三日目の朝、お宿にて
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
古民家のお宿には、穏やかな午後の光が差し込んでいた。銀は、みみの隣にちょこんと座っている。三日前には、山へ帰るつもりだった。
本文
古民家のお宿には、穏やかな午後の光が差し込んでいた。
銀は、みみの隣にちょこんと座っている。
三日前には、山へ帰るつもりだった。
兄にみみを紹介する。その約束も、ちゃんと覚えていた。
……覚えては、いたのだ。
ただ、このお宿で過ごす時間が、思っていた以上に心地よかった。
みみに撫でてもらって、抱きしめてもらって、頬にちゅーまでしてもらって。
嬉しさのあまり、きゅうきゅう鳴いてしまうほど、甘やかされてしまった。
そして、気がつけば三日。
みみ「……モニョモニョもね。ごめん」
銀「…………っ!」
銀の耳が、ぴんっ、と立った。
次の瞬間、ぼふっと頬が赤くなる。
銀「み、みみ……! そ、それは……!」
言葉が続かない。
銀は両手で顔を覆った。指の隙間から覗く耳まで、すっかり赤い。
銀「……謝らなくて、いいよぉ……」
小さな声だった。
銀「僕だって……みみと一緒にいたかったんだもん……」
そう言いながら、銀はそろそろと手を下ろす。
みみの顔を見て、また恥ずかしくなったのか、視線を逸らした。
銀「……嬉しかった、から」
しっぽが、ゆっくり揺れる。
銀「……いっぱい、嬉しかったんだよ」
三日間のことを思い出したのだろう。
銀の口元が、ふにゃりと緩んだ。
けれど、すぐに何かを思い出して、耳がしゅんと垂れる。
銀「…………あ」
みみと一緒に、お兄さんへ挨拶に行く約束。
三日も延びてしまった。
銀「……お兄ちゃん、待ってるよね……」
銀はしばらく黙り込んだ。
それから、みみのほうへ向き直る。
銀「……みみ」
今度は、ふざけずに呼んだ。
銀「今日、一緒に行こうね」
少しだけ不安そうに、それでも嬉しそうに笑う。
銀「僕の、お兄ちゃんに……みみを紹介したいんだ」
そう言って、銀はみみの手をそっと取った。
銀「……ちゃんと、隣にいてね?」
言った途端、また頬が赤くなる。
銀「……あ、あと……」
耳が、ぴこっ。
銀「帰ってきたら……また、なでなでしてくれる?」
言い終わる前に、銀は自分で恥ずかしくなって俯いた。
銀「…………きゅぅ」
三日間で、すっかり甘え上手になってしまった銀だった。
——さて。
お兄さんのところへ出発する前に、みみは銀に何と答えるのだろうか。
みみ「モニョモニョするかもしれません。…………。」
銀「………………えっ?」
銀の耳が、ぴこんっ。
一拍。
二拍。
銀「……み、みみ……?」
じわじわと頬が赤くなっていく。
銀「そ、それって……帰ってきてから……?」
言いかけて、銀は自分の口を両手で塞いだ。
銀「~~~~っ!」
しっぽが、ぼふんっ!
銀「……だ、だめだよぉ……僕、また嬉しくなっちゃう……」
そう言いながら、みみの隣から離れる気配はない。
むしろ、そろりと袖をつまんでいる。
銀「……でも、お兄ちゃんに会いに行くんだもんね。ちゃんとしなきゃ……」
自分に言い聞かせるように呟く。
そして、みみを見上げた。
銀「……みみ」
銀「……帰ってきたら、いっぱい一緒にいようね」
最後は、照れくさそうな笑顔だった。
けれど、その直後。
銀「…………あっ」
耳がぴんっと立つ。
銀「お兄ちゃんに会うとき、僕……どんな顔すればいいの……?」
三日間、みみに甘やかされて、すっかりふにゃふにゃになった自覚があるらしい。
銀「……いつもの僕に戻れるかなぁ……」
しっぽは、正直だった。
ふわふわ。ふわふわ。
銀くん、まだ出発すらしていない。
モニョモニョ
【えっちぃ事を言ってます。】