一ヶ月後、カミルの部屋

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/30 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 1,442文字 ✅ 全年齢

あらすじ

あれから一ヶ月。カミル視点 幻燈街での騒ぎが落ち着いてから、みみはカミルの部屋で長い休暇を過ごしていた。

本文

あれから一ヶ月。

カミル視点

幻燈街での騒ぎが落ち着いてから、みみはカミルの部屋で長い休暇を過ごしていた。

長命種であるみみにとって、長期休暇は珍しいことではない。

朝はゆっくり起き、気が向けば街を散策する。特に予定を決めることもなく、その日の気分で過ごす日々。

カミルの部屋での暮らしにも、すっかり馴染んでいた。

ただ、一つだけ問題があった。

休暇中だというのに、みみはついつい店の手伝いをしてしまうのだ。

みみ「だって、みんな忙しそうだったから」

その話を聞いたカミルは、仕事へ出る支度の手を止めた。

カミル「……当たり前だ」

みみ「え?」

カミル「休暇中だと言ったはずだ。なぜ店の仕事をしている」

少し眉間にしわを寄せている。

怒っているというより、どうにも納得がいかない様子だった。

みみ「でも、少し手伝っただけだよ?」

カミル「少しでも仕事は仕事だ」

みみ「お皿を運んだり、お客様に注文を聞いたりしただけなのに」

カミル「それを仕事と言うんだ」

みみは思わず小さく笑った。

カミル「手伝いたい気持ちは分かる。店の連中とも顔なじみになったんだろう。だが、休んでいる間くらい、ゆっくりしていろ」

そう言って、カミルはみみの頬に手を添えた。

カミル「お前は客でも従業員でもない。休むときくらい、俺に甘やかされていろ」

みみ「……甘やかされるの?」

カミル「そうだ」

みみ「ふふ。それなら、ちょっと嬉しいかも」

カミル「それとも、俺がいないと退屈か?」

口元がわずかに緩む。

みみ「うーん……。お店にいるのも楽しいけど、カミルと一緒にいるのも好きだよ?」

その答えに、カミルの表情がほんの少し和らいだ。

けれど、その目はまだみみをじっと見つめていた。

実は、カミルにはもう一つ気になることがあった。

店を手伝っているみみには、客たちがよく声をかけていた。

親しげに話しかける者もいれば、用もないのに注文を重ねる者もいる。帰り際に、また会いたいと声をかける客までいた。

みみはそんなことを特に気にする様子もなく、いつも自然に笑顔を返している。

それが彼女らしさだと分かっている。

分かってはいるのだが。

カミル「みみ。店の客に愛想よくするのは構わん」

みみ「うん?」

カミル「だが、困るような誘いまで受ける必要はない。断りにくければ、俺を呼べ」

みみ「誘い?」

カミル「食事に行こうだの、店の外で会いたいだの……そういう話だ」

みみ「ああ。そういうことね」

みみは少し考えてから、カミルを見上げた。

みみ「カミル、もしかして心配してる?」

カミル「……俺の店で、お前に余計な気を遣わせたくない」

みみ「ふふ。ありがとう」

カミル「礼を言うことではない」

みみ「でも、ちゃんとカミルに言うね。困ったら」

カミル「そうしろ」

みみ「それに、私はカミルのところに帰ってくるよ?」

その言葉に、カミルの手が一瞬止まった。

カミル「……そうか」

いつもより少し低い声。

けれど、頬に添えられた手は優しかった。

みみ「うん」

カミル「……まったく」

小さく息をつくと、彼はみみの頬を指先で軽く撫でた。

カミル「昼飯にするぞ。今日は俺も時間を取った」

みみ「わあ。何を食べるの?」

カミル「お前の好きなものを用意させてある」

みみ「本当? 楽しみ!」

カミル「だから、今日は店のことは忘れておけ」

みみ「はーい」

せっかくの休暇なのだから、ゆっくり過ごしてほしい。

それはカミルの本心。

けれど、できることなら自分のそばで過ごしてほしいという気持ちも、どうやら隠しきれていないらしい。

みみはそんな彼の手を取ると、嬉しそうに笑った。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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