第23.2話 おせーよ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第23.2話 おせーよ
本文
そして、できる限りの大声で、奴のプライドを粉々に打ち砕くための罵声を叫んだ。
「ざまあみろ!!地べたを這いつくばって生きるなんて、お前にお似合いじゃないか!いい気味だ、クソ鳥――ッ!!」
その声を聞いた瞬間、グリフォンは我に返ったように動きを止めた。
ぎょろりと、血走った眼球が俺を捉える。
凄まじい憎悪に満ちた形相で、奴は脇目も振らずにこちらへダッシュしてきた。
「貴様が、貴様が、貴様が、貴様があああああ――ッ!!」
全ての怨嗟を言葉に変えて叫ぶが、やはり途中でバランスを崩して派手に転倒する。
それでも、奴は狂気だけで立ち上がり、這いずるようにして俺との距離を詰めてきた。
そして、俺の前で立ち上がった瞬間。
――ボンッ!!!
グリフォンが残された前足で、俺の身体を思い切り蹴り飛ばした。
直前、インターセプトでアイアンオーク・ゴーレムが割って入ってきたが、それでも衝撃を殺しきれず、俺とゴーレムの身体は十メートルほど後方へと吹き飛ばされた。
ずざざざざざっ!!!
地面の土を派手に削りながら、俺の身体が転がる。
受け身を取れるほどの体力はもう残っていない。
無様に地面に叩きつけられ、口内から大量の鮮血が溢れた。
「がはっ……っ!」
『マスター――ッ!!』
意識を……意識を保て!あの娘が受けた苦しみに比べればこんなもの……!
必死に歯を食いしばり、薄れかける意識をつなぎ止める。
グリフォンはそれでも怒りが収まらず、ありとあらゆる罵詈雑言を吐きながら、ヨタヨタと近づいてくる。
――いいぞ、もっと近づいてこい。
俺の思惑通り、グリフォンは近寄ってきたが、途中でドサリと崩れ落ちる。
どうやら、ヤツも限界らしい。
立ち上がる事もせず、そのままほふく前進のような体勢でズリズリ這い寄ってきた。
倒れ伏したまま、奴は俺の顔の近くにその醜悪な顔を近づけ、荒く息をしながら、低く狂気に満ちた声で囁いた。
「お前、その身体に欠損すら完全に治せる力を持っているのだろう。出なければ我の攻撃をここまで耐えられるはずがない。」
何言ってんだこいつ……持ってたら、もうとっくに自分で自分を回復させてるっつうの……
「いや、お前自身が使いこなせなくとも、我ならば、その力を完全に引き出せる……!今すぐ、お前ごと喰らうてやる……!」
こいつ、焦りすぎて思考が完全に視野狭窄に陥っているな。
だが――その方が、俺にとっては都合がいいんだけどな。
「これ……な、異世界の道具で……『ライター』って言うんだ」
俺は震える右手を動かし、インベントリから取り出した小さなプラスチック製のライターを、グリフォンの鼻先に弱々しく提示した。
「……は?」
グリフォンは呆気にとられたように、動きを止めた。
時間が凍りついたかのように、奴の思考が停止する。
「異世界の道具でさ……上のスイッチを押すと、小さな火が出るんだよ。便利だろ?」
か細い声で喋る俺を、グリフォンはただただ、不可解なものを見る目で呆然と見つめている。
俺は構わず、話続けた。
「……『水素』って知ってるか?空気中にはほとんど存在しなくてさ。作るのが猛烈に面倒なんだけど……熱と、水と、土の条件が綺麗に合えば、実は化学反応で作れてさ……」
「貴様は……一体、何をわけがわからない事をボソボソと言っている……!?」
そう叫んだグリフォンの顔が、なぜか次の瞬間、みるみると恐怖に染まっていく。
グリフォンの『直感』スキルが、今までにない危険を察知したのだ。
「それがさ……とんでもなくよく燃える物質でね。特に、酸素と『二対一』の割合で混ざった時は……本当にやばいんだよ」
俺は手元に目を移す。
手に持っているライターのすぐ近くに、その不可視のゴーレムはいた。
子供の背丈くらいのゴーレムが2体、手を繋いで。
『オキシ・ゴーレム(酸素ゴーレム)』と『ハイドロゲン・ゴーレム(水素ゴーレム)』
グリフォンが俺に突撃してきたあの時――
マッド・ゴーレムが熱で爆散した時にでた炭素(C)と大量の水蒸気を利用してアカシャに生成させた、水素と酸素で作り出したゴーレムの名前だ。
グリフォンの巨躯が、ガタガタと震え出す。
ど、どういうことだ?!何もない、何もできないヤツを前にして、我が『直感』が……今までにない、最悪の警告を鳴らしている……!?
魔力の動きはない、物理的な攻撃の予兆もない!
それなのに、世界そのものが我に牙を剥こうとしている圧倒的な恐怖!
「まずい!まずい!まずい!まずい!ここにいては絶対まずい!!」
グリフォンは必死に、その場から逃げようと立ち上がろうとする。
だが――
「おせーよ」
カチッ。
俺の指先が、ライターの電子スイッチを押し下げた。
小さな火花と立ち上がる火が、2体のゴーレムの繋いでいる手に触れた。
「や、やめろぉおおおおおおおおお――ッ!!!」
グリフォンの絶叫が響いた次の瞬間。
ドゴォおおおおおおおおおおおン――ッ!!!!
上空から巨大な航空爆弾が直撃したかのような、凄まじい衝撃波が炸裂した。
アイアン・オークの巨躯すら一瞬で焼き焦がす超高熱の熱波と、視界を白一色に染め上げる強烈な閃光。
水素爆発特有の爆燃現象が、クレーター内の大気を一瞬で消費し、上空300メートル近くまで達する巨大なキノコ雲のような煙を立ち昇らせた。
そこにいる生命を根こそぎ刈り取るような圧倒的な破壊の光景を、周辺の森の魔物たちは、恐怖と共に遠くから見上げていた。