第21.2話 猛攻撃
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第21.2話 猛攻撃
本文
回避不可能。
防壁を一枚置くだけでは、四方八方から侵入してくる風の刃にズタズタにされる。
ならば、選ぶべき選択肢はただ一つ。
「 重ねる!!」
俺は瞬時に自分の周囲に、幾重ものゴーレムを構築した。
外側には大型の土ゴーレム。その中に一回り小さな土ゴーレム、さらにその内側に、俺自身を包み込む強固な「アーマード鎧化」を何重にもマトリョーシカのように重ねがけする。
さらに、上昇気流によって俺自身が空中に吹き飛ばされないよう、地中深くに即席の巨大なマッド・ゴーレムを作り出し、足首を握らせ固定した。
ガガガガガガガガガガガガッ!!!!
次の瞬間、世界が凄まじい衝撃と破壊音に包まれた。
外側の様子は全く見えない。
完全に光を遮断された土の殻の中で、俺は感覚共有による「ソナー(音響定位)」を頼りに、脳内に3D投影された外部の状況を見つめていた。
ゴリゴリと、強固なゴーレムの鎧が外側から猛烈な勢いで削り取られ、体積を減らしていく。
完全に防戦一方だ。
耐え抜けば勝ちなどという生易しい状況ではない。
このままジリ貧で防壁を使い果たせば、確実に削り殺される。
何かしらの手段で反撃に転じなければ、待っているのは死だ。
「ぐっ、あ、あたまが……」
くそ!断続的な精神的負荷か?脳の奥が割れるように痛い!目もチカチカしてきた!
限界は、とうに超えつつあった。
その時だ。
『警告! マスター、エアジャベリンが再装填されています。防壁が削られた隙間を狙い、直接あなたを串刺しにする算段です!』
アカシャの、今までにないほど緊急性の高い叫び声。
「しまっ――!」
防壁の残骸をすり抜け、超高密度の風の槍が、俺の胸元めがけて一直線に放たれる。
その瞬間。
俺と、迫り来る風の槍との間に、突如として巨大な影が割り込んだ。
ズドォォォォンッ!!!
大気が激しく震え、凄まじい金属音が響き渡る。
驚愕すべきことに、最高強度にバフをかけたマッド・ゴーレムすら容易く貫くエアジャベリンが、その巨大な影に直撃した瞬間、不自然なほど綺麗に火花を散らして弾き返され霧散した。
そこに立っていたのは、全高およそ5メートルの人型。
黒に近い茶色の丸太のを組み合わせた、圧倒的な質量を感じさせる、いびつな巨躯のゴーレムだった。
『「アイアンオーク・ゴーレム」、アクティベート完了しました』
アカシャの凛とした声が響く。
「アイアンオーク……? そうか!グリフォンの攻撃でなぎ倒された、あのアイアンオークの木をゴーレム化したのか!」
アイアンオークの木。
通常でも鋼鉄に匹敵する、極めて高い密度と強度を持つ、この森の木。
強度がハナからコンクリートの比ではないそれを、丸ごとゴーレムとして利用したのである。
「最高だ、アカシャ!」
『お褒めいただき光栄です、マスター。ですが、まだ終わりではありません!』
「ああ、わかってる! もう一体、起動させる!」
俺は精神力を振り絞り、転がっていたアイアンオークの巨木をゴーレムマスターの力で再構成し、2体目のアイアンオーク・ゴーレムを出現させた。
アイアンオークの硬度は、元の段階で鋼鉄クラス。
これに『ゴーレム強化』を重ねがけすれば、文字通り「動く鋼鉄の要塞」となる。
「この2体に、さらにバフを――っ!?」
瞬間、脳に強烈な電流が走ったような激痛が襲い、俺は膝から崩れ落ちた。
ゼェ、ゼェ、と荒い息が漏れる。
だめだ。
今の俺のレベルと精神力では、鋼鉄クラスの強度を持つこの超重量級ゴーレム2体を、最大出力のバフをかけた状態で同時に完全駆動させるのは不可能だ。
1体に……いや、2体は欲しい。
「だったらそれぞれ50%のレベルバフをかけてやる」
バフの倍率は下がったが、それでもベースとなる素体の強度が桁違いだ。
今までとは比較にならないほどの突破力を持つ「戦力」が、ここに2体揃った。
「いけ!叩き潰せ!」
俺の命令と同時に、2体の鋼鉄の巨躯が、大気を震わせながらグリフォンへと猛進する。
「チッ、くだらん人形遊びのスキルしか使えんくせに、往生際の悪い虫ケラが……!」
さすがのグリフォンも、鉄の塊が突っ込んでくるかのような威圧感に、不快そうに舌打ちを漏らした。
そして、奴の周囲、今度は地上付近に、4つの不気味な空気の歪みが発生する。
『マスター! 危険です! これまでにない魔力の超高密度凝縮を確認!』
アカシャが、今までにないほどの緊張を孕んだ声を張り上げた。
『風の第六階梯魔法、「シルフィード」が発動しています。……しかも、同時に4つ!』
「第六階梯……!? ってあのテンペストと同じクラスのやつか!?それを4つ同時だと!?」
戦慄が走る。
突っ込ませた2体のアイアンオーク・ゴーレムの前に、空間の歪みから、音もなく何かが這い出てきた。
それは、半透明の空気で構成された、全長3メートルほどの人型――
大きな盾と、鋭利な槍を手にした、ギリシャ彫刻のように美しい女性型の戦士ウォーリアたちだった。
「なんだよ……あれ……」
『あれは風の上位精霊シルフィードです。精霊自身が自律思考を持ち、個体一つ一つが一騎当千の戦闘能力を持つ、決戦兵器と言っていい存在です。』
「精霊召喚……。あいつもとうとう、なりふり構っていられなくなったってわけか」
『はい。ですが、精霊召喚、それも第六階梯の複数維持には、想像を絶する魔力の消費が続くはずです。グリフォンの魔力供給も、長くは持たないと推測されます』
よく見ると、空中を浮遊するグリフォンの肩が、わずかに上下に揺れ、息が荒くなっている。
奴のプライドからすれば、俺のような「羽虫」を相手に、二度の第六階梯魔法の使用、しかもシルフィードを4体も引きずり出されたこと自体が、屈辱以外の何物でもないのだろう。
燃え盛るような怒りの波動が、空気を伝って肌を刺す。
「正念場だ。こっちも畳みかけるぞ……!」