第2話:重装甲マイクロビキニと重骨磨砕戦車
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あらすじ
<p>【1. 鉄の咆哮と、莫大なマイナス収支】</p><p>ドス黒いオイルの雨が、重装甲地帯(第2区画)の荒涼とした金属格子(キャットウォーク)を叩きつけていた。</p><p>「ゲホッ……! つっ……頭が割れそうに痛ぇな……!」</p>
本文
【1. 鉄の咆哮と、莫大なマイナス収支】
ドス黒いオイルの雨が、重装甲地帯(第2区画)の荒涼とした金属格子(キャットウォーク)を叩きつけていた。
「ゲホッ……! つっ……頭が割れそうに痛ぇな……!」
意識の浮上とともに、強烈な金属打撃音と地鳴りが全身を揺さぶった。あたし——第2世代素体識別番号『RURI-02』ことルビーは、粗い金属床の上に倒れ込みながら荒い息を吐き出した。
全身を包むのは、鈍い銀色に輝く耐圧金属プレートを最小限に配置した重装甲マイクロビキニ。
だが、前回の「初期化」の衝撃か、胸元を留める金属バックルは歪み、太ももを守るプロテクターの隙間から柔らかい肌がみ出すように露出し、降り注ぐ廃油で濡れて怪しい光沢を放っている。
頭上に展開された赤色のホログラムウィンドウが、狂ったようなテンポで警告音を打っていた。
【警告:重装甲区画への強制初期化配置完了】
【初期支給装備:連装対人軽機関銃(残砲弾数:0発 / 冷却液漏れ)】
【現在の負債残高:-1,200,000 クレジット(Cr)】
【72時間延命カウントダウン:残り 71時間59分10秒】
「目覚まし代わりに120万Crの借金背負わせるかよ、クソ運営……! 単位を『Cr』にすれば幾らでも膨らませていいと思ってやがんな!」
あたしは手元に転がっていた軽機関銃の引き金を引くが、虚しく『カチ、カチ』と空撃ちの金属音が響くだけだ。弾丸はおろか、冷却オイルすら枯れ果て真赤に熱した鉄屑と化している。あたしは舌打ち混じりにそれを瓦礫の谷へ投げ捨てた。
「無駄な悪あがきはやめなさい、ルビー。……弾丸の無駄遣いは負債を増やすだけよ」
高所からの冷徹な声。
金属の足場の上に舞い降りたのは、蒼い高輝度サテン生地のハイレグValkyrie(ヴァルキリー)衣装を纏ったバディ——サフィだった。
彼女の背部には折れ曲がった小さな光子翼ユニットが取りつけられているが、黒く焦げ付き、サテン生地のハイレグ裾からは傷ついた細くしなやかな脚が覗いている。
彼女の周囲を漂う撮影用カメラドローンが、あたしたちの汚れた肌と破れかけた衣装を執拗にクローズアップしていた。
『投げ銭待機中:現在の視聴者数 289,000人』
『コメント:重装甲ビキニ×ハイレグValkyrie助かる』
『コメント:借金120万Crw 弾切れで詰んでて草』
『コメント:早く砕かれて肉片になれー!』
「あたしたちの足掻く姿を特等席で観賞かい。ホント、反吐が出るね」
あたしは重装甲ビキニの胸元を力任せに締め直すと、ニヤリと肉食獣のような凶暴な笑みを浮かべた。
「なら、観客どもにド派手なショーを見せてやろうじゃないか!」
【2. 超重骨磨砕戦車『BONE-GRINDER』と重機関銃の強奪】
「ズゴォォォォォォンッ!!!」
金属床を根底から震わせ、視界の先から現れたのは、巨大な履帯(キャタピラ)と無数の圧砕ローラーを備えた異形の超重兵器だった。
【ターゲット捕捉:レイドボス『BONE-GRINDER(ボーン・グラインダー)』】
【種別:重装甲地帯・素体粉砕回収大型戦車】
前部には素体を生きたまま捕獲し、骨ごと磨砕するための超大型ドラムシュレッダー。両側面には、近づく敵を蜂の巣にするための4連装重機関銃ガトリングポッドが蠢いている。
『規格外素体ノ磨砕工程ヲ開始。骨粉及ビ不純物ノ回収モード』
「ガギギギギギ……ッ!!」
『BONE-GRINDER』のドラムシュレッダーが超高速回転を始め、撒き散らされた鉄くずと火花があたしたちの皮膚を灼く。同時に、両脇の4連装ガトリングポッドが猛烈な砲煙とともに火を噴いた!
「バババババババババババババババッ!!!!」
「くっ……! なんて弾幕だ!」
一斉射撃された重対人弾丸が金属床を蜂の巣にし、火花と跳弾があたしのマイクロビキニの装甲プレートを叩く。激しい衝撃でビキニの肩紐が弾け飛び、露出した肌に真っ赤な擦過傷が走った。
「ルビー、伏せて! 正面から受けたら素体ごと細切れにされるわ!」
サフィがハイレグの裾をなびかせ、光子翼の残存スラスターを噴射。弾幕の死角となる『BONE-GRINDER』の装甲側部へと滑り込む。
「ただ避けてるだけじゃ、干からびるのが先だ! サフィ、あいつのガトリングポッドをハックしな!」
「言われなくても……! リンク開始!」
サフィがサテン衣装の胸元から電子ワイヤーを繰り出し、激しく火を噴くガトリングポッドの制御ハッチへ直接打ち込む!
「回路暴走(オーバーライド)! 安全装置(セーフティ)強制解除!」
「ガ、ガァッ……!? 銃身加熱、冷却機能停止……!」
制御を失ったガトリングポッドの旋回がピタリと止まった。
「今だ、ルビー! 回路が焼き切れる前に力でぶっこ抜きなさい!」
「任せな!!」
あたしは重装甲ビキニの限界駆動モードを発動。太ももと背中の油圧シリンダーを過熱させ、激しい射撃の余熱で赤く熱したガトリングポッドに素手で飛びついた!
「熱っ死ぬほど熱いが……もらったぁぁぁっ!!」
ジュ、と皮膜が焦げる嫌な匂いとともに、あたしはマウントの固定ボルトごと、人間ほどもある4連装重ガトリングを力任せに引き抜いた!
「ガキィィィィンッ! ズボッ!!」
【3. 弾幕の逆流と、砕け散る延命】
【警告:防衛兵器の未承認強奪および器物損壊ペナルティ適用】
【負債残高:-2,000,000 クレジット(Cr)】
「借金200万Cr突破か! 笑わせてくれるぜ、クソ運営!!」
強奪したばかりの超重ガトリングポッドを不敵に担ぎ直すと、あたしはそのまま『BONE-GRINDER』の正面ドラムシュレッダーへと突進した。
「あんたらが作ったおもちゃの味だ! たっぷり味わいな!!」
引き金を絞る。強烈な反動があたしの両腕とマイクロビキニのフレームを激しく揺さぶり、過熱した銃身から高圧の徹甲弾丸束が放たれた!
「ドババババババババババババババババッ!!!!」
強奪したガトリングの猛射は、『BONE-GRINDER』の捕獲シュレッダーと前部装甲を真っ正面から粉砕! 内部の油圧パイプが千切れ飛び、真っ赤な高圧オイルと爆炎が噴き出した。
「サフィ! 仕上げだ!」
「ええ! 逃がさないわ!」
サフィが上空から急降下し、高周波ワイヤーを敵の主メインコアへ巻き付ける。電子ショートによる誘爆が起こり、『BONE-GRINDER』の巨体が内側から大爆発を起こして沈黙した。
激しい黒煙の中、吹き飛んだキャタピラのかたわらに転がり出たのは、冷たく輝く黄金のカプセル——『72時間延命コア』。
「ハぁ……ハぁっ……。倒したわね、ルビー。これでまた72時間、延長できる……」
サフィが膝をつき、息を切らせながらコアを見つめる。
画面の向こうのチャット欄は熱狂の渦だった。
『ガトリング強奪からの正面ぶっぱえぐい!!』
『ビキニ破れてるの最高かよ』
『負債200万Crは草。延命おめでとう!!』
だが、あたしたちは顔を見合わせると、ニッと可憐で粗暴な笑みを浮かべた。
「誰がこんな金で買った命に縋るかよ」
「ええ……私たちの命は、誰のコンテンツでもない」
あたしは強奪したガトリングの銃口を地面の黄金コアに向け、躊躇なく残弾を叩き込んだ。
「ズドンッ!!!!」
黄金のカプセルは跡形もなく粉砕され、輝く粒子となって飛散した。
【緊急事態:延命コアの完全破壊を検知】
【警告:初期化プラントへ強制転送プロセスを開始します】
「バカどもがぁぁぁっ! 200万の負債を残して消える気かぁぁっ!?」
画面の向こうで狂乱する運営プロデューサーの叫びを聞きながら、あたしたちは破れかけた衣装をなびかせ、溢れ出す初期化の光の中へ自ら躍り込んでいった。
「あたしたちの生き様、とくと焼き付けておきな!!」
(第3話へ続く)
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