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【65番外】 たこのパラドックス

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/11 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,495文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日、時環遊技場には、いつもとは少し違った客が三人いた。

赤い頭に、細長い腕。そして、三人とも足元から伸びた触手のようなものを揺らしている。

見た目は、どう見ても――たこさんウインナーだった。

ただし、普通のたこさんウインナーではない。一人は関西弁。一人は名古屋弁。

そしてもう一人は熊本弁を話す。

以前、パチンコという遊技に興味を持って地球へやってきた宇宙人たちである。

三人は今日も、並んで台に座っていた。

「……なあ」

関西弁のたこさんが、玉を打ちながら言った。

「なんや?」

名古屋弁のたこさんが答える。

「宇宙には、わしら以外にも宇宙人がおるんやろか?」

「おるに決まっとるがね。宇宙はでら広いんだで」

熊本弁のたこさんも、うんうんとうなずいた。

「そぎゃんたい。こぎゃん広か宇宙に、俺たちだけしかおらんはずなか」

「せやのに、なんで誰にも会わへんのやろな?」

三人は手を止め、顔を見合わせた。

そして、揃って時環遊技場の店主を見た。店主はカウンターで、いつものように穏やかな顔をしていた。

「どうされました?」

「店主はん」

関西弁のたこさんが立ち上がった。

「ちょっと相談があるんや」

「はい。なんでしょう?」

三人は台から離れ、カウンターの前に並んだ。その表情は、いつになく真剣だった。

「宇宙にはな、ものすごい数の星があるやろ?」

関西弁のたこさんが言う。

「ええ」

「その中には、生命がおる星も、文明を持っとる星も、たぶんぎょうさんあるはずや」

「そうですね」

「せやのに――」

そこで一度、三人が間を置いた。

「なんで、誰も来んのや?」

店主は少し考えた。

「……なるほど」

「なるほどやないねん!」

関西弁のたこさんが両手を広げる。

「宇宙、めちゃくちゃ広いやろ!」

「はい」

「文明もいっぱいあるはずやろ!」

「はい」

「ほんなら、もっとこう……」

両手をぐるぐる回す。

「宇宙人同士で、わーっと交流しててもおかしくないやん!」

名古屋弁のたこさんも頷いた。

「そうなんだわ。うちら、地球まで来とるのに、他の宇宙人とは全然会わんのだて」

熊本弁のたこさんは腕を組んだ。

「宇宙船ば飛ばしても、誰もおらんとたい」

三人は深刻な顔をしている。

店主も腕を組んだ。

「それは……確かに不思議ですね」

「せやろ!」

「そこで相談なんや」

関西弁のたこさんが身を乗り出した。

「地球人から見て、なんで宇宙人は来んと思う?」

「そうですねえ……」

店主はしばらく考えた。

「遠いから、でしょうか」

「そりゃそうだわ」

「宇宙、広すぎるばい」

「では、わざわざ遠くまで行く理由がない、とか」

三人は黙った。

「……理由」

名古屋弁のたこさんが呟く。

「理由って、なんだわ?」

「たとえば、地球に来て何をするのか」

店主が言う。

「それが分からなければ、わざわざ来ないかもしれません」

三人はさらに黙った。

やがて。関西弁のたこさんが、ゆっくり口を開いた。

「……パチンコ」

「はい?」

「地球に来た理由、ワイらはパチンコやったわ」

「ああ」

店主は微笑んだ。

「そうでしたね」

三人は顔を見合わせた。

「……」

そして、三人とも台のほうを振り返った。

「宇宙のどっかにも、パチンコ好きの宇宙人がおるんやろか?」

「おるかもしれんでね」

「もしおったら、ここに来るばい」

「来るかなあ」

「来るやろ」

「来んかもしれんでね」

「なんでたい?」

「遠いでね」

三人はまた考え込んだ。

店主はそんな三人を見ながら、ふと思いついたように言った。

「もしかすると」

「ん?」

「宇宙人は、いないのではなく……」

三人が店主を見る。

「それぞれの星で、同じようなことを考えているのかもしれませんね」

「同じようなこと?」

「はい」

店主は少し笑った。

「『宇宙にはたくさん星があるのに、どうして誰も来ないんだろう』と」

三人は、ぽかんとした。

「……」

やがて熊本弁のたこさんが、ぽつりと言った。

「それ、全員が待っとるだけじゃなかと?」

「そうかもしれません」

「うちらも待っとる」

「向こうも待っとる」

「ほんなら、誰も動かんがね」

「……」

三人の間に、妙な沈黙が落ちた。

そして。

関西弁のたこさんが、ぽんと手を叩いた。

「ほんなら!」

「うん?」

「向こうから来んのやったら、こっちから行ったらええやん!」

「どこへ?」

「知らん!」

店主は思わず笑った。

「ずいぶん壮大な話になりましたね」

すると名古屋弁のたこさんが、何かを思い出したように台を指差した。

「……でも、その前に」

「はい?」

「もう一回だけ、これ打ってええ?」

「もちろんです」

三人は嬉しそうに自分たちの台へ戻っていった。

宇宙の謎について真剣に話していたはずなのに、三人とも今は盤面に夢中である。

「おっ!」

「リーチだがね!」

「おお、これは熱かばい!」

店内に三人の声が響く。

店主はカウンターから、その様子を眺めていた。

しばらくして、関西弁のたこさんが叫んだ。

「当たったでー!」

店内にファンファーレが響く。三人は大喜びした。

そのときだった。時環遊技場の入口付近で、何かが光った。

三人が振り返る。店主も見る。

入口の外。静かな第9区の空に、見慣れない小さな光が浮かんでいた。

光はゆっくりと近づいてきて――すっと消えた。

「……今の、なんや?」

関西弁のたこさんが呟く。

名古屋弁のたこさんも窓に張り付いた。

「宇宙船……だったんかね?」

熊本弁のたこさんが目を細める。

「まさか……」

三人は固まった。

店主も静かに外を見ている。

その時。店主の腕時計が、ピッ、と小さな音を鳴らした。表示されたのは、たった一行。

『来店予定――未確認』

店主は首を傾げた。

「……まだ、お客様の予定は入っていないようですが」

三人は顔を見合わせた。

そして、なぜか嬉しそうに笑った。

「来るかもしれへんな」

「来るかもしれんでね」

「来るとよ」

宇宙のどこかで、誰かが同じように空を見上げているのかもしれない。

そして、いつか。その誰かが、時環遊技場の扉を開けるのかもしれない。

三人は、もう一度だけ台に戻った。

「なあ、これ、もう一回当たるんちゃう?」

「そんな簡単に当たらんて」

「でも、さっき当たったばい」

「それとこれは別やろ!」

宇宙最大級の謎は、いったん保留になった。

時環遊技場では今日も、玉の音が響いていた。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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