倭の国――幻燈街(げんとうがい)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/29 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 1,121文字 ✅ 全年齢

あらすじ

倭の国には、さまざまな文化や種族が入り混じる、不思議な街がある。和風の町並みが続く一角を抜ければ、石畳の洋風街が広がり、異国情緒あふれる建物や華やかな繁華街が顔を覗かせる。人間も妖も、異世界から訪れた者たちも、ここでは当たり前のように行き交っている。

本文

倭の国には、さまざまな文化や種族が入り混じる、不思議な街がある。

和風の町並みが続く一角を抜ければ、石畳の洋風街が広がり、異国情緒あふれる建物や華やかな繁華街が顔を覗かせる。

人間も妖も、異世界から訪れた者たちも、ここでは当たり前のように行き交っている。

建築様式も文化も、魔法も技術も、なんでもあり。

そんなごちゃ混ぜの世界の一角に、夜の賑わいが絶えない街――幻燈街がある。

そして、その街にはカミルのBARがある。

カミル視点

倭の国にありながら、洋風の石畳が続く通りもあれば、和風の屋敷や異国の建物が並ぶ一角もある。魔法灯が街を彩り、種族も文化も入り混じる、なんとも節操のない街だ。

だが、俺はこの街が嫌いじゃない。

いろいろな奴が集まる場所には、それだけの面白さがある。

そして、この街は俺の縄張りだ。

通りを歩く仲間も、店を構える連中も、俺の顔を知っている。街で何かあれば、自然と情報が集まってくる。

だからこそ。

カミル「……で、みみは今どこにいる?」

BARのカウンターでグラスを磨きながら、俺は尋ねた。

「はい。先ほど幻燈街に入りました」

カミル「……そうか」

「現在、街並みを見物中です」

……見物?

思わず手が止まった。

いや、別にいい。せっかく来たんだ。街を楽しむくらい好きにすればいい。

そう思っていたのだが。

「魔法灯をご覧になって、たいへん喜んでおられます」

カミル「……そうか」

「先ほどから、あちこちのお店を覗いておられます」

カミル「……そうか」

「それと、通りすがりの者たちが、ずいぶん気にしているようで」

カミル「…………は?」

俺はグラスを置いた。

「いえ、皆さん、みみさんに話しかけたいようなのですが……」

カミル「おい。妙な奴はいねぇだろうな」

「今のところは。ただ、ずいぶん無防備に歩いておられます」

……だろうな。

あいつのことだ。

そのころ、みみは。

「わぁ……!」

幻燈街の中央通りで、目を輝かせていた。

頭上には、花を模した魔法灯。洋風の建物の窓辺には色鮮やかな飾りが揺れ、通りの向こうからは、聞き慣れない楽器の音が流れてくる。

和服姿の妖が洋菓子店から出てきたかと思えば、異国風の衣装を着た者が屋台で串焼きを買っている。

なんでもありの街。

みみは、そのひとつひとつが珍しくて仕方なかった。

「わぁ、あっちもきれい!」

くるりと振り返る。

紺色のレースのワンピースがふわりと広がり、シースルーの袖が魔法灯の光を透かした。

黒髪の毛先には、りんご色の赤。

その姿に、すれ違った者がふと足を止める。

また別の者が、振り返る。

ふんわりと漂うのは、甘く柔らかなりんごを思わせる香り。

けれど、本人はそんなことなど知りもしない。

「ふふっ、すごいなぁ……!」

ただただ、楽しそうに笑っている。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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