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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/30 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 2,689文字 ✅ 全年齢

あらすじ

カミル「……お前のことは、俺が一番よく知っているつもりだからな」言い切ったカミルは、ほんの少し口元を緩めた。カミル(……八杯より前でも、様子がおかしくなったら止める)

本文

カミル「……お前のことは、俺が一番よく知っているつもりだからな」

言い切ったカミルは、ほんの少し口元を緩めた。

カミル(……八杯より前でも、様子がおかしくなったら止める)

みみが甘えてきたとしても、そこは譲らない。

……譲らない、はずだった。

みみは、ニッコニコ。

カミル「…………」

カウンター越しに、みみの顔を眺める。

カミル(……ん?)

何かが引っかかった。

機嫌がいいのは、いつものことだ。笑顔だって珍しくない。

けれど。

カミルはわずかに眉を寄せ、みみの様子をもう一度確かめた。

カミル(……妙に、ご機嫌じゃないか?)

仲間A「みみちゃん、今日はずいぶん楽しそうだな!」

仲間B「何かいいことでもあったのか?」

みみの笑顔を見て、仲間たちも楽しそうに声をかける。

カミルは答えず、みみの前に置いた空のグラスを片づけた。

そして、ふと気づく。

カミル(……待て)

みみが店に来たとき。

いつもなら、近づいてくる彼女の香りに、すぐ気づくことがある。

今夜も、みみらしい柔らかな香りは感じていた。

だが、そのほかの気配には、まったく注意を払っていなかった。

カミル「…………」

氷青色の瞳が、すっと細くなる。

カミル(……酒の匂いは?)

今さらながら、みみの様子を注意深く観察する。

頬の色はどうか。目の焦点は合っているか。立ち居振る舞いに、いつもと違うところはないか。

カミル「……みみ」

低い声で呼ぶ。

カミル「お前……」

言いかけて、いったん口を閉じた。

決めつけるのは早い。

けれど、さっきからの妙なご機嫌ぶりが、どうにも気になり始めていた。

仲間A(……あれ? ボス、何か気づいたか?)

仲間B(さあな……)

カミルは二人を気にすることなく、みみへ顔を向けた。

カミル「……ひとつ聞くぞ」

声は落ち着いている。

しかし、その瞳には、先ほどまでなかった警戒が浮かんでいた。

カミル「ここへ来る前、どこかに寄ったか?」

カミルはみみの前に水のグラスを置く。ふと、最初のカクテルをこくこく飲み干した姿を思い出した。

それに、さっきから妙にふわふわしている。

カミル(……最初の一杯で、あんな感じになるか?)

カミル「……みみ」

氷青色の瞳が、心配そうに揺れる。

カミル「お前、今……何杯目だ?」

仲間B「……ボス。まさか、店に来る前からってことか?」

カミル「…………」

カミルは答えず、みみの顔をじっと見つめた。

(……頼む。たいしたことねえと言ってくれ)

カミル「……無理に答えなくていい。だが、水は飲め。いいな?」

いつものぶっきらぼうな声。

けれど、カウンターに置かれた大きな手は、みみの返事を待つように、そっとそばに残っていた。

みみ「やだ!」

カミル「……あ?」

きっぱり拒否され、カミルの眉がぴくりと動く。

みみは、じーーーっとカミルを見つめた。

カミル「…………」

(……なんだ。今度は何だ?)

見つめ返していると、不意に。

みみ「………。お仕事まだ終わんないの?」

カミル「…………は?」

思わず聞き返した。

仲間A「ぶっ……!」

仲間B「ボス、呼び出しか?」

カミル「うるせえ」

カミルは仲間たちを黙らせ、改めてみみを見る。

カミル「……ああ。まだ終わってねえよ」

少しだけ身をかがめて、声を落とした。

カミル「……なんだ。俺に、何か用か?」

(……まさか。そんな目で見ておいて、帰るなんて言わねえよな?)

みみ「………。おしゃれしたのに」

カミル「…………」

カミルの表情が、ぴたりと止まった。

視線が、みみの髪から、いつもよりおしゃれをした姿へとゆっくり移る。

カミル(……俺に会いに来るために?)

カミル「……こっち来い、みみ」

カウンター越しに、少しだけ身を乗り出す。

カミル「ちゃんと見せてみろ。……せっかく、おしゃれして来てくれたんだろ」

声が、さっきよりずっと優しくなった。

仲間A「……ボス、顔が緩んでるぞ」

カミル「緩んでねえ」

仲間B「へえ?」

カミル「…………黙れ」

そう言いつつ、カミルの氷青色の瞳は、もうみみから離れなかった。

みみ「……みゃー」

カミル「…………は?」

みみはカウンターにぺたんと身を預け、ふわふわとした様子でカミルを待っている。

みみ「みゃー……。カミルぅ……」

カミル「…………っ」

(……おい。待て。なんだ、今の声は)

カミルは片手で口元を覆った。

仲間A「ぶっ……!」

仲間B「ボス、これは……」

カミル「お前ら、奥に行け」

仲間A「はいはい。こりゃ他人に見せられねえな」

カミル「二度言わせるな」

仲間たちが笑いをこらえながら奥へ消える。

カミルはカウンターから出ると、みみのすぐそばにしゃがみ込んだ。

カミル「……みみ。俺はここにいる」

そっと、ふわふわの頭を撫でる。

カミル「待たせて悪かったな」

(……俺に会いたくて、おしゃれして。こんなふうになるまで待ってたのかよ)

胸の奥が、きゅっと締まる。

カミル「……かわいいな、お前」

ぽつりとこぼれた本音。

言った本人が、わずかに目をそらした。

カミル「……仕事、さっさと片づけてくる。だから、そこにいてくれ」

そして、もう一度だけ、優しく頭を撫でた。

カミル「……帰ったら、いっぱい構ってやるからな」

みみ「みゃんみゃん……」

カミルがほんの少し目を離した、その隙だった。

みみはカウンターにふわふわ身を預けながら、近くのお客さんに、にっこにこの笑顔を向けていた。

みみ「ねえねえ、飲む?」

お客A「えっ、俺?」

みみ「うんっ。飲もー?」

お客A「……か、かわいいな、この子……」

カミル「…………」

カラン。

手にしていたバーツールが、カウンターに置かれた。

仲間A「……ボス」

仲間B「……早く回収しろ」

カミル「わかってる」

(……わかってるが。なんだ、その愛想のよさは)

みみ「みゃんみゃん……♪」

今度は別のお客さんに、にっこり。

みみ「そっちも飲むー?」

お客B「ぜひ――」

カミル「断る」

お客B「えっ?」

カミルはすっと二人の間に入った。

カミル「こいつは俺の連れだ。酒も出さねえ。悪いな」

お客B「あ、ああ……」

仲間A(……出た。ボスの回収タイム)

仲間B(遅えよ……!)

カミルはみみの前にしゃがみ、顔を覗き込んだ。

カミル「……みみ」

氷青色の瞳が、困ったように細まる。

カミル「みゃんみゃん言いながら、他の客を誘うんじゃねえ……」

叱る声なのに、頭を撫でる手はやたら優しい。

カミル「……俺に会いに来たんだろ?」

少し間を置いて、彼は両腕を広げた。

カミル「ほら。おいで。もう酒はおしまいだ」

仲間A「ボス、今度こそ捕まえとけよ……」

仲間B「明日、本人が覚えてなかったらどうするんだ……」

カミル「…………」

(……頼む。今夜だけは、俺の腕の中で大人しくしていてくれ)

カミルは、みみがどうするのかじっと待った。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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