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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
みみは、ぽすん。カミルの胸板に頬を寄せて、すり……すり……。カミル「…………」
本文
みみは、ぽすん。
カミルの胸板に頬を寄せて、すり……すり……。
カミル「…………」
カミルの動きが止まった。
カミル(……なんだ、この甘え方は)
みみ「みゃん……カミルぅ……」
カミル「っ……おい、みみ」
呼んでも、ふわふわと胸元にすり寄ってくる。
カミルは困ったように眉を下げ、それから大きな手でみみの背中をそっと支えた。
カミル「……ったく。そんなに俺が恋しかったのかよ」
声には、もう叱る響きがない。
むしろ、嬉しさを隠すので精いっぱいだった。
仲間A「……ボス、すっかり懐かれてるな」
仲間B「懐かれてるっていうか……これ、もう離れないんじゃないか?」
カミル「お前ら、仕事しろ」
仲間A「はいはい」
二人が離れたのを確認すると、カミルはみみの頭を優しく撫でた。
カミル「……みみ。俺はここにいる。どこにも行かねえよ」
(……こんなに会いたがってくれてたのか)
胸の奥が、じんわり熱くなる。
けれど、ふと気づいた。
カミル「…………」
みみのふわふわした様子を見下ろし、眉を寄せる。
カミル「……お前、やっぱり飲みすぎだろ」
今度こそ、カミルはみみをそっと抱き留めたまま、カウンターの仲間へ声をかけた。
カミル「水。あと、今夜こいつに酒は出すな」
仲間B「了解」
カミルはみみの耳元で、低く優しく囁いた。
カミル「……甘えるのは好きなだけ甘えろ。だが、酒はもうおしまいだ。いいな?」
そして、少し照れたように付け加える。
カミル「……俺も、お前に会いたかったんだからよ」
みみ「ホントに? ふふ」
カミル「……ああ。本当だ」
笑いかけられて、カミルの目元がふっと緩む。
(……くそ。嬉しそうに笑いやがって)
カミルは、みみの頭をひと撫ですると、仲間たちへ顔を向けた。
カミル「悪い。俺は早上がりする」
仲間A「おっ、ついに回収か!」
仲間B「はいはい。あとは任せろ、ボス」
カミル「……店を頼む」
仲間A「みみちゃん、ボス独り占めだなあ」
カミル「……余計なことを言うな」
カミルはみみのそばに戻ると、そっと身体を支える。
カミル「ほら、みみ。帰るぞ」
ふわふわの彼女を気遣いながら、上着を手に取った。
カミル「……今夜は俺の部屋で休んでいけ。水もあるし、ちゃんとそばにいる」
少しだけ顔を近づけ、いたずらっぽく目を細める。
カミル「……それとも、俺の部屋は嫌か?」
みみ「私は自由人!!カミルのお部屋へいきたい!」
カミル「…………」
仲間A「ぶっ!」
仲間B「おい、ボス。聞いたか?」
カミル「聞こえてる」
カミルの耳まで、わずかに赤くなった。
(……普段はあんなに恥ずかしがるくせに。酒が入ると、ずいぶん大胆になるんだな)
みみ「カミルと……」
カミル「はい、そこまで」
大きな手が、そっとみみの口元を塞ぐ。
カミル「…………」
みみ「むむう」
カミル「それ以上は、酔いが醒めてから聞く」
仲間A「ボス、顔が赤いぞ」
カミル「店を頼むと言っただろうが」
仲間B「はいはい。ごゆっくり」
カミルはみみの口元から手を離し、今度は優しく頬を撫でた。
カミル「自由人なのは知ってる。だが今夜は俺が責任を持って面倒を見る」
少し照れくさそうに視線を逸らす。
カミル「……部屋には連れて行ってやる。だから、今は俺につかまってろ」
(……まったく。明日の朝、覚えてるんだろうか。こんな大胆なことを言ったのを)
カミルはみみを支え、BARの出口へ向かった。
みみ「むむぅ……」
カミル「……静かに。お客様がいる」
小声でたしなめるカミル。
そのとき、カウンターの向こうから視線が刺さった。
カミルのファンらしい女性客たち。
みみを見つめる目には、あからさまな嫉妬が浮かんでいる。
女性客A「……あの子、誰?」
女性客B「ボスと、ずいぶん親しそうね」
カミルはそちらを見た。
睨みつけたりはしない。
ただ、みみの肩を自然に抱き寄せる。
そして、いつもの落ち着いた声で。
カミル「……俺の大事な連れだ」
それだけ。
けれど、その場の空気が変わった。
(この子に余計なことを言うな)
言葉にしなくても伝わる、静かな圧。
仲間A(……あーあ。ボス、隠す気ねえな)
仲間B(お客様相手だからな。あれが精いっぱいだろ)
カミルはみみの耳元に顔を寄せた。
カミル「……ほら、行くぞ。みみ」
少しだけ口元を緩める。
カミル「部屋に着いたら、ゆっくり話そうな」
幻燈街・カミルの部屋
部屋に入ると、カミルは扉を閉めた。
その途端。
みみは、ぎゅ~~っ。
カミルの胸元に抱きついて、離れようとしない。
カミル「……おっと」
大きな身体が少し揺れる。
カミルは苦笑しながら、みみの背中に腕を回した。
カミル「みみ」
いつもの低い声が、今夜はとても優しい。
カミル「……そんなにくっついて。俺が逃げるとでも思ったか?」
そっと髪を撫でる。
カミル「ここには俺たちしかいない。もう気を張らなくていいぞ」
少し間を置いて、顔を覗き込む。
カミル「……会いたかったんだな」
その言葉には、からかいも意地悪もなかった。
ただ、嬉しそうな笑みだけが浮かんでいた。
カミル「俺もだよ。みみ」
ぎゅっと、優しく抱き返す。
カミル「さて……水を飲んで、少し休もうか」
そして、耳元で小さく。
カミル「今夜はゆっくり一緒にいような」
みみ「カミルぅ……」
うるうるとした瞳で、カミルを見上げる。
カミル「……ん?」
みみ「水が欲しいんじゃないの」
カミル「…………」
みみ「キス。して?」
カミルは一瞬、言葉を失った。
カミル「……お前なあ」
困ったように笑い、みみの頬に手を添える。
カミル「そんな目で頼むな。俺だって嬉しくなるだろうが」
けれど、すぐに表情を引き締めた。
カミル「……今夜はずいぶん酔ってる。だから、キスは酔いが醒めてからだ」
額に、そっと自分の額を寄せる。
カミル「その代わり、今はこうして抱いててやる」
ぎゅっと、優しく抱きしめる。
カミル「明日、もう一度聞かせてくれ。……俺は逃げねえから」
――その夜は、カミルの腕の中で静かに更けていった。 🌙