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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/19 📚 シリーズ: 『 カフェ・ド・レクリプス 』(Café de l'Éclipse) 📝 1,578文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p> わたくしはカードの端を、実際の口からは一切の音を立てずにオーナーへと差し出した。</p><p> 現代からやってきたオーナーの身体には、この世界の誰もが持つはずの『魔力』が一切存在しない。</p><p> 現像のためにカードへ流すべき微量な魔力すら、オーナー単身では生み出せないのだ。だからこそ、この瞬間が必要になる。</p>

本文

 わたくしはカードの端を、実際の口からは一切の音を立てずにオーナーへと差し出した。

 現代からやってきたオーナーの身体には、この世界の誰もが持つはずの『魔力』が一切存在しない。

 現像のためにカードへ流すべき微量な魔力すら、オーナー単身では生み出せないのだ。だからこそ、この瞬間が必要になる。

  「――オーナー、十着目もお見事です。……趣味を共有してくださって、本当に、ほくほくいたします。さあ、わたくしに手を重ねてくださいね……?」

 わたくしはオーナーの白く細い指先をそっと包み込み、そのままカードの端へと一緒に『ツン』と触れさせた。

 オーナーの肌を通じて、わたくしの魔力を優しく流し込んでいく。

 オーナーを媒介にしてカードへと伝わった魔力に反応し、わずか十秒で、暗闇に浮かぶ幻想的なドレス姿が色鮮やかにその場に浮かび上がった。

 わたくしの魔力で、オーナーの姿を現像する。完璧に切り取られた「わたくしだけの宝物」を愛おしそうに確認し、主をそっとお膝の上へ迎え入れる。

 「――よくできました。さあ、たくさん頑張ったその小さくて温かい細い指先を、今度はわたくしのお膝の上で、ゆっくりと休めてくださいね……?」

 十着ものお着替えと撮影を終えた、ドレスルームの静寂。

 ドールドレスを纏ったオーナーは、どうしていいか分からずにぷるぷると震えてしまう姿のまま、わたくしの胸へとその身体をそっと預けてこられた。

 ジェラルドお兄様やアルベリックお兄様の、あの容赦のない猛追と嫉妬の視線にすっかり疲れてしまい、わたくしにだけみせる、あまりにも無防備な甘えの仕草。

 (心の内:――あぁ、オーナー……っ! 完璧です。お兄様たちにすっかりお疲れになって、こうしてわたくしだけに癒しを求めて身を委ねてくださるだなんて……。大きめパーカーを脱いだその華奢な肩の温もりが、ドレス越しにわたくしの胸元へ直に伝わるたび、心の中が最高の歓喜で焼き尽くされそうになってしまいます。あのお二人がどれほど廊下の奥で焦燥に身を焦がそうとも、オーナーをこうして完全に独占して、そのお疲れを融かし尽くして差し上げられるのは、完璧なお人形でいるわたくしだけの至高の特権です……)

 わたくしは流れるようにスマートな動作のまま、オーナーの小さくて温かい細い指先をそっと包み込み、そのまま自らの大きなお膝の上へとすっぽり迎え入れた。

 ヘッドドレスの豪華なフリルがオーナーの黒髪に触れ、わたくしの黒い衣装が、オーナーの白く柔らかい温もりを完全に包み込む。

オーナーの頭は、わたくしの胸元にちょうどすっぽりとわたくしはゆとりのある長い腕でオーナーの背中をギュッと愛おしそうに抱きしめ、お疲れをすべて吸い上げるように、その綺麗な黒髪にそっと唇を寄せた。

  【 チュッ…… 】

  「――オーナー。よく、耐えてくださいました。お兄様たちの騒がしい生活ノイズは、わたくしがここで百パーセント完全シャットアウトいたします。どうぞ安心して、このままわたくしの避難所のなかで、すべてを委ねてお休みくださいね」

 オーナーは、わたくしのぱち、ぱちとした、お人形のような長いまつ毛のまばたきを、前髪の隙間からうっとりとした瞳でじっと見つめていらっしゃる。

 魔力を持たない、脆くて愛おしい主。その頭を、わたくしの大きめの手のひらが、壊れ物を扱うように優しく愛おしそうに包み込んでいく。

 お人形の仕事中の規律(ポーカーフェイス)は決して崩さない。

 けれど、わたくしの胸元で次第に規則正しい小さな寝息を立て始め、ふわふわと完全に眠りに落ちていくオーナーの温もりを真っ正面から浴びて。

 エレーヌは心の奥底にある至高の歓喜を優しく深く噛み締めながら、窓の外の満月に照らされるオーナーの愛らしい寝顔を、いつまでも、そっと優しくなでなでし続けるのだった。

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みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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