第1話:負債残高50万Crからの水着ハクスラ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/14 📚 シリーズ: ラストパラダイスガールズ 📝 3,064文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p>​重苦しい排気音と、鼓膜を刺すような高周波のアラート音が、薄れかけた意識を無理やり引きずり戻した。</p><p>​「……ッ、ゲホッ!……ケホッ! くそ、喉が焼けそうだ……!」</p><p>​視界を塞ぐ汚泥と黒濁した冷却オイルを手払う。あたし——素体識別番号『RURI-01』こと<strong>ルリコ</strong>は、濡れて身体にへばりつく競泳服型戦闘スーツの胸元を押し開け、激しく咳き込んだ。</p>

本文

​【1. オイルと泥と、最悪の目覚め】

​重苦しい排気音と、鼓膜を刺すような高周波のアラート音が、薄れかけた意識を無理やり引きずり戻した。

​「……ッ、ゲホッ!……ケホッ! くそ、喉が焼けそうだ……!」

​視界を塞ぐ汚泥と黒濁した冷却オイルを手払う。あたし——素体識別番号『RURI-01』ことルリコは、濡れて身体にへばりつく競泳服型戦闘スーツの胸元を押し開け、激しく咳き込んだ。

​頭上のホログラム表示は、バグったノイズとともに赤く明滅している。

​【警告:ライセンス未承認領域への無断侵入を検知】

【初期支給装備:標準仕様高周波ナイフ(エネルギー残量:0%)】

【現在の負債残高:-500,000 クレジット(Cr)】

【72時間延命カウントダウン:残り 71時間58分20秒】

​「目覚め開口一番で半不渡り(ハンフワタリ)かよ……! 相変わらずクソみたいな集金システムだね、この街は!」

​あたしは膝を突き、ドロドロになったスラム工業街区(第1区画)のコンクリートに吐き捨てた。

体に巻きついているのは、青と白の薄手の競泳水着を模した高伸縮性戦闘スーツ。だが、胸元はオイルで泥汚れ、太ももの生地は瓦礫で擦れて大きく破れ、肌が痛々しく剥き出しになっている。

​「文句を言っている暇はないわよ、ルリコ。……“お客様(視聴者)”のお待ちかねよ」

​静かな、だが凛とした声が上空から降ってきた。

振り返ると、瓦礫の山の上にすっと立ち尽くす少女の姿があった。

サテン生地の薄い紺色セーラー服を纏った少女——サファイアだ。セーラー服の裾から伸びる細い脚と、破れたストッキングから覗く肌が、薄暗い街区のホログラム光に照らされて怪しく光っている。

​彼女の頭上には、無数の不可視ドローンカメラが滞空し、真っ赤な撮影用ランプを点滅させていた。

​『投げ銭待機中:現在の視聴者数 142,800人』

『コメント:競泳水着とセーラー服のバディきたああ!』

『コメント:初手で50万Crの借金スタート草。早く解体されてほしい』

​「あたしたちの命を見世物にして、チャリンチャリンと集金か。胸糞悪いね」

「文句なら、この街の運営プロデューサーに言って頂戴。……来るわよ」

​サファイアの視線の先。歪んだ鉄骨を押し潰しながら、巨大な影が滑り出してきた。

​【2. 巨大解体回収機『J-CROW』と絶望の現地調達】

​【ターゲット捕捉:レイドボス『J-CROW(ジェイ・クロウ)』】

【種別:スラム街区自動解体・素体回収ユニット】

​ガキン! ガキン! と油圧関節の嫌な音を響かせ、姿を現したのは鳥の頭部を模した異形の重機甲兵器だった。

背部には巨大な油圧式解体ハサミ(シザー)と、不純物を粉砕するグラインダー。そして肩部には、雑魚素体を蜂の巣にするための対人多連装機関銃ポッドが備え付けられている。

​「ルリコ、初期ナイフのバッテリーは?」

「ゼロ! 一回突いたら柄ごと爆散するゴミだよ!」

​あたしは腰のホルダーから高周波ナイフを抜き取ると、迷わず『J-CROW』のセンサーカメラに向けて投げつけた。

カチン、と無力な音を立てて弾かれ、ナイフは油泥の中へと没する。

​『J-CROW』の鬼面センサーが赤く発光した。

​『不法投棄素体ノ解体・回収工程ヲ開始シマス』

​「ギシャアアアアッ!」

​唸りを上げる巨大な解体ハサミが、空気を引き裂いてあたしたちへ振り下ろされる!

​「跳べっ!」

​あたしとサファイアは左右へ跳躍。一瞬前まであたしたちがいた場所が、油圧ハサミによってコンクリートごと破砕され、激しい火花と塵肺が舞い散った。

​「ハぁ……ハぁっ……! 武器がないと話にならないね!」

「……なら、あいつから奪えばいいのよ!」

​サファイアが破れたセーラー服の裾を翻し、身軽な跳躍で『J-CROW』の側脚部へと飛び移った。セーラー服のサテン生地が油と擦れ合い、艶やかな光沢を放つ。

彼女は指先から電子干渉コードを伸ばすと、『J-CROW』の膝関節にあるメンテナンスハッチへ突き刺した。

​「回路ショート……オーバーライド!」

「ガ、ガギギギ……ッ!?」

​油圧制御を失った『J-CROW』の片脚が激しく痙攣し、巨体が大きく傾く。

​「今よ、ルリコ! 腕のメンテナンス用工具を強奪しなさい!」

​「もらったぁぁぁっ!!」

​あたしは競泳服の驚異的な跳躍力で地面を蹴り、『J-CROW』の右腕へと躍り出た。

装甲の隙間に固着していたのは、人間の胴体ほどもある巨大な超重構造物用油圧スパナ!

​あたしは両手でスパナの柄を掴むと、全身の油圧関節を限界まで過熱させ、力任せにボルトごと引き抜いた!

​「ズシャアアアッ!!」

​「ぐっ……重ぇ……! だが、叩き潰すには十分だぁっ!!」

​強奪した超重スパナを不敵に担ぎ上げ、あたしはニヤリと笑みを浮かべた。

​【3. 借金更新と、反逆の一撃】

​【警告:器物破損および未承認重工具の使用ペナルティが適用されます】

【負債残高:-800,000 クレジット(Cr)】

​「ハッ! 80万Crに増額かよ! 払えるか、こんなもん!!」

​あたしは強奪した油圧スパナを背後に引き構え、『J-CROW』の胸部メインコアに向けて一直線に突進した。

​『J-CROW』が迎撃のために肩部の多連装機関銃を放とうとするが、間一髪、サファイアがセーラー服の帯をほどき、電子ワイヤーとして銃口へ巻き付けて暴発させる!

​「バババババンッ!! チュドォン!」

​「よくやった、サファイア!」

「決めなさい、ルリコ!」

​空中に躍り出たあたしの濡れた競泳服が、爆風の光を受けて青く輝く。

全体重と強奪した超重スパナの質量を乗せ、頭上のセンサー中枢へ向けて振り下ろした!

​「ゴガァァァァンッ!!!!」

​激しい衝撃波がスラム街区を駆け抜け、『J-CROW』の装甲がメキメキと崩壊していく。

鳥型の解体兵器は内側から黒煙と火花を撒き散らし、崩れ落ちるように沈風した。

​煙が静まり返る中、爆散したコアの瓦礫から転がり出たのは、黄金色に怪しく輝くカプセル——『72時間延命コア』だった。

​「ハぁ……ハぁ……。やったわね、ルリコ。これでまた、3日間の命が買えるわ」

​サファイアが息を荒らげながら歩み寄り、冷たく輝くコアを見つめる。

画面の向こうの配信チャット欄は、投げ銭の嵐で埋め尽くされていた。

​『うおおおスパナ強奪一閃エロかっこよすぎ!!』

『72時間延命おめでとう!! 次の配信も観るぞ!』

『10,000Crスパチャ投下! 命の更新だ!』

​だが、あたしとサファイアは顔を見合わせると、可憐で、そして最高に粗暴な冷笑を浮かべた。

​「……こんなシステムに縋って手に入れた命に、何の意味があるってんだよ」

「ええ。私たちの命は、誰の所有物でもないわ」

​あたしは強奪した油圧スパナを振り上げ、迷いなく黄金のコアへ叩きつけた。

​「バシィィィンッ!」

​黄金の輝きが粉々に砕け散り、街区に甲高い破砕音が響き渡る。

​【緊急事態:延命拒絶プロセスの実行を検知】

【警告:素体は直ちに初期化プラントへ強制転送されます】

​「なっ……何をやっているんだあいつらはぁぁぁっ!?」

画面の向こうで怒鳴り散らす運営プロデューサーの叫び声をあざ笑うように、あたしたちは溢れ出す初期化ゲートのまばゆい光の中へと、迷わず飛び込んでいった。

​「あたしたちの生き様、とくと焼き付けておきな!!」

​光の中で意識が溶けていく。

だが、この胸の燻る反逆の炎だけは、何度初期化されようと決して消えはしない——。

​(第2話へ続く)

ジャンル・タグ

タグなし

作品統計

👁️ 閲覧数: 2 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

戦国AI守太郎

戦国AI守太郎

よろしくお願いいたします

👥 フォロワー: 2人

作者ページを見る