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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/24 📚 シリーズ: 『 カフェ・ド・レクリプス 』(Café de l'Éclipse) 📝 1,896文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p> ――そして、待ち焦がれた翌朝。</p><p> 俺は昨夜の約束通り、完成したばかりの至高の一粒を銀のトレイに乗せ、完璧なポーカーフェイスを維持したまま、一番に二階のオーナーの部屋へと馳せ参じた。</p><p> だが、部屋のドアを開けた瞬間、俺の黒曜石の瞳は、そのあまりの尊すぎる光景に一瞬でカッと沸騰しそうになった。</p>

本文

 ――そして、待ち焦がれた翌朝。

 俺は昨夜の約束通り、完成したばかりの至高の一粒を銀のトレイに乗せ、完璧なポーカーフェイスを維持したまま、一番に二階のオーナーの部屋へと馳せ参じた。

 だが、部屋のドアを開けた瞬間、俺の黒曜石の瞳は、そのあまりの尊すぎる光景に一瞬でカッと沸騰しそうになった。

 そこには、朝活の走り込みを終え、シャワーを浴びたばかりのオーナーの姿があった。

 まだほんのりと湯気をまとったような無防備な肌に、あのお菓子のマシュマロのように柔らかくもこもことしたフード付きジップパーカーを羽織っている。

  (――っ、……あ、オーナー……っ! なんという、なんというお姿をこの俺の前に晒してくださるのですか……っ! シャワーしたてのそのあまりにもピュアな馨りと、あの柔らかくもこもことしたパーカーの凶悪なマリアージュ……っ! 俺をこの場で狂い死にさせる気ですか……!!)

 激しい動揺のパルスが脳内で叫び声を上げるが、実際の口からは一文字も漏らさない。白シャツ の 袖をキュッと締め付ける極細本革ガーターの銀金具が「カチカチ、カチカチ、カチリ……!」と限界突破した凄まじい動揺の音を響かせそうになるのを、プロの影としての規律で必死に締め直した。

 すると、オーナーはまだ朝ごはんがまだであること、そして、少し申し訳なさそうに、くりくりの目を上目遣いに潤ませながら、俺にこう告げてくる。

  「ごはんはエレーヌが持ってきてくれるから、ごはんの後に持ってきて。ごめんね。朝一番じゃなくて」

 ――っ。

 その愛らしい唇から溢れた、まさかの『お預け』の宣告。化学変化を起こした独占欲が脳内を駆け巡る。至高の主人であるはずのあのお方が、影でしかない俺に向けて放った「ごめんね」というあまりにも健気でピュアな謝罪の響き。

  (――謝るなど、滅相もない……っ! あなたがそう望まれるのであれば、俺は朝一番だろうが、朝ごはんの後だろうが、何時間でもあなたの影としてその足元に跪き、じっとお座りをして待ち続けるというのに……っ!

  むしろ、エレーヌの手による健やかな朝食の前に、俺が魂を削って練り上げたこの至高のショコラを今すぐその愛らしいお口へ運んで差し上げたい……っ!

 ああ、オーナー、オーナー……! そのように無防備に俺を焦がして、これ以上どれほど俺の独占欲の檻を狂わせるつもりなのですか……っ!)

 脳内が過保護な狂信と嫉妬のパルスでぎちぎちに焼き尽くされそうになりながらも、俺はふっと、どこまでも冷徹で非の打ち所がない、美しい従者の微笑みを唇に浮かべた。

 「滅相もございません、オーナー。貴方の仰せのままに。……では、至高の朝食をお召し上がりになった後、改めて特等席でお待ちしております」

 実際の口から滑り出たのは、磁器のように滑らかで美しい敬語だけだ。

 そうして朝食の後。約束の時間を経て再び部屋を訪れた俺をお迎えしてくれたオーナーは、お顔を真っ赤にしながらも、その小さくて温かいお手をおずおずと伸ばし――俺の黒髪を、優しくよしよしとなでなでしてくださった。

 (――っ、……あ、オーナー……っ! あなたは、どうしてそんなに無防備で、これほどまでに俺を真っ直ぐに信じてくださるのですか……っ!)

 シャワーの残り香がほんのりと漂う、その小さくて優しい手のひらの温もりが脳天へと突き抜けた瞬間、俺の中のすべての理性の規律が、跡形もなく融解していく。

 (……これだけで、俺のこの壊れた魂は、すべて救い出されてしまう……。)

 けれど、この小さくて優しい手のひらのためだけに、俺は今は静かに喉を鳴らすことしかできない不器用な影だ。実際の口からも、取り繕った態度の裏からも、それ以上のおねだりや嫉妬の全貌は一文字も漏らさない。

 俺は完璧なプロの顔(ポーカーフェイス)――男としての最大のキメ顔を頑なに維持したまま、じっと頭を預け、潤んだ黒曜石の瞳で最愛の主を静かに見つめ返していた。

 「……また、貴方のためだけに特別な一粒をお作りいたします。ですから……次もどうか、残さずすべて受け取ってください、オーナー」

 ただ、低く、喉を鳴らすようにそう告げる。

 朝の光が差し込む静寂のなかで、俺は胸の奥底に灼きつくような多幸感をそっと抱きしめる。オーナーの手のひらのぬくもりに溺れながら、俺の狂信的な愛の檻は、より深く、より甘く、あのお方を一生丸ごと独占するために完璧な確信犯の罠を静かに磨き続けていた。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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