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【66番外】 ゴールド・ホログラムディスク

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/13 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,299文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日のDJ-Spinは、いつもより大きな機材ケースを抱えていた。

「店主さん、ちょっといいですか?」

営業中の時環遊技場。古い遊技台が並ぶ店内では、玉の音と機械の駆動音が重なり、あちらこちらから客の歓声が上がっている。

店主が振り向いた。

「はい。何でしょう?」

「これ、見てください」

DJ-Spinがケースを開いた。中から出てきたのは、薄く透明な円盤だった。光の角度によって、内部に細かな虹色の線が浮かんでいる。

「これは……?」

「ホログラムディスクです」

「ずいぶん綺麗ですね」

「普通の保存用じゃありません」

DJ-Spinはディスクを持ち上げた。

「宇宙用です」

「……宇宙?」

店主が目を丸くする。

「はい」

DJ-Spinは笑った。

「この時代なら、個人でも宇宙輸送に乗せられるでしょう? 俺、宇宙関連の人たちと話してたんです。それで、ちょっと面白いことを思いつきまして」

「まさか……」

「そのまさかです」

DJ-Spinは店内を見渡した。

「これに時環遊技場の音を入れて、宇宙へ送ります」

店主は、しばらく黙っていた。

「……この店の音を?」

「そうです」

「宇宙へ?」

「はい」

DJ-Spinは、少しだけ照れくさそうに笑った。

「昔、宇宙へ飛んでいった探査機に、人類の音や音楽を記録したレコードが載せられたでしょう?」

「ああ……」

「それを思い出したんです」

店主は透明なディスクを覗き込んだ。

「では、これに?」

「この店でしか聞けない音を、できるだけいっぱい」

「なるほど」

「誰かが聞くかもしれないし、誰にも聞かれないかもしれない。でも、残ってるっていうのが面白いじゃないですか」

店主は、ふっと笑った。

「それは、確かに面白いですね」

*

収録が始まった。

最初に記録されたのは、開店前の店内だった。

まだ客のいない遊技場。蛍光灯の小さな唸り。台の電源が入る音。古い機械が目を覚ます音。そして開店時間。

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、いらっしゃいませ。ありがとうございます。いらっしゃいませ」

店主の声が店内に響く。DJ-Spinは、思わず笑みを浮かべた。

続いて、店主のマイクパフォーマンスが始まった。

「数ある遊技場、娯楽場の中より、時環遊技場、時環遊技場に、大勢様、多数様、ご指名、ご来店、ご贔屓ご来店いただきまして、誠にありがとうございます。いらっしゃいませ」

玉の音が重なり始める。

「お客様、お一人様お一人様に、厚く深く、深く厚く、お礼申し上げます。いらっしゃいませ」

店内のあちこちから、常連客の笑い声が聞こえた。

「店主さん、今日も絶好調だね!」

「ありがとうございます」

店主はマイクを握ったまま、楽しそうに続ける。

「本日も、昨日、昨晩以上の出玉を持ちましてのお出迎えとなってございますれば、お隣、ご近所、お友達お誘いあわせいただきまして――」

そこで声に少し力が入る。

「ジャンジャンバリバリ、ジャンジャンバリバリと、お取り下さい、お出し下さい、お出し下さい、お取り下さいませ。いらっしゃいませ!」

店内から拍手が起こった。

DJ-Spinは録音機の表示を確認する。

音声だけではない。この空気まで、全部残しておきたかった。

*

別の日には、こんなマイクも収録された。

「パチンコの必勝法と言いますれば、今も昔も、一に粘り、二に粘り、三、四がなくて五に頑張りと根性でございますれば――」

客席から、

「出た!」

という声が飛ぶ。

店主は笑いながら続ける。

「四角四面の枠の中、くるくる回る風車に乗せられまして、左へ、右へ、右から左、真ん中へ。一発ひと球、丁寧に丹念に、丹念に丁寧にとご遊技されますならば――」

そのとき、どこかの台で大当たりが入った。

ファンファーレが鳴り響く。

「おおっ!」

「入った!」

「おめでとうございます!」

店主の声と歓声が重なった。

DJ-Spinは、録音を止めなかった。

「……これです」

小さく呟く。

「こういうのが欲しかったんですよ」

*

そして、DJ-Spinが特に気に入ったのが、このマイクだった。

「白銀の玉、黄金の玉に、夢と希望と未来を乗せますれば――」

その言葉を聞いたとき、DJ-Spinは一瞬だけ店主のほうを見た。店主はいつも通り、遊技台の様子を眺めている。

「粘りと頑張りと根性を持ちまして、お隣、ご近所、お友達、お負けになりませぬよう――」

そして、いつもの調子で。

「ジャンジャンバリバリ、ジャンジャンバリバリと、お出し下さい、お取り下さい、お取り下さい、お出し下さいませ。いらっしゃいませ」

DJ-Spinは笑った。

「……『夢と希望と未来』か」

その言葉を、もう一度ディスクの収録リストに刻み込んだ。

*

従業員アンドロイドのマイクも収録された。

『お客様、遊技台に異常を感じられました場合は、お近くのスタッフまでお声がけください』

その後ろでは、玉の音。台の音。客の話し声。笑い声。大当たりのファンファーレ。

羽根モノの役物が動く音。店主のマイク。従業員アンドロイドの案内。

それらが一つの音の塊になって、ホログラムディスクへ保存されていった。

さらに、営業終了間際。

店主の声が響く。

「それでは、どちらのお客様も最終最後のお時間が参りますまで、また、お時間、お体が許されますまで、どうぞごゆるりと、ごゆるりとお遊び下さいませ」

少し間を置いて。

「どちらのお客様も黄金の腕、黄金の指先を持ちまして、ジャンジャンバリバリ、ジャンジャンバリバリと、お出し下さいませ、お取り下さいませ」

客席から笑い声が上がる。

「店主さん、最後までそれ言うんだ!」

「もちろんです」

店主も笑った。

*

録音は何日も続いた。

開店前。営業中。昼の混雑。静かな午後。大当たり。笑い声。そして閉店。

ホログラムディスクには、音だけではなく映像も保存されていった。

古い遊技台。壁のポスター。透明なホログラムメダカ。店内を歩く客たち。

店主。従業員アンドロイド。そして、そこに流れる一日の時間。

ある日の閉店後。蛍の光が流れ始めた。最後の客が帰り、台の音が一台ずつ消えていく。

店主が店内を見回った。

「本日も、ありがとうございました」

従業員アンドロイドが照明を落としていく。店内が静かになる。

DJ-Spinは、録音を止めようとした。そのとき。

「……今日も、いい音でしたね」

店主が小さく言った。

DJ-Spinの手が止まった。録音は、その声も拾っていた。

*

完成したホログラムディスクは、薄い金色に輝いていた。

「これ、本当に永久保存できるんですか?」

店主が尋ねる。

「できます。物理的な劣化もほとんどありません」

DJ-Spinが答える。

「それなら、私たちより長生きするかもしれませんね」

「たぶん」

「ずいぶん遠くへ行くことになりますね」

「はい」

DJ-Spinはディスクを眺めた。

「この中には、この店の一日が全部入ってます」

「全部……ですか?」

DJ-Spinが笑う。

*

打ち上げの日。

時環遊技場のホログラム掲示板には、宇宙輸送船の映像が映し出されていた。

店主。従業員アンドロイド。常連客たち。そしてDJ-Spin。

全員が、遠くへ向かう小型探査機を見ていた。

「行きますよ」

DJ-Spinが言った。

探査機が上昇する。大気圏を抜ける。青い惑星が少しずつ遠ざかる。

その内部に、一枚のホログラムディスク。そこには――

「いらっしゃいませ」という店主の声。

従業員アンドロイドの案内。玉の音。台の音。大当たりのファンファーレ。

客たちの笑い声。

そして、「白銀の玉、黄金の玉に、夢と希望と未来を乗せますれば――」という声。

探査機は、さらに遠くへ進んでいく。

誰かが見つけるかもしれない。誰にも見つからないかもしれない。

それでも、ディスクは残る。何千年先でも。何万年先でも。

あるいは、もっと長い時間の先でも。そこには、一軒の遊技場の音がある。

古い機械が鳴らす音。玉が盤面を走る音。人が笑う声。誰かを迎える声。

誰かを見送る声。そして、最後に残された店主の声。

「……今日も、ありがとうございました」

小さなホログラムディスクは、静かに宇宙を進んでいく。

時環遊技場から、遠くの誰かへ。

白銀の玉に乗せた、夢と希望と未来を。

今度は、本当に。宇宙の彼方へ。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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