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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/29 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 1,062文字 ✅ 全年齢

あらすじ

「ボス。みみさん、菓子屋の前です」カミル「……ああ」「飴細工をご覧になっています」

本文

「ボス。みみさん、菓子屋の前です」

カミル「……ああ」

「飴細工をご覧になっています」

カミル「……ああ」

「とても楽しそうです」

カミル「それはもういい」

思わず低い声が出た。

報告してくる仲間に罪はない。むしろ、よく見てくれている。

問題は、みみだ。

連絡はない。

そもそも、あいつの持ち物はスマホじゃなくて木札だ。連絡手段が限られているのはわかる。

……いや。

連絡できるかどうか以前に、あいつには連絡を入れるという発想がないんじゃないか。

カミル「……ったく」

俺は額に手を当てた。

あいつは自由人だ。

行きたいと思ったら行く。見たいと思ったら立ち止まる。気になったものがあれば、そちらへふらふら歩いていく。

長命種だかなんだか知らねぇが、時間の感覚まで自由なのかもしれない。

カミル「……俺に会いに来るんじゃなかったのかよ」

ぽつりと漏れた言葉に、近くの仲間が一瞬だけこちらを見た。

「……ボス?」

カミル「何でもねぇ」

俺がこの街でどういう立場にいるのか。

みみは、ろくに知らない。

街の連中が俺をどう呼ぶか。どれだけの者が俺の指示に従うか。俺がこの街でどれほどの力を持っているか。

そんな情報、あいつには必要ないのだろう。

俺がこの街にいる。

だから、会いに来る。

ただ、それだけ。

……まったく。

カミル「……調子が狂う女だ」

俺は小さく息を吐いた。

俺の立場を知って近づく奴はいる。俺の力を頼りにする奴も、顔色をうかがう奴もいる。

だが、みみは違う。

俺が誰であろうと、そんなことは関係ない。

会いたいから来る。

会えば笑う。

それで満足する。

……そういうところが、あいつらしい。

だからこそ、余計に困る。

もう少し自分の身を気にしてほしい。

もう少し周囲を警戒してほしい。

もう少し、俺に連絡を――。

カミル「…………いや、無理だな」

言いかけて、自分で結論を出した。

あいつにそんなことを期待するほうが間違っている。

「ボス。みみさん、中央広場を抜けました」

カミル「今度はどこだ」

「こちらへ向かっているようです」

その言葉に、俺は顔を上げた。

カミル「……こっち?」

「はい。BARのある通りへ」

ようやくか。

磨き終えたグラスを棚に戻す。

カミル「妙な奴が近づいていないか、引き続き見ておけ。だが、本人には気づかれるなよ」

「承知しました」

仲間が下がる。

俺は店内を見渡した。

カウンター。酒瓶の並ぶ棚。落ち着いた照明。いつもどおりのBAR。

別に、何かを変える必要はない。

ただ、みみが来る。

それだけだ。

……なのに、妙に落ち着かない。

カミル「……まったく。来るならさっさと来やがれ」

誰に聞かせるでもなく呟いた。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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