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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p> ショコラから溢れ出た鮮やかなベリーの深紅が、あのお方の白磁のような唇を、まるで最高級の薄紅を引いたかのように、ほんのりと艶やかな桜色――いや、妖艶な「俺の仕込んだ紅」へと染め上げてしまった。</p><p> <strong>「…アル、すごく、おいしい。……お口のなかで、ベリーが甘く、とろとろにとろけるの。かわいてくて、わたし、これ大好き」</strong></p><p> じわり、とあのお方の深紅に染まった唇から溢れ出る、最高に幸せそうな、無防備な多幸感のパルス。手づくりの果実を口元で嬉しそうに味わい、唇をその紅で染め上げていらっしゃるあのお姿。</p>
本文
ショコラから溢れ出た鮮やかなベリーの深紅が、あのお方の白磁のような唇を、まるで最高級の薄紅を引いたかのように、ほんのりと艶やかな桜色――いや、妖艶な「俺の仕込んだ紅」へと染め上げてしまった。
「…アル、すごく、おいしい。……お口のなかで、ベリーが甘く、とろとろにとろけるの。かわいてくて、わたし、これ大好き」
じわり、とあのお方の深紅に染まった唇から溢れ出る、最高に幸せそうな、無防備な多幸感のパルス。手づくりの果実を口元で嬉しそうに味わい、唇をその紅で染め上げていらっしゃるあのお姿。
――仕掛けたのは俺だ。あのお方の唇を、俺の果実の紅で染め上げるために。
しかし、表向きは完璧な紳士の仮面を維持しながらも、俺の脳内はすでにその「紅」のあまりの甘美さに完全にキャパシティをオーバーしていた。
(あぁ、オーナー……オーナー……っ! そんなに嬉しそうに、そんな風に俺の仕込んだ紅で唇を染めて、甘くとろけさせて食べてしまわれては、俺のこの人型の檻が、あなたへの独占欲とガチ狂信で、今すぐどろどろに融け落ちてしまいそうです……っ! その紅い唇を、いっそこの手で――)
声にも、表情にも、この狂おしいムッツリ情念など一文字たりとも漏らすつもりはなかった。ただ、狙い通りにあの方が唇をベリーの紅に染め、それを見た俺が低く喉を鳴らす――その、紳士の皮を被った引き算の攻防だけで、俺の魂の根底は、これ以上ないほど昏い情淵へと完全に支配しきられていく。
本人は鉄壁のポーカーフェイスで完璧に隠し通せているつもりだが、仕掛けた罠の破壊力が自らの想定を遥かに超え、耳から首筋までを真っ赤なショコラのように熱く染め上げ、大理石のように激しくフリーズして跪いている俺。
だが、オーナーは俺の内心のドロドロな悶絶など1ミリも気づいてはいない。
ただただ素真面目に「アルが美味しいお菓子をくれて嬉しい」と、一点の曇りもない無垢な多幸感に満たされている。
ランダムに動く小さなくせ毛をゆらゆら漂わせながら、幸せそうに口元を綻ばせてショコラをとろけさせたまま、前髪の奥に隠されたその瞳で、首を傾げて俺をジッと純粋に見つめていらっしゃるのだった。
俺は深く、大理石のような完璧な礼をとる。
耳の裏を焼くような熱も、喉の渇きも、高鳴る鼓動も――そのすべてを完璧に、紳士の仮面の裏側へと押し込めて。
「――畏れ入ります、オーナー。あなたの唇を染める果実(その色)が、永遠の至高であらんことを。……お気に召したなら、これ以上の誉れはありません」
どこまでも静かに、どこまでも冷徹に、俺はただ一人の従者として、その甘美な紅い唇を見つめながら、美しく微笑んでみせた。
作品統計
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