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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
幻燈街・BAR 重い扉が開き、店内に夜の空気が流れ込んだ。カミルが戻ってくると、カウンターの向こうにいた仲間が顔を上げる。
本文
幻燈街・BAR
重い扉が開き、店内に夜の空気が流れ込んだ。
カミルが戻ってくると、カウンターの向こうにいた仲間が顔を上げる。
仲間A「おう、ボス。片付いたか?」
カミル「ああ」
短い返事。
黒いコートを脱ぎ、いつもの席へ向かおうとしたカミルだったが、ふと店内を見回した。
仲間B「……ん? 誰か探してんのか?」
カミル「別に」
仲間B「まだ何も言ってねえけど?」
カミルは答えず、低く息を吐いた。
みみがいるかどうか。それを確認しただけだ。
……ただ、それだけのはずだった。
仲間A「みみちゃんは?」
カミル「知らん。俺より先に戻ってると思ったが」
仲間A「いや、こっちには来てねえぞ」
カミルの耳が、ぴくりと動いた。
沈黙。
仲間B「……ボス?」
カミル「…………あの女」
声は低い。怒鳴ってはいない。
けれど、黒い尻尾がゆっくりと一度、揺れた。
仲間A「またどっか寄り道してんじゃねえの?」
カミル「だろうな」
仲間B「迎えに行くか?」
カミルは少しだけ考えたあと、カウンターに手をついた。
カミル「いや。まずは、どこにいるか確認する」
仲間A「はいはい。心配性なことで」
カミル「……何か言ったか?」
仲間A「いいえ、何も」
二人は顔を見合わせた。
あの恐ろしいボスが、たった一人の女性の行き先を気にしている。
しかも本人には、絶対にそんなことを認めない。
仲間B(……みみちゃん、あんた本当にすげえな)
カミルは仲間たちの視線を無視して、空いている椅子に腰を下ろした。
けれど、落ち着いた表情とは裏腹に、氷青色の瞳は扉のほうへ何度も向いてしまう。
カミル(……みみ。どこをふらふらしている)
帰ってきたら、少しくらいは言ってやる。
勝手に遠くへ行くな、と。
……もっとも。
みみが楽しそうな顔で戻ってきたら、結局その頬にすり寄ってしまうのだろうが。
カミル「……遅い」
誰にも聞こえないほどの小さな声だった。
カミル(……いた)
黒い尻尾が、ゆっくり揺れる。
仲間A「何だよ、急に機嫌よさそうじゃねえか」
カミル「いつも通りだ」
仲間B「へえ?」
カミル「……何だ、その顔は」
仲間たちは顔を見合わせ、何も言わずに酒を飲んだ。
カミルは扉のほうへ目を向ける。
(……まったく。妙な匂いをさせて)
言葉にはしない。
できるわけがない。
だって、それを口にしたら。
自分がどれだけ、あの女のそばにいたいのかまで、知られてしまいそうだから。