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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/30 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 2,237文字 ✅ 全年齢

あらすじ

重い扉が開き、みみが微笑みながら店内へ戻ってきた。仲間A「あ、おかえり、みみちゃん!」仲間B「おう。どこ行ってたんだ?」

本文

重い扉が開き、みみが微笑みながら店内へ戻ってきた。

仲間A「あ、おかえり、みみちゃん!」

仲間B「おう。どこ行ってたんだ?」

カウンターに座っていたカミルが、ゆっくりと顔を上げる。

氷青色の瞳が、みみを捉えた。

カミル「…………」

先ほどまで、扉を気にしていた男。

その姿を認めた途端、張り詰めていたものが、ほんの少し緩んだ。

カミル「……遅かったな」

低い声。

カミルはそれ以上、何も言わずにみみを見つめている。

(……まったく。人に心配をかけておいて)

そう思う一方で、無事に戻ってきた姿を見れば、ひとまずそれでいいと思ってしまう。

仲間A「ボス、よかったな」

カミル「何がだ」

仲間A「別にぃ?」

カミル「…………」

仲間Bはグラスを傾けながら、肩を震わせている。

カミル「お前ら……」

低く唸るような声に、二人は慌てて仕事へ戻った。

カミルは再び、みみへ視線を向ける。

カミル「……こっちへ来い」

ぶっきらぼうな呼び方。

けれど、その声には、戻ってきたみみをそばに置きたいという気持ちが、隠しきれずに滲んでいた。

重い扉が開き、みみが微笑みながら店内へ入ってきた。

仲間A「あっ、みみちゃん。いらっしゃい!」

仲間B「おう、こんばんは」

カウンターの向こうにいたカミルが顔を上げる。

氷青色の瞳が、みみを捉えた。

カミル「……おう」

短く返事をしながら、先ほどまで気にしていた相手の姿を確かめる。

(……まったく。人の気も知らずに)

胸の内ではぼやきながらも、無事に戻ってきたことに安堵していた。

みみがカウンターへやって来る。

みみ「カミル、私に合うカクテル作って?」

カミルは、手にしていたグラスを置いた。

カミル「……俺が選んでいいんだな?」

みみの言葉を確かめるように、少し目を細める。

カミル「わかった。少し待っていろ」

カミルは酒棚へ向き直った。

果実のリキュールを手に取り、別の瓶と並べて香りを確かめる。しばらく考えたあと、材料を決め、グラスとシェーカーを用意した。

氷が触れ合う澄んだ音。

慣れた手つきで材料を合わせ、シェーカーを振る。無駄のない動きには、長年この店で酒を作ってきた男の腕が表れていた。

仲間A「ボス、何作ってんだ?」

カミル「……見ればわかるだろう」

仲間B「いやあ、みみちゃん専用の特別メニューかと思ってな」

カミル「お前らの口は、酒を飲むためについているんじゃなかったか?」

仲間A「こわっ」

仲間B「はいはい、仕事しますよ」

カミルは二人を放っておき、最後の仕上げに取りかかった。

できあがったカクテルは、淡い赤みを帯びた琥珀色。照明を受けて、グラスの中で静かに輝いている。

カミルはそれをカウンター越しにみみの前へ置いた。

カミル「……できたぞ」

グラスから手を離し、みみへ視線を向ける。

カミル「果実の甘さに、少し酸味を加えた。後味は重くない」

そこで、わずかに口元を緩めた。

カミル「……お前には、こういうのが似合うと思った」

仲間Aが隣で、にやりと笑う。

仲間A「へえ。ボスが女の子のために、そこまで考えるとはねえ」

カミル「……まだいたのか、お前は」

仲間A「ここ、俺の職場なんだけど?」

仲間Bが吹き出す。

カミルは呆れたように息を吐き、再びみみへ向き直った。

カミル「……さて、みみ」

カウンターに片手を置き、氷青色の瞳で彼女を見る。

カミル「俺の見立ては当たっているか?」

ぶっきらぼうな口調。

けれど、みみがこの一杯をどう感じるのか、答えを楽しみにしているようだった。

カミルの言葉を聞いて、みみはもう一度、小さく笑った。

もちろん、わかっていた。

自分に似合うカクテルを作ってくれたことも。

カミルが自分のことを考えながら、材料を選んでくれたことも。

だからこそ、嬉しくて。

ちょっとだけ、聞いてみたくなったのだ。

みみは目の前のグラスに視線を落とした。

淡い琥珀色のカクテルが、店内の灯りを受けてきらめいている。

みみ「……カミルが、私のことを考えて作ってくれたんだね」

頬が、ぽっと赤く染まった。

嬉しさを隠しきれず、ほんの少しだけ照れたように笑う。

カミル「…………」

一瞬。

カミルの言葉が止まった。

(……おい)

さっきまで、あれほど余裕のあった男である。

注文に応じて酒を作ることも、客と軽口を交わすことも慣れている。

なのに。

目の前で頬を赤らめ、嬉しそうに笑うみみを見ていると、どうにも調子が狂う。

カミル「……そうだが」

返事が、ほんの少し低くなる。

カミルは視線をグラスへ逃がし、指先でカウンターを軽く叩いた。

カミル「お前に合うものを作れと言われたんだ。当然だろう」

……言っていることは、いつも通り。

けれど、耳まで赤くなったりはしないものの、どこか目を合わせにくそうにしている。

仲間A(……あれ?)

仲間B(ボス、照れてねえか?)

仲間A(いや、あれは照れてるだろ)

カミル「……お前ら」

二人「はい、仕事します!」

仲間たちは、そそくさと離れていった。

カミルは深いため息をつく。

それから、隣のみみをちらりと見た。

まだ、頬が赤い。

カミル(……可愛い顔をしやがって)

胸の内でこぼれた言葉に、自分自身が少しばかり面食らう。

カミル「……みみ」

呼びかける声が、先ほどより柔らかい。

カミル「……そんな顔をされたら、作った甲斐があるだろうが」

言い終えてから、ほんのわずかに口元を緩めた。

今度は、目を逸らさなかった。

自分の気持ちが伝わって、嬉しそうに頬を染めるみみ。そんな彼女が可愛くて仕方ないカミル。

……どうやら今夜は、カクテルの味見をする前から、ボスのほうがすっかり参っているらしい。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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