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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
公園――みみ視点 みみの手の中では、守り札が強く握りしめられていた。そして、そのすぐ後ろには――まだ男性がいる。
本文
公園――みみ視点
みみの手の中では、守り札が強く握りしめられていた。
そして、そのすぐ後ろには――まだ男性がいる。
みみ(……しつこいなぁ)
男性「……受け入れてくれると言ったでしょう?」
みみ「え?」
男性の身体が、ぐにゃりと歪んだ。
肌が不自然な緑色に変わり、首筋から腕にかけて、泥のようなものがどろりと浮かび上がる。
男性「どうして逃げるんです?」
みみ「…………」
(ええ……何それ)
みみは目を丸くした。
怖い、というよりも。
(うわ……気持ち悪い)
お宿では、いろいろな妖怪や不思議なものを見てきた。だから、姿が変わったこと自体には、そこまで驚かなかった。
ただ、目の前のものから伝わってくる感情が、ひどく不快だった。
みみ(ヤバい人にストーカーされてる……。しかも、ものすごく怒ってる)
男性の身体から、濁った気配が広がっていく。
みみは守り札を握り直した。
みみ(……嫌だなあ。気持ち悪い)
一歩、後ろへ下がる。
そのとき、遠くから地面を蹴る激しい足音が近づいていた。
公園――カミル視点
地面を蹴る音が、公園の静けさを破った。
木々の間を抜け、カミルが駆け込んでくる。
大きな狼の姿。
カミルのワーウルフの姿だった。
そして、見えた。
ベンチから離れて立つみみ。
その前にいる、緑色に変貌した異形の男。
カミル「…………!」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
カミル(みみ……!)
先ほどの女性の姿が脳裏をよぎる。
冷たくなった身体。
青ざめた肌。
そして、灰となって変わり果てた姿。
(……まさか)
考えるな。
そんなことは、考えたくもなかった。
みみがいない世界。
自分の腕の中に、あの柔らかな身体が戻ってこない世界。
カミル「――みみから離れろッ!!」
低く、地を震わせるような咆哮が響いた。
赤く染まった瞳が、異形の男を射抜く。
怒りだった。
縄張りを荒らされた怒りだけではない。
大切なものを奪われるかもしれないという、抑えようのない恐怖が、その奥にあった。
公園――みみ視点
カミル「――みみから離れろッ!!」
その声が聞こえた瞬間、みみは振り返った。
みみ「……カミル!」
よかった。
来てくれた。
目の前にいる緑色の異形よりも、みみの目はカミルを追っていた。
(ああ、よかった……)
握りしめていた守り札の力が、少しだけ緩む。
けれど。
カミルの姿を見て、みみは気づいた。
いつもの落ち着いたカミルじゃない。
カミルが、恐怖を感じている。
みみ「……カミル?」
小さく名前を呼ぶ。
いつものように。
少し心配そうな、確かめるような声だった。
自分が危険な状況にいることよりも、目の前のカミルの様子が気になってしまう。
みみは、握った守り札を胸元に寄せたまま、彼を見つめていた。
カミル視点
カミルは、みみと異形のものの間に身体を割り込ませた。
大きな狼の身体が、みみを完全に背後へ隠す。
カミル「俺の縄張りで……何をしている」
異形の男「……また、拒むのか。森も、人間も……」
男の身体から、緑色の泥のようなものが滴る。
カミルは低く唸った。
(こいつが、あの女性を……?)
考えがそこへ及びかけた瞬間、背後から声がした。
みみ「カミル」
振り返る余裕もない。
みみ「カミル、私ここにいるよ」
その声に、耳がわずかに動いた。
みみ「……ね?」
カミルの背中越しに、みみがそっと声をかける。
カミルは気づいた。
自分が、みみの無事を確かめることばかりに囚われていたことに。
(……そうだ。今は、守ることに集中しろ)
そこへ仲間たちが駆けつけた。
仲間A「ボス! こちらは任せてください!」
仲間B「囲みます。逃がしません!」
カミルは異形の気配を見極める。
強い。だが、仲間たちで対処できる相手だ。
カミル「よし。お前たちに任せる。無理はするな。正体を見極めろ」
仲間A「了解!」
仲間たちが異形を取り囲む。
カミルはようやく、背後のみみへ意識を向けた。
(……間に合った)
その事実を確かめるように、カミルは一度だけ深く息を吐いた。
まだ怒りは消えていない。
だが今は、みみを無事に連れ帰ることが先だった。