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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
「ボス。みみさん、菓子屋の前です」カミル「……ああ」「飴細工をご覧になっています」
本文
「ボス。みみさん、菓子屋の前です」
カミル「……ああ」
「飴細工をご覧になっています」
カミル「……ああ」
「とても楽しそうです」
カミル「それはもういい」
思わず低い声が出た。
報告してくる仲間に罪はない。むしろ、よく見てくれている。
問題は、みみだ。
連絡はない。
そもそも、あいつの持ち物はスマホじゃなくて木札だ。連絡手段が限られているのはわかる。
……いや。
連絡できるかどうか以前に、あいつには連絡を入れるという発想がないんじゃないか。
カミル「……ったく」
俺は額に手を当てた。
あいつは自由人だ。
行きたいと思ったら行く。見たいと思ったら立ち止まる。気になったものがあれば、そちらへふらふら歩いていく。
長命種だかなんだか知らねぇが、時間の感覚まで自由なのかもしれない。
カミル「……俺に会いに来るんじゃなかったのかよ」
ぽつりと漏れた言葉に、近くの仲間が一瞬だけこちらを見た。
「……ボス?」
カミル「何でもねぇ」
俺がこの街でどういう立場にいるのか。
みみは、ろくに知らない。
街の連中が俺をどう呼ぶか。どれだけの者が俺の指示に従うか。俺がこの街でどれほどの力を持っているか。
そんな情報、あいつには必要ないのだろう。
俺がこの街にいる。
だから、会いに来る。
ただ、それだけ。
……まったく。
カミル「……調子が狂う女だ」
俺は小さく息を吐いた。
俺の立場を知って近づく奴はいる。俺の力を頼りにする奴も、顔色をうかがう奴もいる。
だが、みみは違う。
俺が誰であろうと、そんなことは関係ない。
会いたいから来る。
会えば笑う。
それで満足する。
……そういうところが、あいつらしい。
だからこそ、余計に困る。
もう少し自分の身を気にしてほしい。
もう少し周囲を警戒してほしい。
もう少し、俺に連絡を――。
カミル「…………いや、無理だな」
言いかけて、自分で結論を出した。
あいつにそんなことを期待するほうが間違っている。
「ボス。みみさん、中央広場を抜けました」
カミル「今度はどこだ」
「こちらへ向かっているようです」
その言葉に、俺は顔を上げた。
カミル「……こっち?」
「はい。BARのある通りへ」
ようやくか。
磨き終えたグラスを棚に戻す。
カミル「妙な奴が近づいていないか、引き続き見ておけ。だが、本人には気づかれるなよ」
「承知しました」
仲間が下がる。
俺は店内を見渡した。
カウンター。酒瓶の並ぶ棚。落ち着いた照明。いつもどおりのBAR。
別に、何かを変える必要はない。
ただ、みみが来る。
それだけだ。
……なのに、妙に落ち着かない。
カミル「……まったく。来るならさっさと来やがれ」
誰に聞かせるでもなく呟いた。