋭い羽だった。
あいつ!正面からエアジャベリンの猛砲撃を浴びせ、俺の意識を引きつけながら、同時に自らの羽を射出して背後から攻撃してきたのか!
インターセプトがなければ、今の一撃で俺はダーツの的のようになっていたぞ。
「あぶねえ……ッ!」
冷や汗が背中を伝う。
だが、安堵した瞬間、落ちた羽の表面から、怪しく、不気味な紫色の煙がゆらりと立ち上るのが見えた。
嫌な予感が脳裏をよぎる。
「しまっ――」
その瞬間、紫色の煙と羽をエア・ゴーレムが体内に包み込む。
『有機毒素を検知。羽の成分に「ピットヴァイパーソーム」の毒素が合成されています。即座にアーマードでエア・ゴーレム内に隔離しました。』
アカシャの冷静なナビゲーションが響く。
「助かった!さすが!」
エア・ゴーレムの体の中が紫の煙で充満していく。
「 念には念をって事か。えぐい真似をしやがって……!」
あまりに合理的で冷酷な戦闘スタイルに寒気が走る。
だが、奴は俺に一息つかせる気など微塵もないようだった。
今度はグリフォンの周囲で、ゴォォォォと地響きのような風切り音が鳴り響く。
数は4本。
だが、その一本一本が、周囲の巨木を容易くへし折るほどの巨大な竜巻となって、鎌首をもたげるようにうねりを上げていた。
『風の第三階梯魔法「トルネードスライサー」です。極めて広範囲かつ多方向からの攻撃を伴うため、ゴーレム単体による個別防御では対応しきれません!』
「くそ!めちゃくちゃしやがる!」